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★MotoGP中間レビュー:ウイングレット

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moto mattersのエメット氏のMotoGP中間レビューの第3段。今回はウイングレットに関する色々です。ウイリー防止という効能が知られるウイングレットですが、そこから繋がって結果的に最高速が上がるというのは、なるほどと言う感じです。 f:id:teletele916:20160806081538p:plain タイヤに影響を及ぼす可能性がある要因の1つにエアロダイナミクス戦争がある。これはフェアリング前面のあらゆる表面から生えている羽のことだ。”ストレーキ癌”の発症でウイングレットはサイズ、そして装着面の両方で増加を遂げた。最新版のDucatiデスモセディチGPはマンフレート・フォン・リヒトホーフェンのフォッカー Dr.Iを思わせる。(※第一次世界大戦で最高撃墜機記録を持つドイツ人のエースパイロット「レッドバロン」の異名で知られる。)


Ducatiはエアロダイナミクスウイングレットのポテンシャルに気付き、昨シーズンのカタールでウイングレット付きのバイクを登場させた。昨シーズンはこれに対して懐疑的な考えが多かったが、ヤマハが彼らのバージョンのウイングレットをアラゴンで突如として登場させた。


2016年にウイングレットの流行はパドック全体に感染し、5つの全てのファクトリーが何らかのエアロダイナミクスデバイスを装着しているのだ。なぜDucatiはウイングレットを使い初めたのか?なぜならそれは機能するからだ。これに関するデータを見たエンジニアは、その影響は目に見える形で現れていると語る。ウイングレットがある場合は、ウイングレット無しの場合と比べてウイリーが減少するという。


ウイリーが減少するということは、エレクトロニクスを使用してパワーとトルクを抑えてウイリーを制御する必要がなくなるということだ。ということは、バイクをコーナー出口で激しく加速させる事が出来、ストレートの終わりでより高いトップスピードに到達することが出来るというわけだ。その他のファクトリーも全て同じ結論に達したため、ウイングレットが大流行したのだ。


ウイングレット禁止の背景

あまり時間を置かずに、安全に関する懸念が数名のライダーやファクトリーから何度か持ち上がった。最も顕著なのはホンダだ。これはアルゼンチンGPの第1コーナーでアンドレア・イアンノーネのウイングレットがマルク・マルケスに接触したことにある。 マルケスは後ろからイアンノーネ機のウイングにヒットした事で怪我はしなかったが、カル・クラッチローを含む数名のライダーは、マルケスが怪我をしなかったのはバックプロテクターのおかげだと述べている。


安全性に関する懸念はグランプリコミッションで話し合われ、ファクトリーを代表するMSMAは、GPCが採用する事になるウイングレット禁止に関する提案を全会一致で作成するようにと告げれらた。もし彼らがこれをしなければ、グランプリコミッションは彼ら自身の提案内容を提示し、これによって多数決が行われる事になった。


これはウイングレットを禁止したいと思っていたドルナとIRTAによる優れた政治活動だった。彼らはファクトリーが自分達では絶対に全会一致で合意には至らないことを知っていた。つまりDucatiは開発を続ける事に熱心であったし、ホンダはこれに激しく反対していたからだ。そしてアッセンGPでMSMAが全会一致で合意に至らない限り、ウイングレットは2017年から禁止されるという提案がなされた。ファクトリーは合意に至らず、こうしてウイングレットは禁止されることとなった。

危険だと思っているところに危険が潜んでいるわけではない。

現在MotoGPで使用されているウイングレットは本当に危険なのか?そうと言えるが、これはウイングレットが危険だと言われている理由からではない。今までのところ、ウイングレットが転倒によってライダーの体を傷つけたりしたことはなく、鋭く固いその他の部品のほうがより直接的な危険と言える。


ウイングレットが非常に危険なものとなるのはストレートの終わりだ。コーナーからより良い形で立ち上がれるという事は、ストレートでより高いトップスピードに到達するという事でもある。より高いトップスピードという事は、ライダーがブレーキングの最中に転倒しグラベルにスライドしていった時に、より速く移動するということでもある。


より高いスピードでの転倒はコーナーにより広いランオフエリアが必要という事を意味し、トラックは既にその余裕を失っている。グラベルベッドを広げるという事はいくつかのトラックでは構造的に難しい。また、その他のサーキットではこれは法外に高額になってしまう。


高まるスピードに対応するランオフエリアは、カレンダーの中でも主要なサーキットで問題となりつつある。ヴァレンティーノ・ロッシは「そういう事が出来るのはカタールくらいでしょう。」とルイス・サロムがバルセロナの転倒で死亡した後に語っている。


サロムの悲劇的な事故は、転倒がスピードに関連するものでは無かったとは言え、トラックのランオフの問題を象徴していた。しかし問題が無いサーキットというのが少ない、もしくは、すぐにではないがスピードが高まるにつれて問題に直面するという事は明らかだ。

駆け引きの被害者

皮肉な事に、ファクトリーはさらに過激な手段を受け入れる準備をしていれば、ウイングレットを維持できたかもしれない。ファクトリーは最大ボア制限81mmを導入する前、明らかにトップスピードの制限に繋がるレブリミットを拒否している。またファクトリーは、洗練されたトラクションコントロールとアンチウイリーを実現する現在のスペックエレクトロニクスのパフォーマンスレベルについても(さらになる性能を)要求している。


もしドルナが望んでいたように統一ソフトウェアが本当に低レベルなものになっていれば、これはトップスピードに関して大きな影響を持っていただろう。つまりファクトリーにはエアロダイナミクスを模索するという余地が残され、ウイングレットも維持されていただろう。


実際には、未だにエアロダイナミクスの役割はあるかもしれない。秘密は既に皆の知るところとなり、全てのファクトリーがエアロダイナミクスデバイスの加速を向上させるという効能を信じている。


ザクセンリンクの後、MotoGPのテクニカルディレクターであるダニー・アルドリッジ、テクノロジーディレクターであるコラード・チェッキネロ、レースディレクターのマイク・ウェッブは、ファクトリーがウイングの禁止を避けて使用するかもしれないその他のエアロダイナミクスデバイスを取り締まる方法について話し合う予定だった。


これは時間の制約の都合で実現しなかったが、オーストリアとブルノ戦の間に予定されている。これは長く難しいものになるだろう。そして、ルールブックが薄くなることはない。

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