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★ロッシのDucatiでの失敗が、ロレンゾがDucatiに移籍する最大の理由となるわけ

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マット・オクスレイ氏によるロレンゾ選手のDucati移籍の理由に関する記事をご紹介します。先にご紹介したMotomattersのエメットさんの記事よりもさらに過去に踏み込んで、ロッシ選手のDucatiでの失敗こそがロレンゾ選手の移籍の核心的な理由であるという説です。

★ロッシのDucatiでの失敗が、ロレンゾがDucatiに移籍する最大の理由となるわけ

「なぜホルヘ・ロレンゾが過去10年のMotoGPタイトルで5度優勝しているメーカーから、過去8年勝利とはほど遠いメーカーに移籍したかについての理由を知っている。」という人間がいるとしたら、それは嘘っぱちだ。とはいえ、考えられる理由について少し考えてみよう。ほとんどのプロフェッショナルライダーが持つ移籍に関する動機は、喜び、エゴ、そして金だ。金がほかの理由よりも優先度が高くない限り、たいていの場合、金は一番最後の理由となる。これはあくまで私の想像に過ぎない。というのも本当の理由はホルヘ・ロレンゾしか知り得ないからだ。しかし私は彼の移籍の理由は、モーターサイクルレーシングにおいてVIPエリアに彼の地位を築くことにあると考えている。2つの異なるメーカーで最高峰クラスを制したライダーは、今までに5人、ジェフ・デューク(ノートンとジレラ)、ジャコモ・アゴスティーニ(MVアグスタとヤマハ)、エディー・ローソン(ヤマハとホンダ)、ヴァレンティーノ・ロッシ(ホンダとヤマハ)、ケイシー・ストーナー(Ducatiとホンダ)しかいない。

もしロレンゾがこのエリート集団に加わることが出来れば、彼が最高のライダーの1人である事を疑う人間はいないだろう。デュークやローソンを語るときに、同じ立場のライダーとして永遠に語り継がれるのだ。同時に、彼はロッシのようにライバルブランドで勝利を重ねるということも出来るし、ロッシが成し遂げられなかったDucatiでの勝利を遂げる事も出来る。実際、この2つ目の理由が何よりも彼を焚きつけるものなのだろう。彼がロッシが持つワールドタイトルの数を超える事は難しいと思われるが、この2つ目の理由は、彼がこの現代のモーターサイクルレーシングを定義するとも言えるロッシを超える事が出来る事の1つなのだ。


そしてこれはロッシのマインドゲームのもう1つのしっぺ返しとも言えるのではないだろうか?9度の世界タイトル保持者であり、こうした心理戦、ゴシップのマスターでもあるロッシだが、昨年10月にマルク・マルケスに仕掛けた心理戦では酷い形でのしっぺ返しを受けた。そして先月彼がカタールでロレンゾに仕掛けた心理戦もまた、同じような形を辿る可能性がある。ロレンゾはロッシがヤマハと契約を更新した事を受けて「彼には多くの選択肢は無いわけだし、契約更新出来て良かったですね。」と語っているが、ロッシはこれに対し「Ducatiに行くのは本当に勇気がいること。だからロレンゾは来年もヤマハに残るでしょう。」と語った。


これらの言葉がロッシにしっぺ返しとして帰ってきたのか?恐らくロッシのこの発言はリバースサイコロジー(※人にして欲しいこととは別の事を言うこと)であった可能位が高いが、この発言がロレンゾをユーザーフレンドリーなM1から、暴れ馬のデスモセディチに乗り換える気にさせたのだろう。しかしDucatiのバイクはもはや暴れ馬ではない。今や完全に異なるバイクなのだ。アンドレア・ドヴィヅィオーソは2016年のチャンピオンシップにおいて、もしアルゼンチンとテキサスで他のライダーにコース外に弾き飛ばされていなければ、3回2位を獲得していただろう。そして疑う余地なくロレンゾのほうが速く、ドヴィヅィオーソよりも勝利に飢えているライダーだ。別の言い方をすると、彼がDucatiに乗り換えてすぐに勝利しないという事は考えられない。我々はロッシが間違ったタイミングで間違った理由でDucatiに移籍した事を理解している。彼はヤマハにとって新しいお気に入りの息子に自分のお株を奪われるのが気に食わなかったのだ。


そして今回、ロレンゾがDucatiに移籍するのはまさに最適なタイミングでの移籍と言える。ジジ・ダッリーニャが昨年作り上げた新型のデスモセディチは全く今までとは異なるバイクで、ストップ&ゴー型のバイクではなく、コーナリングスピードの高いバイクだ。つまりこのバイクのダイナミズムはロレンゾのスムーズなライディングにマッチするだろう。彼にとって上手く機能するバイクを乗るという喜び、そしてロッシが出来なかった事を成し遂げるというエゴは満たされる。では金はどうだろうか?これに関してもDucaitは疑いの余地なくヤマハよりも高給を支払うだろう。レースは他の物事と同じく需要と供給で動いている。誰もがM1のように勝てるバイクを欲し、誰もがDucatiのように扱いが難しいバイクには乗りたがらない。そのため、Ducatiはトップライダーをバイクに乗せるためにはヤマハよりも高給を支払う必要があるのだ。当然Ducatiがロレンゾに支払うのは少額ではない。フィリップ・モリス伯父さんは、マルボロDucati、マルボロヤマハの時代と同じ程度の額をロレンゾに支払う事になる。そしてフィリップ伯父さんの抱えるブランドであるマルボロは、ヤマハが支払う事が出来るよりずっと多くの金を持っている。


もちろん今回ロレンゾのDucati移籍という出来事は実に皮肉な出来事だ。ロッシがイタリアの有名ブランドであるDucatiで残した不名誉な結果は、ケイシー・ストーナーを初め多くのライダーがDucatiに語ってきたように、彼らのバイクであるデスモセディチはレースバイクとしては異端過ぎるという事を彼らに信じさせる事になったのだ。ロッシがDucatiで失敗したことによってDucatiのボス達は問題はライダーではなく彼らにあることを認め、ダッリーニャを招いて完全に新しいバイク、そして完全に新しいDucatiコルセを作るに至った。つまりロレンゾが成功した場合、ロッシの失敗はロレンゾの成功において最も重要な要因となるのだ。


これが未来だとして現在はどうだろうか?シリーシーズンは今年思ったよりも早く到来した。ロッシとロレンゾは既に来年以降の契約を果たし、マーヴェリック・ビニャーレスとヤマハの契約発表も今にも起こりえそうな気配だ。もちろんこれは私の予想であるが。。結果的にロレンゾはヤマハであと15戦戦うことになる。この間はヤマハのエンジニア達も、ロレンゾに勝利し、チャンピオンシップで優勝して欲しいと考えているだろう。しかし同時に彼が2017年、2018年にDucatiで戦うときに備えて助けになるような情報が一切彼に渡らないように気をつけるだろう。最近ではライバル会社に去ると表明した優秀な社員は、彼らのデスクをすぐに片付けてビルからさっさと立ち去るように伝えられる。しかしロレンゾは同じ状況にありながら、同じデスクに11月の初めになっても座っているわけで、本当に妙なシーズンになったものだと感じる。


By Mat Oxley

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