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★MotoGP2016 スズキGSX-RRのシャーシの秘密

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Cycle Worldにアメリカの鈴菌Nick IenatschさんのEcstarスズキチームへの取材レポートがありましたのでご紹介。スズキのGSX-RRは他のメーカーが取り入れていない何がしかを取り入れているとのことですが、どうやらこれはシャーシに関連する何かのようです。これは鈴菌ならずとも超絶に気になりますね。

★MotoGP2016 スズキGSX-RRのシャーシの秘密

先週のオースティン戦でスズキのGSX-RRは4位5位レースを終えた。マーヴェリック・ビニャーレスとアレイシ・エスパロガロはマルク・マルケス、ホルヘ・ロレンゾ、アンドレア・イアンノーネというホンダ、ヤマハ、Ducatiのバイクに次いでレースを終えた。確かに数名のトップライダーの転倒はあったが、この2年目のチームに転倒者はいなかった。私のCOTAでの主な注目は、皆さんと同じようにスズキだった。私は今までスズキのバイクを所有してきたし、今でもスズキを所有している。私の父が1975年にオレンジのGT750を購入し家に乗って帰ったきた時が、私にとって初めてバイクに跨った時だった。1976年に父は私にTM125を買ってくれた。スズキが1980年にGS1100をリリースした時父はこれを購入し、私はCooleyレプリカを購入した。翌年に私はユタ州ソルトレイク・シティのディーラーで働き始め、1984年にMotorcyclist magazineに雇われるまでそこで働いていた。その間に父は2台のGS1100を購入し、私はカタナ1000、GS850G、GS1100Gを購入した。月日が流れる中で、私のこうした経験はスズキファンにとっては不思議では無いことを知った。その後にGSX-Rシリーズが1986年に登場し、私達は再びスズキの魅力にとりつかれた。スズキはアメリカのスポーツバイクの情熱に火をつけ、このメーカーがMotoGPに戻ってくるというのは、非常に興味深い事なのだ。

★MotoGP2016 スズキGSX-RRのシャーシの秘密

GPサーカスがテキサスに来る時点で疲れきっているのは仕方無い。ドルナのスタッフやジャーナリスト、チームはカタールでシーズンをスタートし、ブラジルに飛び、そしてテキサスに来るわけだが、これは僅か4週間のうちの出来事なのだ。こうしたスケジュールにも関わらず、Ecstarスズキのメディアコーディネイターのフェデリコ・トンデッリは大いに私を助けてくれた。そして幸運にも私はスズキのGPの歴史の中でも2人のメインプレーヤーを既に知っていた。トム・オケインはアレイシ・エスパロガロのクルーチーフで、51歳のアイリッシュだ。彼は1988年にグランプリでケニー・ロバーツシニアのチームにおいて、ランディ・マモラ、マイク・ボールドウィンと共に働いた。97年にロバーツは彼を自分のチームに引き抜いた。オケインは「一晩中作業するなんて事はザラだったけど、あの経験は他には変えがたいね。」と語る。私はMotoGP.comの創刊兼編集者を99年から01年に努めており、オケインの仕事を個人的に近くで見ていた。その後オケインはケニー・ロバーツジュニアとクリス・バーミュレンと仕事をし、スズキのV型4気筒のレーサーバイクの面倒をみた。

★MotoGP2016 スズキGSX-RRのシャーシの秘密

土曜の夜にオケインは私とメディアセンターに座り、GSX-RRについて話してくれた。スズキのV型4気筒バイクのプロジェクトが終わった後、オケインはBMWのWSBKチームにシャーシ、そしてエレクトロニクスのエンジニアとして加入していた。しかし2012年にスズキは彼にGPプロジェクトについてメールで打診。2013年に彼はスズキに雇われた。オケインはウォーレン・ウィリングの元で働いていたが、スズキは彼を欲し、オケインはチャンスに飛びついたのだった。「スズキでまた働き初めていかに感銘を受けたことかわかりません。というのバイクは私が想像していたよりもずっと素晴らしいものだったんですよ。彼らはそれを二代目のプロトタイプだと語っていました。しかし日本人のデザイナーとテスター達は本当に素晴らしい仕事をしたと思います。」


私はオケインに年間予算について尋ねてみた。オケインは笑いながら「スズキは今のチームからの要求について断ったことは一度もないですね。彼らは本当にコミットしていてそして現在成果が出ている。この4気筒エンジンは前回の800ccのV4プロジェクトとは全く別の新しいデザインです。皆その幅について心配していたんですが、スズキは前回のV4エンジンとほぼ同じ幅に収めました。」と語った。オケインのまず最初の大きな仕事は今年から採用が必須となったMagnetti MarelliのエレクトロニクスをGSX-RRに適応させることだ。なお、GSX-RRはずっと三菱のデータシステムで開発が進められてきていた。「ハイブリッドという形でまず作業を進めました。2つを繋げて三菱のソフトウェアをMagnetti Marelliのハードウェアに入れていたんです。そしてその後完全にMagnetti Marelli製のものに入れ替えました。」グランプリチームは大きく複雑な組織だ。オケインが私をガレージに招いた時は非常にガレージ内は忙しい状態だった。「ライダーごとに3人のメカニック、そしてクルーチーフを持っています。そしてデータエンジニア、そしてマッピングエンジニアもいます。またタイヤメカニックもついています。我々のチームにはミシュランとブレンボのテクニシャンも1人ずついて、さらにライダーごとにオーリンズのテクニシャンもついています。」

★MotoGP2016 スズキGSX-RRのシャーシの秘密

GSX-RRは通常燃料タンクカバーを外した状態で置かれている。オケインによると「全てのバイクにウォームアップ用のタンクが別にあり、レースの際はレース用タンクに交換します。」とのことだ。その後会話は不思議な方向に進んだ。私はバイクを眺めている中で、思わず顎に垂れたヨダレを拭きながらオケインが温度センサーについて説明するのを聞いていた。私は「スズキがこれほどに短期間でフロントに戻ってこれたのには、何かデザイン上、エンジニアリング上の特別な理由があるのかな?」と尋ねると、オケインはトンデッリをちらっと見て、「ええ。他のメーカーがどこもやっていない内容があります。来年かそこらに聞くことになるかもしれませんね。」と語った。 その後私はガレージの外に案内された。恐らくオケインが話していた内容の詳細については、私の未熟な技術的な観点を遥かに超えたものだろう。私はオケインに、GSX-RRをスタンドから降ろして私自身の教育の為にサスペンションの感触を感じて良いかと尋ねたが、これは断られた。唯一確かな事は、スズキはグランプリマシンを作成するという複雑なパズルの中で、独自のユニークで明確な道筋を辿っているということだ。彼らはシュワンツ、ロバーツジュニアと共に世界の頂点に立っていたメーカーだ。彼らはそこに辿り着く道筋を知っている。

★MotoGP2016 スズキGSX-RRのシャーシの秘密

日曜日に私は2000年の500ccチャンピオンであるケニー・ロバーツジュニアと話す機会があった。彼と前回話したのは2000年のフィリップアイランドで、その時彼のチームは自分に彼のRGv500をライディングさせてくれた。彼と彼の妻は元気そうで、今年は娘とともにスキーを40日ほど楽しんでいるとのことだ。ケニーにはMotoGP.comの頃に本当に助けてもらった。彼はサイトのローンチを手伝ってくれ、偶然にも同年に世界チャンピオンを獲得した。我々はアメリカ人がサイトをオープンした時にアメリカ人がタイトルを獲得した偶然にミラクルを感じたものだ。もしケニーの助けが無ければ、私の仕事はさらに大変だったことだろう。私はケニーに「繰り返しになるけどありがとう。」と伝えた。ケニーは「GPには7年ほど来ていないから、ここで会うのは不思議だね。」と語った。私はここにはスズキの為に公式に仕事として来ているのか聞いたが、彼は「いや違うよ。」と答えたが、私はオケインから「ケニーがGSX-RRを観察する中での指摘が大きな助けになっている」と聞いていた。私がそれを伝えると、ケニーは「いくつか気づいた点があったから伝えたんだけど、助けになったようで良かったよ。」と語った。私は「ケニーのRGvとGSX-RRで何か共通点があるのかな?」と聞いてみた。ケニーは「スズキのDNAは全ての物事に反映されているね。ねじり剛性、ピボットのジオメトリー、重量の中心点などスズキのエンジニアがすべてのレースバイクに反映していることだよ。自分の500ccで仕事をしていたエンジニアが、今でもMotoGPバイクの仕事をしているんだ。」と語った。

★MotoGP2016 スズキGSX-RRのシャーシの秘密

ロバーツとオケインは少なくとも1988年からお互いを知っている。彼らはロバーツシニアのバイクで、そしてスズキの4ストロークのバイクで共に仕事をしている。この友情がジュニアの足をCOTAに向けたのだろう。彼はEcstarスズキのガレージでレースの間過ごした。そしてチームにいくつかのアイディアを伝えた。 「思うにリアタイヤをもう少し良く使ったほうが良いね。リアは良い働きをしているし荷重の受け渡しも悪くないみたいだ。個人的にはセッテングに関してここまでフロントと離されていれば、ありとあらゆる事をするね。ただトムに伝えたアドバイスとしてはリアをもう少し機能させろということだね。エンジンがようやく良い感じに仕上がってきたから、次はシャーシの番だね。」


By Nick Ienatsch

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