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★IMU(慣性計測装置)は本当に必要なのか?

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最近では最新のスポーツバイクの代名詞ともなりつつあるIMU(慣性計測装置)ですが、実際のところ装備されているとどのような違いがあるのか?ということに関する記事がありましたのでご紹介します。

★IMU(慣性計測装置)は本当に必要なのか

Q

いつも素晴らしい記事をありがとう。バイクに関連したニュースであればいつも自分がチェックにいくサイトになっています。現代のハイテクのモーターサイクルは車両の方向を知るためにIMUを搭載しています。IMUから得られた情報はトラクションコントロール、ABSなど電子的なライダーアシストの制御に使用されます。これが自分が最低限理解している内容ですが、IMUのアシストがあるシステムとIMUが無いシステムとでは大きな差があるのでしょうか?


例えば2台の現代のスーパーバイクであるBMW S1000RRとアプリリア RSV4では、BMWはIMUをライダーアシストの中心システムとして使用しています。自分が知る限りアプリリアはそうではありません。しかしアプリリアは比較記事ではより高いスコアを記録しています。もちろん他の要素も考える必要があるのでしょうが、近年では自然な電子システムの介入というのが最新のスポーツバイクでは鍵のように思えます。アプリリアはIMUなしにBMWと同じくらい素晴らしい制御が出来ているのでしょうか?IMUを電子アシストとして実装するという事は、実際の世界ではどの程度重要なんでしょうか?


カイル



A

カイル質問をありがとう。まず最初に話を聞いたのはアプリリアのシェーン・パチッロ。彼は次のように語ってくれた。「アプリリアはIMUを搭載しています。これは5年ほど前から搭載しているわけですが、その他のメーカーは最近その流れに加わったんです。」


これは事実で、その他のメーカーは彼らのより拡張されたIMUを自慢気に語っているわけだ。アプリリアが始めてIMUを搭載したのは、2011年に発表したAprilia Performance Ride Control (APRC)を搭載したRSV4でのこと。これは当初センサーボックスと言われシート下に配置されていた。現在ではこれはIMUと呼ばれている。


アプリリアのサイトではIMUに関する記述は無いが 、確かに搭載されている。今ではオリジナルのユニットよりも進化し、縦、横方向の加速度を計測し、ロールとヨーも計測している。ヤマハのR1MとDucatiの1299パニガーレに搭載されている6軸ユニットは、これにピッチングセンサーを加え、さらに優れたウイリーコントロールを実現している。これは素晴らしく聞こえるかもしれないが、それはBoschが最近スマートフォンや時計に向けて9軸の小型IMU(BMX160)を発表したと聞くまでの間だろう。またBoschだけがIMUを製造している企業というわけではない。コンチネンタル(Continental)はドイツの企業で、高速で小型のIMUを製造している。


IMUはどれだけ重要なのか?MVアグスタの研究開発部のディレクターである(※MVの以前のレースマネージャー)ブライアン・ギレンに話を聞いた。

「IMU/リーンアングル/ピッチアングルセンサーは近年の車両の安定性制御システムにおいて中心的な役割を担っています。これなしにはターンアシストABS、ウイリーコントロール、リーンアングルトラクションコントロールは実現不可能です。トラクションコントロールに関しては、タイヤの転がり半径、コンタクトパッチがリーンアングルの1次関数と言えます。これはIMUからの情報無しには最適化することは難しいんです。これ無しには車体の直立時に効き過ぎるトラクションコントロールか、フルバンクの際に繊細さが無いものになってしまいます。これが、ライダーアシストシステムは、ソフトウェアアルゴリズム、キャリブレーションマッピングと共に、一連の物理的構成要素であると言われる所以です。この3つの組み合わせによって、いかにライダーアシスト機能が優れているかが決定されるわけです。」


我々はリアホイールとフロントホイールの速度差を比較するだけの最初のトラクションコントロールシステムから、最新のシステムに随分あっという間に到達してしまった。回転数の上がり方からホイールスピンを検知しパワーと抑えるBazzaz(バザース)ようなものも、AMAがトラクションコントロールについて知る前に存在した。これらのシステムは便利なものであったが、ホイールスピンが発生するまでそれに対処出来ないという事実があった。

カワサキは最新のZX-10Rのトラクションコントロールシステムに事前にホイールスピンを予測するような機能を搭載している。2016年型のZX-10RにはBoschの新世代のIMUが搭載されている。これは5軸のパラメーターを届け、ECUによって6軸に計算されるというものだ。エンジン回転数、スロットルポジション、スリップ率、加速度などが含まれ、これらはダイナミックなコントロールを可能とし、悪条件での予測が可能となる。GPSとの組み合わせで、”ライダーがウォームアップに出る前に各コーナーで出せる最高速度についてバイクが知らない”という未来は予想が難しい。


★IMU(慣性計測装置)は本当に必要なのか

質問の最後である、”現実にライダーにとって最新のシステムがどの程度使えるものなのか?”という質問は面白い。トラクションコントロールとリーンアングルABSは、激しく雨が降った場合には神からの贈り物と言えるだろう。しかし、最新のバイクで現代のタイヤを履いてドライコンディションの場合、これらのシステムを作動させるには本当にアグレッシブにライディングする必要がある。もしライダーが予想しない出来事に驚かされた場合、もしくはライダー自身に思慮分別がない場合、これらのシステムは絶対必要になると言える。


少しスキルは必要であるが、ラグナセカのストレートでヤマハR1でもウイリーを持続出来る事がわかった。しかしヨーやロールコントロールから恩恵を受けるには、JDビーチ(MotoAmerica スーパースポーツチャンピオンシップを戦うアメリカ人ライダー)のようなクローズドコースでのスキルが必要だ。これらのスピードに到達するには、一般のライダーであれば数回では済まないレベルのサーキット走行の経験が必要だ。


レースのシリアスな世界でフロントで走るためには、こうした電子システムのパッケージを装備している事が必要不可欠になってきている。こうした資本主義の世の中では、レースよりもマーケティングという意味合いのほうが強いと言えるだろう。電子的なライダー補助システムは既にレースチームによって開発されており、IMU自体は高価では無いし、サムドライブ(USBドライブ)よりも場所を食わない。であればエキサイティングなアクロニム(頭字語)と共に市販車にも搭載しない手はない。


個人的にはこうした電子的なアシストの最高の使い道は、私もそうだが、ダートを激しく恐れているライダーがパワフルなアドベンチャーバイクをダートで走らせるとか、さらに酷い状況の時だろう。最新のトライアンフエクスプローラーでは、ロードからオフロードモードに変更するだけで、サスペンションのアジャスト、トラクションコントロール、パワーデリバリー、ABSが路面に応じて変更される。瞬時にして競走馬から足取りのしっかりしたロバへと変身するわけだ。同じ事がKTM1290スーパーアドベンチャーや、BMWの1200GSなどにも言える。IMUという精霊は既に世に放たれたわけだが、今のところ良い働きをしていると言えるだろう。

www.motorcycle.com

http://www.bosch.co.jp/press/group-1606-06/