★Ducatiのルール上のアドバンテージの被害者はサテライト?
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オープンクラスのルール上のアドバンテージは大きいですが、これも2016年に向けて実力を均質化する布石であると考えれば納得なんでしょうかね。Ducatiは来年は合計で3種類のデスモセディチを走らせるようなので(※追ってご紹介します。)2016年に向けたデータ収集はバッチリかもしれません。
ホンダとヤマハは今シーズンDucatiにレギュレーション上で許された技術的なアドバンテージは妥当だったと感じており、イタリアの代表的ブランドであるDucatiをMotoGPに留めおくには必要な処置だったとしている。
シャーシ開発の凍結はあったにせよ、1勝も出来ていないチームのエンジン開発までファクトリーと同様に凍結してしまうのは不公平であると判断したのだ。
とはいえ、ホンダやヤマハがプレシーズンテストにおいてファクトリークラスからオープンクラスへ転向を考えていたという事はDucatiのジジ・ダリーニャを驚かせた。
オープンクラスはそもそもプライベートのCRTに変わるルールとして生まれたものであったが、結局CRT機向けの'Claiming rule'は抜け落ちてしまい、単純に共通ECUの使用という条件さえ満たせば最新のファクトリー製プロトタイプマシンがオープンクラスから出走出来ることを意味する。
このオープン機向けのECUはオープン機唯一の弱点だったが、Ducatiがオープンクラスに転向する直前、Ducatiの開発データを取り入れて大きくアップデートされた経緯がある。
ホンダに関してはヤマハがオープンクラスのチームにリースした2013年型YZR-M1に既に"刺されて"いる。つまり、オープンクラスのためにホンダが作ったマシンRCV1000Rは明らかにパワー不足で遅かったという事だ。
レプソルホンダ チームマネージャー リヴィオ・スッポ
「もしファクトリーバイクがオープンクラスで洗練されたECU、多くの燃料、多くのエンジン、多くのテストを許されて走行するとなると、ファクトリークラスと比較しても参戦コストが安く済むクラスではなくなります。参戦コストが安く済むクラスを作るということがそもそもの目的だったと思いますが、今年のDucatiを見る限りではそういう解釈で物事を考える必要は無いですね。」
(Ducatiを選手権に留める)妥協案として、Ducatiはオープンクラスのメリットを全て享受しながらファクトリークラスに残るということになった。その代わり、ファクトリークラスよりも4L多く使用出来る燃料は、もしDucatiのライダーが優勝、2回の2位表彰台、3回の表彰台の獲得のいずれかをドライコンディションで達成した場合半分の2Lになり、もし3勝した場合はソフトコンパウンドのリヤタイヤの使用が許可されなくなる。これらのルールはDucatiがオープンクラスのレギュレーションで強力になりすぎる場合を恐れて設定されたものだ。
しかしその他の条件 - 例えばファクトリーの5基のエンジンより多い12基のエンジン、エンジン開発の自由、豊富なテスト機会などは2016年の共通ECU導入まで据え置かれることとなった。このルールは今年に関してはDucatiにだけ適用となったが、2015年はスズキ、アプリリアもこのルールの適用を受ける。
2013年Ducatiは表彰台から縁遠かったが、今年に関しては3回の表彰台を獲得している。しかしながらドライコンディションだったのはアンドレア・ドヴィヅィオーソのオースティンでの3位表彰台のみ。またソフトのリヤタイヤに関しては予選でこそ強みとなるものの、決勝においては逆に不利となることが多い。※ホンダやヤマハのライダー達はほとんどにおいてハードタイヤを使用している。
今期のDucatiに適用されたスペシャルルールについて、ホンダのリヴィオ・スッポは、ホンダはいつでも他のメーカーがこの選手権に留まる事についてサポートを行っているとし、Ducatiに適応されたスペシャルルールへの理解を示した。
レプソルホンダ チームマネージャー リヴィオ・スッポ
「正直なところホンダとしては、例えばスズキが過去にエンジンの構造変更回数を多く許可されていたという類の事は許容する考えです。これは選手権なわけですから来年のように多くのメーカーが参戦することは歓迎すべきことですし、より多くのメーカーが参戦することが出来れば我々としても嬉しいわけです。」
「昨年のDucatiの成績はこの選手権に参加する皆から見て望ましいものではありませんでした。Ducatiは非常にブランドとして有名ですし、この選手権に価値をもたらします。Ducatiに長くこの選手権で戦ってもらうためにも、Ducatiに彼らの参戦マシンを改善する機会を多く与えたというのは適切なことだったと思います。ですから、こういった類のアドバンテージを(特定のチームに)与えるというのは正しい判断だと思いますし理解出来ることです。」
「実際パフォーマンスのレベルは全体的に近づいて来ています。もしDucatiが10戦表彰台を独占するような感じになったらルールの変更を考えないと行けないでしょうけどね。現段階においては許容出来る範囲だと思います。とにかく、2016年からはすべてのファクトリーチームが同じスタートラインに立ってスタートすることになりますね。」
Ducatiファクトリーのエースであるドヴィヅィオーソは今年の選手権をランキング5位で終えているので、Ducatiが持つアドバンテージはワールドタイトルやレースの決勝結果に影響を与えてはいないと言える。しかしヤマハのレーシングディレクターであるリン・ジャービスは、Ducatiのアドバンテージの被害者はホンダとヤマハの各サテライトチームだと感じている。
ヤマハレーシングディレクター リン・ジャービス
「この件に関してはリヴィオと似たような意見ですね。ファクトリーチームにとってDucatiの持つアドバンテージは脅威ではありません。しかし、サテライトチームのライダーにとってはモチベーションの維持が難しいかもしれません。なぜならサテライトのライダーが非常に良いパフォーマンスをレースウィークで発揮したとしても、こういったアドバンテージを持つDucatiに予選、もしくは決勝で負かされてしまう可能性があるからです。」
「ですから、そういう意味ではサテライトチームがファクトリールールに縛られるというのはタフ(とても辛い)だと思います。この状況の解決策としては現状のような1つのカテゴリーの中にファクトリークラス/ファクトリーオープン/オープンクラスという3つのルールが混在している状況を可能な限り早く無くすことでしょう。今の状況は参戦チームにとっても観戦するファンにとっても良い状況とは言えませんね。」
Ducatiコルセディレクター パオロ・チャパティ
「今年は良いシーズンでしたし車体の改善も進みました。車体の開発が許されているというのは確かにありますが、これは非常に情けなくなるほどトップから大きくギャップを開けられて終わった2013年から我々が必要としていた処置です。今年の我々のメインゴールは優勝ライダーから10秒以内の差でチェッカーを受けるというものでしたが、これについては達成することが出来ました。フィリップアイランドではカルが2位をもう少しで獲得出来るところでしたし。」
Ducatiのマシンが大きく進化していることに関して疑いの余地は無いだろう。ただ気になるのは、今期の結果がどの程度マシンの改善によるもので、どの程度オープンクラスルールのメリットによるものなのか?ということだ。この問への答はすべてのメーカーのルールが統一となる2016年にならないとわからないだろう。2016年はタイヤに関してもブリヂストンからミシュランへと変更となるので前年と比べての違いがより鮮明になると言える。
Ducatiコルセディレクター パオロ・チャパティ
「確かに24Lの燃料を使用出来るというのもアドバンテージではありますが、最も重要なのはエンジン開発の自由です。エンジン開発というのはエンジンのパフォーマンスだけに留まらずシャーシに影響する部分でもあるんです。もしエンジンのマウンティングポジション(エンジンをフレームに搭載するためのボルト穴位置などのこと)を変更したい場合、エンジンの開発が凍結されていた場合は変更が出来ません。我々はこうした変更が可能となっているのでGP14.2を作る事が出来ました。これは我々がエンジンの変更を許されていたからこそ生まれたマシンです。」
「ソフトタイヤは予選においてはアドバンテージとなりますが、決勝において使用出来たのは今シーズンにおいては2回だけです。予選のなかで0.1秒とかそこらを削るのに使用出来るという程度のものですね。我々のファクトリーライダーでテストが行えるというのは開発のスピードアップに繋がっていますしパフォーマンスの改善にも結びついています。完全新型となるマシンはセパンまでは完成しません。ジジによると今は焦らず、しっかりとしたマシンを開発してからデビューさせたほうが良いということです。開発の方向性は間違ってないと思いますので、来年はレースで優勝を狙えるマシンになると思いますよ。」
Ducatiは2003年からMotoGPに参戦。初めてのシーズン優勝はケーシー・ストーナーの2007年。しかしストーナーが2010年にDucatiを去って以降優勝はない。2015年についてはアンドレア・イアンノーネがファクトリーチームに加わる。
来年からホンダはファクトリーRC213Vとほぼ変わらぬ(シームレスギアボック非搭載など)RC213V-RSをデビューさせる為、わずか1年でオープンクラスバイクのRCV1000Rをスクラップにする事になる。RC213V-RSはオープンクラスで走行するヤマハのM1やDucatiのGP14と同様のオープンクラスマシンとなる。