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★Suter MMX500 全世界99台の中の19台目のバイク

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全世界限定99台のSuter MMX500の、アメリカにおける最初の1台となったシリアルナンバー19のバイクについて取材した記事をご紹介します。現代に蘇った2スト500ccという紹介のされ方をするMMX500ですが、実際は低速域からしっかりとトルクがあるエンジンとのことです。 f:id:teletele916:20170211233943p:plain Suterレーシングテクノロジーは1996年にEskil Suterによって、彼の250cc、500ccの世界チャンピオンシップ参戦のキャリア終わりに設立された。まずはレースクラッチの製造から始め(現在はMoto2のクラッチを製造している)Suterはその後、スイスはチューリッヒ近くの工場で様々なエンジニアリングを行う企業となった。彼らはシャーシ、コンセプト車両、エンジン、クラッチシステム、スペシャルコンポーネントのほか、完全に自社内で作り上げたプロトタイプモーターサイクルの製造までを手がけるようになった。

f:id:teletele916:20170211233944p:plain Suterレーシングテクノロジーは、2002年から2005年までWSBKに参戦した3気筒900ccのペトロナスFP1スーパーバイクのエンジンの製造も行っていた。また同様に2004年から2006年のMotoGPに参戦していたカワサキZX-RRの開発協力も行っていた。2006年と2007年にSuterはイルモアエンジニアリングのMotoGP参戦バイクである、800ccのイルモア X3のシャーシ開発に協力した。

f:id:teletele916:20170211233945p:plain 2010年にSuterレーシングテクノロジーはMoto2にシャーシ供給を開始。そして2010年から2012年にはマニュファクチャラーズタイトルを3連続で獲得。2012年にはマルク・マルケスがSuterのシャーシを使用してMoto2の世界チャンピオンとなっている。2012年のクレイミングルールによって、SuterはBMWのS1000RRのエンジンを使用したMotoGPプロトタイプマシンを制作し、Marc VDSレーシングとフォワードレーシングに供給している。

f:id:teletele916:20170211233950p:plain 価格に頼ることなく、Suterはそのスイスならではの品質、クラフトマンシップで、競合メーカーよりも速く優れたエンジニアリングによる製品を制作することに注力してきた。優れたエンジニア、テクニシャンがトップチームを徹底的に調査、分析し、最先端の製造工場によって、地球上で最も驚くべき製品が生まれた。

f:id:teletele916:20170211233956p:plain 2016年にSuterは99台限定で、MMX500の生産をする事を発表。サスペンションとエレクトロニクス以外は、全て自社製造で新たなバイクが製作されることとなった。自社製造でエンジンとシャーシを製造するというのは驚くべきことであり、最終的に完成した製品は息を呑むほど素晴らしいものだった。全ての細かいディテールまで驚くほど美しく、その正確性のレベルと隅々まで行き届いた心配りは素晴らしい。マシンの1台1台がその素晴らしさを語っているのだ。

f:id:teletele916:20170211233957p:plain 不運なBimota V-Due(※Bimota初の自社製造エンジンとなる2スト500cc 90°Vツインエンジンを搭載したスーパースポーツモデル)が成し遂げられなかったものを成し遂げたSuter MMX500は、フューエルインジェクションの水冷2ストロークV型4気筒 576ccエンジンを搭載し、逆回転クランクシャフト、ボア x ストロークは56mm x 58.5mm、レッドラインは13,000回転というもので、さらに自社製の乾式クラッチ、6速カセット式トラックシフトギアボックスを搭載したものだった。

f:id:teletele916:20170211234008p:plain シンプルで軽量な2ストロークの技術を採用し、Suterレーシングは圧倒的なパワーウェイトレシオを手に入れた。このバイクはピークパワーが195馬力であるのに対し装備重量で僅か127kgしかないのだ。そうこれは読み間違えではなく127kgなのだ。これは驚くことに現行のMotoGPの最低重量である156kgから29.4kgも軽量ということになる。このバイクが発表された時にかなりの騒ぎになったというのは、控えめな表現だ。

f:id:teletele916:20170211233948p:plain MectronikのECUが燃料供給を担い、エンジンは混合器をカーボンリードバルブから受け取る、排気はフラッパーバルブからアクラポビッチのチタンエキゾーストから排出される。2Dのデータロガーはオプション装備だ。しかしそれとフューエルインジェクションがあることを除いても、ライダーを助けるための電子制御の類は一切存在しない。つまりトラクションコントロールやウイリーコントロールはMMX500には存在しない。

f:id:teletele916:20170211233952p:plain Suterは現代の洗練されたフューエルインジェクションを使用しても、こうした種のエンジンパワーをコントロールしようとする事はリスクでしかないとすぐに気づいたのだ。2ストロークエンジンは4気筒エンジンよりもずっと混合気に対して敏感なのだ。

f:id:teletele916:20170211234002p:plain Suterの伝統的なアルミツインスパーのシャーシとしっかりとしたスイングアームは、最高級のオーリンズ製サスペンションで支えられている。同様に最高峰のブレンボ製のブレーキが313km/hのトップスピードを制御する。アルミニウムのGPスペックの17インチOZホイールは、オプションでマグネシウムホイールに交換が可能。そしてフロントには125/75R-17インチのダンロップ製スリック、リアには205/75R-17インチを履く。カーボンファイバー製のボディワークと燃料タンクは素晴らしい仕上げで、ペイントもしくはデカールをカスタマイズ行う事が出来る。

f:id:teletele916:20170211234006p:plain Suter MMX500は基本的にオーダーメイドで、19番目の車両、そしてアメリカで1台目となる車両は中西部のDave Frick が購入した。彼はカリフォルニアの砂漠にあるThe Thermal Clubで彼のバイクを受け取るためカリフォルニアまで飛行機で飛んだ。これはGP TeckのGeoff Maloneyの計らいによるもの。

f:id:teletele916:20170211234007p:plain Daveの事を2ストローク狂いの人間という人間もいるが、彼は数台のビンテージのストリート、レースバイクを所有している。そしてそのどれもが2ストロークなのだ。彼はレーサーであった事はない。しかし彼はレーストラックを走るのが好きで、SuterがMMX500を発表した時、彼に取っては完璧なバイクに思えたのだ。Dave Frickはこう語っている。「このバイクは本当に美しく、その作りや細部の仕上げなどの美しさから2台目を購入して部屋に飾ろうとしたんですが、妻に反対されました(笑)」

f:id:teletele916:20170211234004p:plain 筆者はこのバイクを乗る機会が無かった。Daveが数セッション走行した後にその感想を聞き、その日の終りにUltimate MotorCyclingのコンサルタントであるKaming Koが雨が降る前に数周を楽しんだ。

f:id:teletele916:20170211234001p:plain Daveの新しいバイクへの感動に満ちた感想は、明らかにそのパワーウェイトレシオからくるものだ。彼はこのバイクを「何も考えずに曲がる」と形容する。Suterのフレームはまるでナーバスさがない素晴らしいものだ。私はDaveをFZ-10で追走しながら、いかにこのバイクがサーキットの低速のシケインを流れるように切り抜け、自分を置き去りにするかに関心した。「排気量に勝るものはない」とは言うが、恐ろしく軽量なバイクにそれは当てはまらない。

f:id:teletele916:20170211234000p:plain Kamingは何台もの2ストロークバイクを所有し、70年台にはカワサキのH2Rでレースに参戦した。であるからして、彼はSuterを試したいと思っていた。彼のMMX500の印象は「とにかく軽くてライダーのインプットに対してシャープに敏感に反応する。自分が昔所有しレースを戦ったポンコツとはわけが違うね。」と彼は笑う。パワーデリバリーに関して尋ねると、それは昔ながらの2ストに一般的な限定的な回転域でのパワーデリバリーではなく、豊かな低速トルクを持つ幅広いパワーバンドとのことだ。

f:id:teletele916:20170211233958p:plain Kamingによるとそのインプレッションは驚きに満ちたものだという。「MMX500のエンジンは5000回転から13000回転までスムーズに回るんだ。9000回転以降は回転の上昇が穏やかになるけどね。このエンジンはパワーが少ない自分のH2R(※70年台の2スト750cc)ほど凶暴ではない。でも結局のところライディングは非常に恐ろしい。ただ4000回転以下でも綺麗にエンジンが回るんだ。」

f:id:teletele916:20170211233955p:plain Suter MMX500はオンボード燃料トリムモードというものが付いており、これによってライディングしながら燃料供給量をプラスマイナスについて5段階づつ調整出来る。ライダーはこれによって好きなように燃調を行う事が出来る。なお、基準セッティングはエンジンを守るため濃いめになっている。

f:id:teletele916:20170211233954p:plain Kamingは「MMX500は自分が今まで乗ってきた2ストロークバイクの中で最高のバイクだ。たとえそれが微妙な天候の中での数周であってもね。」と言う。価格は128,000スイス・フランと送料、関税などだ。為替レートにもよるが大体$150,000(※約1700万円)になるだろう。

f:id:teletele916:20170211234005p:plain 筆者に$150,000を貸し付けてくれる人がいれば連絡をして欲しい。購入希望の場合はSuterレーシングまで連絡を。

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