★2017年型スズキGSX-R1000/GSX-R1000R 技術詳細
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鈴菌の管理人として、globalsuzuki.comにある新型GSX-R1000、GSX-R1000Rの技術詳細がどうしても気になったので、気合を入れて翻訳しました。終わってみれば13,000字超えというとんでもないボリュームになってしまいました。いやしかし、この新型GSX-R1000買いですよ。鈴菌の皆さん。
コンパクトなエンジン
デザインチームは基本的なエンジンデザインのゴールを決めました。新しいエンジンはより高回転まで周り、さらなるピークパワーを発生すること。同時に豊かなロー、ミッドレンジのパワーと加速感を保つこと。コンパクトで軽量な直列4気筒で、DOHCでチェーンカムドライブを採用、1気筒あたりに4つのチタニウムバルブ、さらにオーバースクエアとしたボア/ストロークレシオを持ち、レッドゾーンはさらに高回転に、圧縮率は高いこと。
まずは76mm x 55.1mmのボア x ストローク、999.8cm3の排気量から始まりました。MotoGPの中で開発された新たなバルブトレインが採用され、また薄型のホローカムシャフト(中空構造)がF1スタイルのピボッティングフィンガーフォロワーを動かします。このフィンガーフォロワーは、既存のバケットタペットタイプのものより、1つにつき6g軽量で、全体で16g軽量となっています。各フォロワーのピボットがフィクスドシャフトについているため、その移動質量は僅かに3gです。
移動質量が軽いということは、エンジン回転数が上昇し、バルブリフトも増大する事を意味します。これは同時にバルブのレスポンスが向上し、正確なバルブコントロールにも繋がります。各フィンガーフォロワーは、MotoGPバイクのGSX-RRに使用されているフィンガーフォロワーに基づいて設計されています。またDLCコーティングが施され、耐久性を高めています。
バルブとカムローブの間に位置するフィンガーフォロワーは、従来のバケットタペットよりも厚くなっています。結果として増大するシリンダーヘッドの高さを抑えるため、既存アルミニウムバルブスプリングリテーナーは、より薄いスチールのバルブスプリングリテーナーへと変わりました。
排気バルブはチタニウム製となり、既存の25mmから24mmへと僅かに小型となり、各バルブにつき8.2g軽量となりました。排気バルブの重量低減は、高回転時の信頼性に繋がります。そして30mmから31.5mmへと僅かに大きくなったチタニウム製の吸気バルブは高回転時のパワーアップに繋がります。しかし低回転、中回転時のパワーに影響を及ぼさずに、高回転時のエンジンパワーを追い求めるのは難しいことです。高回転時のパワーに必要とされるバルブタイミングは、低中回転時のパワーを減少させてしまうのです。
ブロードパワーシステム
スズキレーシングVVT(SR-VVT※可変バルブ)、スズキエキゾーストチューニングアルファ(SET-A)、スズキトップフィードインジェクター(S-TFI)がブロードパワーシステムを形作っています。これは高回転時のパフォーマンスを中低速レンジのパフォーマンスを犠牲にすること無くアップさせるシステムです。その効果は甚大で、リニアなパワーと強力な加速を全回転域で発生します。
スズキレーシングVVT(SR-VVT※可変バルブ)はMotoGPで開発されました。他社のような複雑な仕組みではなく、SR-VVTはシンプルでコンパクト、軽量です。このシステムはインテークカムシャフトと隣接したガイドプレートにビルトインされています。インテークカムスプロケットの内部の傾斜した放射状の溝と、カムシャフトにダイレクトに取り付けられたガイドプレートの溝の間に12個の鉄球が収まっています。
高回転時には遠心力がこれらの鉄球を外側に押しやり、オフセットした溝によりカムシャフトに取り付けられているカムスプロケットのポジションを変えます。そしてこの動きによってインテークカムのタイミングを減速させます。そしてこれにより高回転域で明確なパワーアップを実現するのです。 SR-VVTシステムの素晴らしい点はコンパクトでシンプル、軽量で信頼性が高く、無段階での動作となることです。
遠心力はエンジンが動いている間は常に発生し、リアホイールを回転させるためのパワーを使っているわけではありません。10年以上レーサー達はバルブタイミングが変更となった瞬間を感じる事が出来ませんでした。彼らが感じる事が出来ていたのはシームレスで低中速回転を犠牲にすることなく、高回転時の明確なパワーの向上でした。このシステムは既存のパーツの上に作られているものです。エンジン内部にさらにスペースを必要とすることなく、ほんの僅かな重量の増加で実現出来るシステムなのです。
新型GSX-R1000の4-2-1の薄型ステンレス製スズキアドバンスエキゾーストシステム(S-AES)もまた、高回転時の馬力を中低速のパワーを犠牲にすること無くアップさせるためにデザインされたものです。GSX-R1000は長いことエンジン回転数、スロットルポジション、ギアポジションに応じて排圧を最適化する事で、全回転域のトルクを最大化する、中間パイプ内にビルトインされた、サーボ駆動のバタフライバルブであるスズキエキゾーストチューニングシステム(SET)を使用してきました
しかし、新型のGSX-R1000のエキゾーストシステムは、スズキエキゾーストチューニングアルファでその考えを発展させました。ヘッダーバランスチューブが1番と4番シリンダーのヘッダーパイプを結んでおり、別のヘッダーバランスチューブが2番と3番シリンダーのヘッダーパイプを結んでいます。この設計は、通常中低速を犠牲にして高回転時のパワーをアップさせるものです。スズキのエンジニアはサーボ駆動のSET-Aバタフライバルブを各ヘッダーバランスチューブに加えました。これは中低速時は閉じたままで、高回転時に開き、トップエンドのパワーを増大させます。
鍛造アルミニウムのピストンはショートスカートとなり、カットアウェイされたサイド部分は重量とフリクションを低減しています。DLCコートされたリストピンはフリクションを低減し、正確に造形されたピストンドームは圧縮比を高め、燃焼効率を高めています。L型のアッパーコンプレッションリングは燃焼圧によってシリンダーウォールに対して押し出され、ブローバイを減少し圧縮の向上に役立っています。オイルコントロールリングはクロムナイトライドコーティングが施され、既存のものよりも固くスムーズになり、フリクションの低減、耐久性の向上、圧縮の向上に役立っています。
ピストンはクロムモリブデン鋼のコネクティングロッドによって動かされ、浸炭処理を施されているため、強度がアップしています。シリンダーはアッパークランクケースキャスティングにビルトインされ、SCEM(スズキコンポジット・電気化学的物質)として知られるレースで有効性が証明されたニッケルリン シリコンカーバイド ボアコーティングが施されています。これはフリクションの低減、熱の伝導性を高め、耐久性とリングのシール性能を向上させます。
シリンダーボアのカットアウト(ピストンストロークの下)に関しては、下がっていくピストンに捉えられた空気が、上昇していく隣接するシリンダーに素早く逃げるように考えられています。カットアウトはクランクシャフトにかかる空気抵抗を最小化し、メカニカルパワーロスを低減、シール性能の向上にも役立ちます。
注意深くデザインされた内部の冷却水の通路は、シリンダーヘッドを冷やすクーラントのフローを増大し、熱伝導を劇的に改善しています。新しいラジエターはデュアルファンを装備し、クーラントの量が少ないにも関わらず、冷却システムをより効率化しています。これにより重量の軽減にも役立っています。
クロスレシオの6速トランスミッションは既存モデルと同様のインターナルレシオを持ち、垂直方向のシャフトはエンジン全長の短縮に貢献しています。 しかしギア自体はパワーの増大にしたがってデザインを改められ、新型のスズキクラッチアシストシステム(S-CAS)は、加速中、シフトダウンの最中、レーストラックでのハードブレーキングの最中に自動的にプレートの圧力を低減するようにデザインされています。(スリップ率を増大させ、バックトルクを制限する)
このシステムはまた、加速の最中にプレートにかかるメカニカルプレッシャーが増加するに従いスリップを低減しています。これにより軽量なクラッチスプリングが使用可能となり、クラッチレバーを引きやすくしています。
ライド・バイ・ワイヤ・スロットルボディ
新しいスロットルボディは19mm短く、シンプルで軽量、コンパクトになっています。ボアは44mmから46mmに拡大されています。いずれもシングルバタフライバルブを持ち、先進のエレクトリックエンジンマネジメントシステムによってコントロールされています。そして各シリンダーには10穴インジェクターが2基備わっています。1つのインジェクターはスロットルボディ自体に急角度でマウントされ、エンジン稼働中は常に作動しています、2つ目のインジェクターはトップフィードインジェクター(TFI)と呼ばれるもので、エアクリーナーボックスの上にマウントされます。これは各スロットルボディのインテークファンネル上にマウントされており、高回転で作動します。TFI シャワーヘッドインジェクターは、燃焼効率の向上、スロットルレスポンス、トップエンドのパワー増大のためにさらなる燃料を供給するのです。
スズキ・デュアルステージ・インテーク(S-DSI)システム
新型のS-DSIシステムは可変長インテークファンネルがもたらすアドバンテージを、重量増、複雑さ、コスト増を招くことなく実現します。S-DSIファンネルは新しいデュアルステージのデザインをしており、長いファンネルが短いファンネルの上に重なっており、その間にギャップが設けられています。 デュアルステージS-DSIファンネルは1番と4番シリンダーに取り付けられており、2番、3番シリンダーには通常のファンネルが取り付けられています。 短いファンネルは高回転時に有効で、長いファンネル低中速のパワーに有効です。エアフローの物理のお陰で、S-DSIファンネルは両方のメリットを有しています。低中速では長いファンネルのように動作し、高回転では短いファンネルのように動作します。
低中速回転においてほとんどの空気は長いファンネルから短いファンネルへと下っていき、ローエンドとミッドレンジのパワーをアップします。高回転では長いファンネルの足元にあるエアフローがダイレクトに短いファンネルへと向かい、トップエンドパワーをアップします。2つのS-DSIファンネルと2つの通常のファンネルを使用することで、幅広いパワーバンドを実現し、低中速から高回転までの継ぎ目のないパワーの移行が可能となりました。
アドバンスド・IMUベースエレクトロニクス
IMU(慣性計測ユニット)をベースとする先進のエンジンマネジメントシステムは32ビットデュアルプロセッサーECMによってコントロールされます。ライダーがスロットルを捻るとECMはスロットルポジション、クランクシャフトポジションと回転数、ギアポジション、フロント、リアのホイールスピード、IMUポジション、排気酸素レベルを読み取ります。そしてスロットルボディのバタフライバルブを開く、閉じるの動作を行い、インジェクターに供給される燃料の量、燃料の流入速度をコントロール、最適な燃焼を実現します。結果としてさらにリニアなスロットルレスポンスが実現し、さらなるパワー、トルク、全回転域での排ガス削減を実現します。
バイクの挙動を読み取るIMU(慣性計測ユニット)
新型のGSX-R1000の先進のエレクトロニックマネジメントシステムはIMU(慣性計測ユニット)からのフィードバックを元に管理され、これはバイクの挙動と位置をピッチ、ロール、ヨーの3軸と6方向で計測するもの。リアルタイムでこれらを読み取ることで、バイクのトラクション、ブレーキング、コーナリングコントロールがさらに正確に効果的に行われるようになります。GSX-R1000のIMUベースのシステムは先進のエンジニアリングによるもので、MotoGPの競争の中で生まれました。
スズキ・ドライブモードセレクター(S-DMS)
左のハンドルバーのスイッチでS-DMSを操作することで、ライダーはあらゆる状況に合わせて設計された3つのマッピングとエンジンパワーデリバリーを切り替える事が出来ます。これは異なるレーストラック、タイト、ツイスティな道、都市部、もしくは交通の中、開けた道や高速道路などです。ライダーはパワーモードをライディング中にスロットルが閉じている間に切り替え可能です。なおいずれのモードでもフルパワーを発揮します。S-DMSシステムは10レベルのモーショントラックTCSと共に働き、ライダーに幅広いパワーデリバリーとコントロールの選択を与えます。
モーショントラックTCS(トラクションコントロールシステム)
スズキの先進のモーショントラックTCS(トラクションコントロールシステム)は10段階でトラクションコントロールの介入を選択出来ます。これはレーストラックのコンディションや個人の好みや経験で変更可能ですパワーモードとTCSの介入度合いはライディングの最中に変更可能で、スロットルが閉じている限り操作が可能です。
モーショントラックTCSはフロントとリアのホイールスピード、スロットルポジション、クランクシャフトポジション、ギアポジション、バイクのポジション、トラクションを失った時のエンジンパワーの急激な減少もしくはその前兆を計測しています。出力は点火タイミングとスロットルバルブポジションによってコントロールされています。 モーショントラックTCSはセンサーからの入力を0.004秒ごとに読み取っており、正確なレスポンスを実現します。そしてIMUからの入力を使う事で、ECMはバイクの動きを6方向で計算し、さらに最適なトラクションコントロールを実現しています。
10段階のモーショントラックTCS
ライダーはモーショントラックTCSを10段階で調製出来ます。モード1が最小で、モード10が最大となります。モード1−4はレーストラックでのライディング、5-8はストリート、9-10は滑りやすい路面コンディションに最適化されています。
モード1−4はある程度のホイールスピンは許容し、経験のあるライダーで電子制御の介入を好まないライダー向けです。モード5−8はモード1−4よりもモーショントラックTCSの介入が早く、ある一定以上のリーンアングルに到達すると、システムはスロットルレスポンス、パワーデリバリーを緩めます。ホイールスピンやスライドが検知されるとシステムは即座にパワーを落とします。モード9−10は滑りやすい路面コンディションに向けてデザインされており、その他のモードよりもさらに早くシステムが介入します。 インストゥルメンタルパネルは現在選択中のモードを表示し、モーショントラックTCSが介入している間はライトがその介入を知らせます。
ローRPMアシスト
スズキの新しいローRPMアシストシステムは発進時、もしくは極低速時のライディングで、自動的にエンジン回転数を調製します。このシステムは静止状態からのスタート、激しい渋滞、人がごった返したパーキングロットなどでの操作を容易にします。
スズキ・イージースタートシステム
デュアルプロセッサーECMはワンタッチ操作のスズキ・イージースタートシステム、アイドリングスピードシステムをもコントロールしています。これらは冷間時のスタートに効果的で、クーラント温度により基づき作動し、冷間時のスタートの排ガスの低減、様々なコンディションでのエンジンのアイドリングの安定に役立ちます。
スズキ・イージースタートシステムは右側ハンドルバーのスイッチモジュールのスイッチを一回押すだけで作動。エンジンがかかるまでボタンを押し続ける必要はありません。新しいシステムのお陰でライダーはギヤがニュートラルに入っていればエンジンをかける際にクラッチを引く必要はありません。
ローンチコントロール(GSX-R1000R)
GSX-R1000Rのローンチコントロールシステムはレーサーにとってレースでのスタートを容易にします。これはエンジン回転数を自動的に制限し、ライダーがスロットルをワイドオープンにしている間にトルク伝達を最適化、ライダーはクラッチレバーの操作に集中することが出来ます。 ローンチコントロールが右側のハンドルバーのスイッチで選択されると、システムは特別なマッピングモードを選択し、バルブのオープニングタイミングと点火タイミングをコントロールします。システムはスロットルグリップのポジション、スロットルバルブポジション、エンジン回転数、ギアポジション、フロントホイールスピード、リアホイールスピードを計測します。
発進の瞬間はシステムはエンジンを理想の回転に制御します。クラッチがリリースされるとエンジン回転数の制御は止まりますが、スロットルの開度は理想的なトルクと強烈な加速を生み出すためにコントロールされます。
ローンチコントロールはライダーにとって理想的な加速のために役立つだけでなく、スロットルを早めに閉じてしまう機会を減らすことにも役立ちます。これはモーショントラックTCSの働きと、バルブのオープニングタイミングと点火タイミング、フロントホイールスピード、リアホイールスピードなどによるものです。ローンチコントロールはライダーが3速までシフトアップするか、スロットルを閉じると自動で解除されます。
バイダイレクト・クイックシフトシステム(GSX-R1000R)
GSX-R1000Rは新しい2方向のクイックシフトシステムが搭載されています。これはライダーにクラッチやスロットル操作をせずにシフトアップ、ダウンを実現させるものです。 クイックシフトシステムは、ライダーにフルスロットルの状態でシフトアップをスムーズに行わせることが出来ます。システムは自動的にパワーデリバリーに介入し、(調製により50ミリ秒〜75ミリ秒)トランスミッションギアドッグの負荷を抜き、綺麗なシフトアップを実現します。 スロットルのブリッピングやクラッチ操作をすることなく早くスムーズなシフトダウンを実現するため、システムは自動的にスロットルバルブを開け、エンジン回転数を次のギアレシオに合わせるのに必要なだけ回転数を上げます。
クイックシフトシステムはシフトリンケージストローク、シフトカムローテーション、エンジン回転数を計測しています。
エンジンとシャーシ
以前のGSX-R1000は国内、海外で数多くのタイトルを獲得しました。しかしプロフェッショナルレーサーはレーシングコンディションでのさらなるフロントエンドのフィードバックを求めていました。 フロントのアクスル軸とスイングアームピボットの距離を近づけることで、ライダーがレーストラックでの激しいライディングで、フロントタイヤが何をしているかをより感じる事が出来るということがわかりました。フロントのアクスル軸とスイングアームピボットの距離を縮めるため、エンジニア達はシリンダーの角度を見直し、32°から26°へと角度を変更。これによって新しいエンジンはシリンダーヘッドからクランクケース後端までの距離が短くなりました。
シリンダーボアの増大によってシリンダーとシリンダーヘッドアセンブリの幅は少し広がっています。しかしクランクケース内のオイル経路の見直しにより、新しいエンジンは最も幅が広い部分で6.6mm狭く、前方投影面積の縮小により、優れたエアロダイナミクス性能に貢献しています。
完全新型のシャーシ、軽量フレーム
GSX-R1000のシャーシは先代のモデルよりもさらに幅が狭く、コンパクトになっています。スズキのエンジニア達は新しいツインスパーアルミニウムペリメーターフレームを、最も幅が広い所で20mm狭く作り、重量を10%軽減しました。このシャーシは4つの部分から出来ており、溶接されています。2つのメインスパー部分はインターキャスティング、アウタースタンピングによってねじり剛性を最適化しています。
鋳造のステアリングヘッド、フロントエンジンハンガーセクション、リアセクション、アッパー、ロワーエンジンマウント、スイングアームピボットプレートが組み合わされています。フレームはリアエンジンマウント部分で60mmワイドになり、振動を軽減しています。
アッパーリアショックマウントは48mm後方に20mm下方になり、レースチームが耐久レース用に大容量燃料タンクをマウント出来るようになっています。新しいボルトオンのサブフレームはスクエアアルミニウムチューブで作られ、重量を38%軽量にしています。
新型のアルミニウムスイングアームは両サイドに補強が入っており、重量と剛性バランスを向上させています。ピボットシャフトからリアアクスルまでの距離が先代モデルと比べて25mm長くなっており、レーストラックでのコーナリングフィールが向上しています。
ライディングポジションはフットペグ、シート、ハンドルバーによって決定されますが、この関係性は変わっていません。しかし燃料タンクのトップの高さは21mm低くなり、ヘルメットの顎部分のスペースが広くなっており、タックインがしやすくなっています。燃料タンクは幅が狭くスリムになり、レーストラックでライダーがボディポジションを左から右へと移動しやすくなっています。またタンクはレーストラックでの激しいブレーキングで膝でホールドしやすくなっており、燃料タンクからシートセクションまで流れるように繋がっています。
性能を証明されたShow製サスペンション
GSX-R1000にはShowaのBPFフォーク(ビッグピストンフォーク)が装備されています。そのデザインは既存のフォークに使用されている内部カートリッジアセンブリを排除し、その代わりにインナーフォークの内壁自体に大径のピストンを使用います。このデザインは小さなバンプへの反応が良く、特にレーストラックでの走行中にさらに効果的なコンプレッションダンピングを発揮します。BPFフォークは調製可能なリバウンドダンピング、コンプレッションダンピング、スプリングプリロードを持っています。スタンダードモデルに搭載されるShowaのリアショックはプログレッシブリンクを通じて搭載され、リバウンドダンピング、高速、低速のコンプレッションダンピング、スプリングプリロード、リアライドハイトの調製が可能です。
GSX-R1000Rは最新のShowaBFFフォーク(バランスフリーフォーク)とBFRC(バランスフリーリアクッションライト)を装備します。これはレース用に開発されたもので、大衆車両にも利用可能となりました。いずれも、さらにスムーズで、コントロールされたトラベル量、サスペンションとして優れた仕事をするために、コーナリングが向上します。 BFFシステムは内部ピストン上下のオイル圧力をバランスさせ、オイルをフォークレッグからダンピングサーキットを通して、ピストンの反対側に押し出します。 外部のコンプレッションとリバウンドのダンピングサーキットは、旧来のピストン上下に取り付けられたバルブよりも正確です。ダンピングコントロールは独立しており、釣り合っていない圧力の影響を受けません。
この違いはレーストラック上で感じ取る事が可能です。フィーリングの向上、さらなるグリップによりさらに速く走ることが可能で、コーナーから速く立ち上がることが可能です。スタンダードモデルと同様に、GSX-R1000RのBFRショックもプログレッシブリンケージを通じて作動します。BFFフォークとBFR Liteショックはフルアジャスタブルです。
両モデルともに自動のステアリングダンパーが付いています。ECMがホイールスピードをモニタリングし、ソレノイドがオイル通路上のテーパー上の針を動かし、オイルの流量をコントロールします。高速ではダンピングが強まり、低速ではダンピングを弱め軽快なハンドリングを実現します。
新型ブレンボディスクとラジアルマウントキャリパー
新しいブレンボのステンレススチールブレーキディスクは10mm直系が大きくなり320mmとなりました。各ディスクは新しいハイブリッドマウントシステムとなり、5つの従来のスプリングローデッド・フローティングピンマウント、5つのブレンボTドライブフローティングマウントとなります。
ブレンボのTドライブフローティングマウントは軽量でありながらディスクとインナーキャリアーのコンタクトエリアが多く、通常のマウント単体で使う場合に12個のマウントが必要なのに対し、10個のマウントで済みます。これにより、大径ディスクによる重量増を防いでいます。
しかしTドライブマウントは特定のコンディションではガタガタという音を発生させる可能性があります。旧来のスプリングローデッド・ピンマウントは僅かに重く、コンタクトエリアが狭くなりますが、静かです。Tドライブとピンマウントを組み合わせることで、ガタガタという音の発生を減らしながら、少ないマウントポイントで済むようになっています。
GSX-R1000のラジアルマウントのモノブロックキャリパーは32mmのピストンを持ち、19mmのラジアルポンプマスターシリンダーと組み合わされます。リアブレーキシステムはシングルピストンキャリパーと220mmディスクという組み合わせです。フロントブレーキレバーの先端は穴空き加工が施されており、高速での風圧によってブレーキが作動するのを防いでいます。
モーショントラックブレーキシステム
GSX-R1000RとABSバージョンのGSX-R1000はIMUと共に作動する新しいモーショントラックブレーキシステムを装備しています。 IMUはバイクの動きを6方向3軸で常にモニターしています。こうしたIMUの入力を使用し、モーショントラックブレーキシステムはレーストラックでの非常にハードなブレーキングの最中のリアホイールのリフトを抑えます。これは特にトラックのダウンヒルセクションで有効です。GSX-R1000Rではこのシステムはバイクがリーンしている最中のブレーキプレッシャーをも最適化します。
ブリヂストン製RS10ラジアルタイヤ/新しい6本スポークホイール
新しい軽量の6本スポークキャストアルミニウムホイールは軽快なハンドリングとスポーティーな見た目に貢献しています。
ブリヂストンのBATTLAX RACING STREET RS10ラジアルタイヤは世界中でコンスタントなパフォーマンスと幅広いレンジでの耐久性で評価されています。 新型GSX-R1000は120/70ZR17M/C (58W) サイズのフロントタイヤ、190/55ZR17M/C (75W) サイズのリアタイヤを装備、既存の190/50ZR17M/C (73W)サイズのタイヤからサイズを変更し、増加した馬力、トルクに対応するようになっています。
新型GSX-R1000 タイヤサイズ
フロントタイヤ120/70ZR17M/C (58W) Bridgestone BATTLAX RACING STREET RS10
リアタイヤ 190/55ZR17M/C (75W)
現行GSX-R1000 タイヤサイズ
フロントタイヤ120/70ZR17M/C (58W) Bridgestone BATTLAX HYPERSPORT S20
リアタイヤ 190/50ZR17M/C (73W)
向上したエアロダイナミクス
2017年型のGSX-R1000はMotoGPにインスパイアされたスリムで、よりエアロダイナミクスに優れたボディデザインとなり、レーストラックでのハンドリングとトップスピードが向上しています。フロントフェアリングは13mm狭くなり、フェリングの耳にあたる部分はハンドルバーにさらに近くなりました。そしてライダーの手と腕周りのエアフローを向上しています。フェアリング下端の突き出た部分は、新気をスズキラムエアダイレクト(SRAD)インテークダクトに送り込みます。これはさらにスムーズな内部構造を持っており、エアークリーナーボックスへと圧力がかかったエアフローを増大させます。また、フェアリングに冷たい空気を送るために、ラジエター脇のデザインは前方に突出したデザインとなっています。
フロントフェンダーの造形はダウンフォースを増加させ、スムーズなエアフローは冷たい空気をラジエターに送り、フロントブレーキに届く風を増やします。 ボディワークはフェアリングノーズからテールセクションまでさらに連続したフローを生み出すラインとなりました。ウインドトンネルで開発された、前方投影面積が小さくスムーズなラインを持っており、ドラッグ係数を減少させ、レーストラックスピードにおけるリフトを減らしています。軽量で慣性モーメントが少なくなり、重心の中心から梃子の原理による動きが少なくて済みます。ダイレクトなエアフローはエンジンとブレーキの冷却を助け、ダウンフォースを増大させ、ライダーのウインドプロテクション、エンジン効率を上げています。つまり見た目が良いだけでなく、新しいボディワークはレーストラックにおけるGSX-R1000の走る、曲がる、止まるという性能を助けているのです。
アドバンスドライティング/インストゥルメンタル
新しいGSX-R1000はハロゲンヘッドライトよりもコンパクトなLEDヘッドライトを装備しています。しかしその明るさは素晴らしいものがあります。フェアリングのノーズ部分にインストールされており、ヘッドライトの幅は狭く短くなっています。これによってGSX-Rのエアロダイナミクスに向上しています。2つのロービームとハイビームが一緒になっており、ロービームはハイビームの上に装備されています。ポジションライトはGSX-R1000RのSRADインテークの上に装備されています。
スタンダードモデルとRモデルは垂直にデザインされたLEDテールライト、ブレーキライトアセンブリを持ち、ライセンスプレートライトもまたLEDとなっています。LEDライセンスプレートライトは旧来のライトバルブタイプよりも軽量で半分ほどのサイズとなります。しかしさらに明るく、振動に強く、リアフェンダーアセンブリを軽量にしています。GSX-R1000の両モデルともにターンシグナルもLEDとなり、明るく、より眩しくなっています。(※北米マーケットでは異なります。)
新型GSX-R1000はフルLEDインストゥルメンタルパネルを装備しています。ダッシュはより明るく読みやすく、S-DMSのモード表示、モーショントラックTCSのインジケーターがあり、燃料計は瞬間、平均燃費を表示可能です。外気温、凍結警告、サービスリマインダーなども表示されます。その他の特徴は位置を改められ明るくなったシフトライト、スピードメーター、タコメーター、オドメーター、トリップメーター、時計、ラップタイム、水温計などです。さらにニュートラルインジケーター、ハイビーム、ターンシグナル、ABS作動などが表示されます。ギアポジションインジケーターは新たにさらに正確なマグネティックセンサーを使用しています。GSX-R1000Rにはさらに軽量でコンパクトなバッテリーが搭載されています。
GSX-R1000 キング・オブ・スポーツバイク
キング・オブ・スポーツバイクが戻ってきました。今までより素晴らしく、ライバルを圧倒する準備が出来ています。このバイクは30年続くGSX-Rのパフォーマンス、革新性、優位性、他にはない価値の最高傑作で、ライディングとレースを自分の事のように愛する、スズキエンジニアリングチームのプライドと情熱、知識と決意が具現化したものと言えます。GSX-Rを表すものとしてプライドと情熱と共に造られ、30年以上に渡るGSX-Rのパフォーマンスの知識を元に開発され、GSX-Rの正当なタイトルであるキング・オブ・スポーツバイクの称号を取り戻すという決意を担っています。
このバイクは本当に重要なシンプルな物事である、走る、曲がる、止まるという表現を、加速性、コーナリング、ブレーキングの強力なコンビネーションに変えることで、今までに作られた中で最高のGSX-Rとなっているのです。
もしあなたの準備が出来ていれば、GSX-R1000はレーストラックを我がものとすることが出来るのです。
2017年型 GSX-R1000/GSX-R1000R主要諸元
全長:2,075mm (81.7in)
全幅:705mm (27.8in)
全高:1,145mm (45.1in)
ホイールベース:1,420mm (55.9in)
グラウンドクリアランス:130mm (5.1in)
シート高:825mm (32.5in)
車重:GSX-R1000 200kg (441lbs)/GSX-R1000A 202kg (445lbs) ※ABS付きモデル/GSX-R1000R 203kg (448lbs)
エンジン:4ストローク水冷4気筒DOHC
ボア x ストローク:76.0mm x 55.1mm (2.9 in x 2.3 in)
排気量:999.8cm3 (61.0 cu. in)
圧縮率:13.2 : 1
燃料システム:フューエルインジェクション
スターターシステム:電子式
オイル潤滑:ウェットサンプ
トランスミッション:6速
一次減速比:1.652 (76/46)
最終減速比:2.647 (45/17)
フロントサスペンション:倒立フォーク、コイルスプリング、オイルダンパー
リアサスペンション:リンクタイプ、コイルスプリング、オイルダンパー
レイク/トレール:23°20’/ 95mm (3.7in)
ブレーキディスク:フロント2枚、リア1枚
タイヤ:フロント 120/70ZR17M/C (58W)チューブレス/リア 190/55ZR17M/C (75W)チューブレス
イグニッションシステム:エレクトロニックイグニッション
燃料タンク:16L
オイル容量:4.1L (1.1/0.9 US/Imp gal)
GSX-R1000(ABS有り、無しを選択可)カラーラインナップ:メタリックトリトンブルー/パールミラレッド/メタリックマットブラック
GSX-R1000R(ABSモデルのみ)カラーラインナップ:メタリックトリトンブルー/グラススパークルブラック