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★新型GSX-R1000Rの生まれ故郷を尋ねて - スズキ工場ツアー

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スズキの工場訪問に関する面白い記事がありましたのでご紹介します。GSX-R1000の製造ラインだけでなく、日本人、日本製品の素晴らしさにも触れており、読んでいて思わず嬉しくなる内容となっています。

管理人はスズキ(株)に新卒入社した当初、ライン研修で3ヶ月ほど湖西工場で軽自動車の車体ハーネスと左側のホイールをせっせと取り付けていました。そのため、こうしたラインの動きだとか職人と言われる作業員のこだわりが凄くよく分かるので、「うんうん。」と頷きながら翻訳させていただきました。 f:id:teletele916:20170220140541p:plain 1960年台はイギリスがヨーロッパ、そして間違いなく世界をリードしていた。しかし70年台になる頃には不吉な前兆があり、70年台の最初の数年間にBSA、Norton、Triumphなどがそのブランドの終焉を迎えた。(※売却されたなど)イタリアブランドでさえ80年台には苦戦をしていた。Triumphはその後復活し、現在は素晴らしいモーターサイクルを製造している。Nortonは未だにブランドの復興をしようとしている。モーターサイクル業界はこうした時代の中で大きく揺れたという事は間違いない。


これらは日本メーカーがこの世界に参入し、既存のモーターサイクルよりも遥かに高品位で巧みな設計のモーターサイクルで市場を満たした事が理由だ。日本人は彼らにとっては当たり前の品質管理が、他のどのメーカーよりも勝っていることに気づいた。他の先進国では製品の不良率が全体の10%というのは許容範囲であるが、日本ではこんなことはあり得ない。単純に日本人は遥かに高い基準を持っているのだ。


しかしそれだけではなく、イギリス人はそれまでアンティークのデザインと時代遅れの技術に長い事頼りすぎたのだ。少しの例外はあったにしても、業界として4ストロークパラレルツインでプッシュロッド式のバルブという設計を超えるものを生み出して来なかった。BSAがロケットIIIをリリースし、TriumphはHurricaneをシリンダーを足しただけという形で発表。彼らのやっていることはあまりにも単純で、競争していくには(技術的進歩が)遅すぎたのだ。


日本メーカーは全く別で、実に革新的で、そうした革新性は市場に驚くほどのスピードでもたらされた。単純に日本メーカーが新しいモーターサイクルを市場に送り込む時、そこに敵はいなかった。NortonやTriumph、ホンダのCB750、カワサキの3気筒、スズキのGT750などを所有する私の親友が持つモーターサイクルは、全て60年代後半から70年代前半のものだ。そして我々はそうしたバイクに日常的に乗っている。


言うまでもなく、こうした本当にカリスマ性のあるバイクに乗るのは常に楽しい。ただ感情を別にして評価をすると、技術的な内容、品質、設計の正確さ、そして究極的には信頼性など無数の違いが存在する。イギリス製のモーターサイクルで日本製を超えているものは1台も無いのだ。このモーターサイクル達が新品だった当時は、その違いは空いた口が塞がらないほどの驚きだっただろう。


私は幸運にも今までに何度か日本を訪れているが、その度に日本文化、働き方などに深く感銘を受ける。人々がフレンドリーで歓迎してくれるということだけでなく、何事にも細かく気が行き届いているのが物凄く良く分かるのだ。働く日本人の誇りというのがまずあるだろう、そしてもう1つは、実に些細な事にまで集中出来るということなのだ。1つの例を出すと、寿司の板前になるのに、見習いは米を炊くのを習う事が出来るまでに1年も必要とするのだ!


新型の2017年型GSX-R1000Rはスズキにとって実に重要なモーターサイクルだ。このバイクは1985年にGSX-Rが世に発表されてスポーツバイク界を震撼させたという出来事の最新バージョンと言ってもいい。このモーターサイクルはスズキのオリジナルデザインコンセプトである「簡単に楽しくライディング出来る/機敏でありながら安定している/ライダーに完全な安心感とコントロールを与える」というコンセプトを内包している。


スズキのモーターサイクルデザインの基礎は、「走って」「曲がって」「止まる」というモーターサイクルのパフォーマンスの本質にあり、スズキのエンジニア達は、新型GSX-Rはこの目標を全て達成していると言う。であるからして、スズキの本社と浜松にある生産拠点を訪れ、新型GSX-R1000に先立って乗れるという話をもらった時に、私は小躍りして喜んだ。


最初に訪れたのはスズキの竜洋テクニカルセンターで、この高速のテストコースではスズキの全モデルのテストが行われる。この施設は様々な路面が用意されており、スムーズな路面からバンピーな路面、モトクロスマシンのためのオフロードコースもある。その後、高塚エンジン製造工場に行き、最後に豊川にあるアッセンブリ工場を訪れた。そこで他のマシンと共に、最初のアメリカ市場向けのGSX-R1000Rが製造ラインから出てくるのを見守った。


高塚エンジン製造工場は、合計して28種類の製造ラインがあり、そのうち4つが異なるモデルに使用するクランクシャフトの製造に使われている。巨大なミル、加工機がある7番ラインはGSX-R1000のエンジンのためのものだ。スズキの品質管理はまさに驚くほどだ。例えば全てのGSX-Rのクランクシャフトは鍛造、マシニング、硬化、最終研磨というプロセスを経て、人の手で顕微鏡カメラを使用して検査される。検査は内部のオイルホールとその通路が完璧にスムーズに詰まりなどないようになっているかを調べるものだ。こうしたレベルの検査が、モーターサイクルの全ての部品と組み立てについて行われている。高塚工場はエンジンクランクシャフト、シリンダー、シリンダーヘッド、クランクシャフトを製造しており、いくつかの内部パーツを供給している外部ベンダーの助けもあって、およそ200基のGSX-R1000のエンジンが毎日製造されている。


豊川アセンブリ工場は、エンジン製造工場から約2時間運転したところに位置する。設立されたのは1971年10月で、中型から大型のモーターサイクルの製造のために建設された。ここには約630名の作業者がおり、12の(モデルレンジを合わせると47種類)750cc以上のモデルを製造している。またここではスズキの3種類のATV、19種類の船外機を製造している。GSX-R1000の製造に関わるラインで働く作業者達は、他のスズキの工場から供給されるパーツ、およそ172の外部ベンダーから供給される部品を使用して、1日に約240台のGSX-R1000を製造している。各製造ラインではおよそ51台のマシンが製造されており、ラインの長さは約90mだ。


実際1つのモデルから別のモデルへ製造を切り替えるのには5分しかかからず、これはラインで使用している部品を交換するだけで済む。5分というのはラインの中で2台分のスペースが開くだけだ。そして完成ラインから出てきたモーターサイクルは、2台のローラーの上でビルトインブレーキ/ABS、トラクションコントロールをテストするテスターの手に委ねられる。


こうした工場ツアーは素晴らしいものだった。この訪問は私に、優れた知恵と執拗なまでの品質へのこだわりが、日本がモーターサイクルの大量生産においてここまでの成功を長期間収めているのだという気付きを与えてくれた。1日の最後に、スズキの工場で働く作業者達が、彼らがやっている仕事の全てに並々ならぬプライドを持っているという事に圧倒されて、私は工場を後にした。一人ひとりが最高のものを作るという大きな情熱を持っており、従業員たちは明らかに成功のために、企業の規律と文化を守っていた。


スズキの社是は「消費者の立場になって価値ある製品を作ろう」というものだ。そして全ての従業員が、この社是を実現する事に集中しているように思える。全ての従業員がこの考えを持ち、彼らの仕事に集中している。全ての仕事をする作業者がプライドを持って仕事をしていることは明らかであり、全ての従業員は彼らが小さな存在であるが、巨大な機械の歯車の歯のように重要な存在であることを知っている。もし彼らが仕事を正確にこなさなければ、機械全体が止まってしまう。だから誰も間違う事が出来ないのだ。スズキの従業員は、その製造に関わるあらゆる物事を実に真剣に捉えている。その証人となれた事は印象的な出来事だった。
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