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★ブレーキングスタビリティについて その2

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昨日ご紹介したブレーキングスタビリティについての記事の続編です。シームレスギヤボックスの登場がブレーキング時の安定性に大きく貢献したようです。記事中最後にあるように、ヤマハがいかにホンダのブレーキングの安定性に追いついたのか?という視点から考えていくと面白いですね。ちなみにヤマハM1の開発記などを読むと、スロットルバルブの制御によるエンジンブレーキのコントロールの話も出てきますね。

★ブレーキングスタビリティについて その2

スリッパークラッチが全てのギヤにおけるエンジンブレーキのかかり方を均質化出来ない為に、初期のMotoGPでは転倒が頻発した。マックス・ビアッジによるとリヤタイヤのグリップが失なわれてから左右へのシェイキングが始まり、この振れ幅は徐々に増加し最終的には地面に投げ出されてしまうというものだった。一方、ベン・ボストロムのスタイルはこの揺れの開始地点を利用した(※基づいた)ものであり、彼のスタイルではバイクは徐々に揺れを増していく形だった。

★ブレーキングスタビリティについて その2

幸運にもこの問題の解決策は既にフォーミュラ1の世界に存在した。それは通称”スロットル・キッカー”だ。これはデジタルステッピングモーターの働きによってエンジンのアイドリングスピードをコントロールするものだった。全てのギヤにおいてスリッパークラッチの最適なかかり具合を調整するために、ブレーキング中のスロットルの開き具合をプログラムすることで、(※当然各ギヤにおけるセッティングは異なる)理想的にバックトルクを打ち消す、または軽減することが出来た。

 

しかし、この機構はレギュレーションによって燃料が減らされると同時に採用が難しくなる。この時点でDucatiは”自動トム・キップ”を作ることを決めた。(※アメリカのモーターサイクルレーサー)つまり、コーナーのアプローチでクラッチをリフトし、アクセルONの際に再びクラッチを自動でスムーズに繋ぐ仕組みということだ。しかし、このシステムを完璧に実現することが難しいとわかった時、このシステムはお蔵入りとなった。

 

だが、シームレスギヤボックスの登場と共に、ブレーキングスタビリティの意味合いは変わってくる。エンジニアのRonnie Sanerが昨年のMotoAmericaで筆者に語ったところによると、以前のトランスミッションは激しいシフトダウンの最中のシフト完了後にシャーシにピッチングムーブメントを発生させるようで、この動きはフロントタイヤを押す方向に働き、バイクに軽くお辞儀をさせるような動き方となる。このモーションはタイヤ自体を変形させる動きとなるので、サスペンションのトラベルセンサー(※ストロークセンサー)には記録されないこともある。しかしこのタイヤへの圧力はコーナーエントリーの際のグリップに影響を与えることがある。今やMotoGPカテゴリーのトップチームは全てシームレスギヤボックスを装備しており、シームレスギヤボックスを装備していないバイクに比べてコーナーエントリー時のグリップに勝る。

 

ブレーキングスタビリティはこの先も課題であり続けるが、コーナーでのグリップを上げるためにシャーシを故意に柔らかくすると、同時にステアリングヘッド周りの柔軟性が高まることにもなり、ステアリングヘッド周りの柔軟性が高い事は、不用意なステアリングへのインプットが増えることにも繋がる。マルク・マルケスはブレーキングを遅らせて恐ろしくハードにかける事を好むライダーだが、チームメイトのダニ・ペドロサと比較した場合、より剛性の高いステアリングヘッド周りを望むライダーだ。

 

過去2年に渡り、ヤマハはバイクのブレーキングスタビリティの向上に努めてきたが、恐らくこれはスムーズなコーナリングを実現するためのシャーシの柔らかさをある程度犠牲にしていると思われる。今やホンダとヤマハの戦力差は減少し、ヤマハは横方向の柔軟性とブレーキング時に安定していられる縦方向の剛性を手に入れた。さて、次はどのような難題が発生するのだろうか?

By Kevin Cameron

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