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★新旧のスズキGSX-R750を比較する

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スズキのGSX-Rの原点とも言える、1985年のGSX-R750を最新型と比較した面白い記事がありましたのでご紹介します。このバイクのデザインはいつになっても色褪せる事がありませんが、よくよく考えれば、もうレストアという言葉がしっくりするバイクなんですよね。。

★新旧のスズキGSX-R750を比較する

スズキのGSX-R750は間違いなくどの時代の中であっても影響力のあるバイクだろう。2016年はアメリカでGSX-R750が登場してから30周年となる。GSX-R750は600ccと1000ccに挟まれているが、R750は市場の中でも最もバランスのとれたバイクとして残っている。我々のオーストラリアの通信員であるJeff WareはGSX-R750についての経験をしこたま持っている。彼は2輪関連の雑誌に関わってきており、下記の1985年製GSX-Rのレストア記を書いた人物でもある。彼はオリジナルのGSX-R750の要項について触れながら、彼自身のGSX-R750と最新の兄弟車とを比べ、スポーツバイクの過去30年に渡る進化について記載している。楽しんで欲しい。  
-チーフエディターKevin Duke-

1984年にケルンモーターサイクルショーでデビューした時、GSX-R750は業界を震撼させた。フルフェアリング、アルミニウム製のレーシングフレーム、恐ろしく軽量な車体、100馬力のパワー、それは完全なレースバイクにライトをつけたものだった。諸説あるが、スズキの最初のGSX-R750であるGSX-R750Fが最初の4気筒のストリートスーパーバイクであるという意見もある。

★新旧のスズキGSX-R750を比較する

このバイクはそれまでのゲームを一変させた。35歳以上のスポーツバイク愛好家にこの”Slabbie”750(※横から見るとライト部分がフラットなことから付いたあだ名)の写真を見せたら、彼らはヨダレを垂らして「自分が若い時にこういうバイクが欲しかったんだよ。」「昔こういうバイクを1台持っていたんだが、取っておけば良かった。。」などと言うであろう。GSX-R750は1992年にホンダファイヤーブレードが、そして1998年にヤマハYZF-R1が登場した時と同じインパクトを持っていた。今までここまでシリアスな作りをしたバイクはなく、ここまで軽量でここまでパワフル、そして真のレーサーレプリカと言えるバイクは無かった。

 

GSX-R750は当時何よりも速く、軽量で、最高のルックスのバイクだった。また2ストロークバイクよりも優れ競争力のある価格で登場した。同年にヤマハからFZ750が登場、カワサキはGPz900を全面に打ち出していた。ホンダはVF750、VF1000というラインナップだった。どのバイクもそれぞれ素晴らしいバイクだ。しかしパフォーマンスと軽量さということに関しては「軽いことは正義」をコンセプトとするGSX-R750Fが最高だった。

 

プロジェクトリーダーである横内悦男(よこうち えつお)氏、GSX-R750はスポーツバイクのルールブックを書き換えた。横内さんは(※原文もYokouchi-sanとなっており愛を感じますね。)日本の技術者が保守的になりすぎている時代に、技術を追求することがその種を進化させるという信念の持ち主だった。彼は同時にレースを愛しており、ハンス・ムートがデザインした刀(カタナ)の頭脳でもあった。この2つの性格が、2ストロークバイクを上回る性能の4気筒バイクを作るという方向へと向かわせた。この時代、2ストロークバイクは大気汚染防止の観点から市場で受け入れられることが難しくなっており、アメリカにはRG500さえ輸出されなかったのだ。

それではどうやって横内さんとチームはここまでGSX-Rを良いバイクに出来たのだろうか?それを理解するには当時の日本で何が起きていたのかを理解する必要がある。当時の大型4気筒バイクというのは、通常の日本のバイクを単に大きくしたものに過ぎなかった。それらは重く、貧弱なハンドリングであったが、信頼性があり、使用されているパーツはオーバースペックだった。ライダーはそれまではスズキで言えばGSシリーズ、カワサキのZ、ホンダのCB900、1100、ヤマハのXS11などに慣れ親しんでいた。これらのヘビー級のバイク達は貧弱なブレーキ、安っぽいサスペンションが柔軟性の高い鉄フレームに収められており、細いタイヤを履いていた。これら全ての事が変わろうとしていた。横内さんの開発の方向として、GSX-RはGS、GSX750Rをニュージーランド出身のグレーム・クロスビー、レン・ウィリング(※GPチューナーとして名高いウォーレン・ウィリングの兄弟 筆者がメカニックとして丁稚奉公した人物。)と共に1984年の鈴鹿8耐で走らせたレースの経験から開発された。

★新旧のスズキGSX-R750を比較する

GSX-Rが開発されている間、スズキは2ストロークのRG250WEと4ストロークのGSX-R400をリリースしている。これらのバイクは市場、そして他の日本メーカーにスズキから次に何が出てくるかということに関してのプレビューの機会を与えた。横内さんは、もしGSX-R400がライバルよりも18%軽量に作られたとしたら、同じ考えがGSX-R750にも通用すると考えていた。馬力は当時のリミットとして自主規制の100馬力となっていた。そのため、彼は軽量にすることが唯一ハイパフォーマンスを実現すると考えていたのだ。プロジェクト開始前に横内さんはエンジニアにGS750を分解させ、この考えに合致するパーツを青、そぐわないパーツを赤に塗装させた。そして必要な部品を集めたところほとんどの部品が青だった。

 

横内悦男氏

「我々は保守的過ぎたんです。それまで何も壊れたことなんて無く、完全にオーバースペックだったんです。」

 

彼はライバルの750cc車両よりも20%軽量となる、100馬力、175.9kgをゴールと定めた。シャーシの開発はエンジン開発と同時進行で進められた。横内さんはまたレース用のディメンションを使用することに拘った。「レーストラックで上手く働くものはストリートでも同様。バイクは自分がどこで乗られることになるかについては知りませんよ。」と彼は語った。彼はHerve MoineauがRichard Hubinのライディングで1983年の世界耐久選手権で勝利したGS1000RをGSX-Rのベースとして選択した。スタイリングは石井氏の手によるもので、GS1000Rのデザインを取り入れている。

 

1985年にGSX-R750がデビューしてからスポーツバイクの世界は一回りしている。ライトウェイト→ヘビー、そしてまたライトウェイトな時代に戻ってきた。ただ一つ確かな事はバイクのパフォーマンスは2つの時代に分解出来るということだ。そう。GSX-R750F以前とGSX-R750F以降だ。既に30年が経過したが、GSX-R750Fは未だに最高のルックスのバイクだ。実際のところ筆者はこのバイクは今まで世に出たバイクの中で最も素晴らしいデザインのバイクだと感じている。筆者はこのバイクを購入して3年をかけてここまでレストアをしたため、意見にはバイアスがかかっているかもしれないが。。私はバイク乗りでバイクを愛している。他にもRZ、FZ750、多くのGPzやVFにも乗ってきた。しかしこの時代のバイクであれば、GSX-R750Fのハンドリング、パフォーマンスに迫るバイクは1台としてない。それは別として私は9台のバイクを所有している。いくつかは現代のバイクでいくつかは昔のバイクであるが、GSX-R750がガレージの中で最も軽量なバイクだ。測りに乗せて測っても、最新のGSX-R750よりも9.97kgも軽量なのだ。

★新旧のスズキGSX-R750を比較する

勘違いはしないで欲しいが、時代の流れは大きく、それこそ30年もあるわけなので、私の"Slabbie"はトラックでも最新のGSX-R750には全くもって追いつけない。しかし当時は他のライバル車を完全に蹴散らすパフォーマンスであった。当時10歳だった私はBMXに乗って、雨の日もあられの日も、日照りの日も、スズキのショールームに輝くGSX-R750を見つめて、いつか所有することになる日を夢見ていた。そうして私は現在、30年経った今にこのバイクを所有しているのだ。新型のエンジンは今までと同じく70mm x 48.7mmのボアxストロークで、スズキのエンジニア達が非常に正しかった事を表している。1988年と1989年に73mm x 44.7mmというショートストロークになった時代もあったが、1990年にもとのディメンションに戻った。そしてそれ以降このボアxストロークは変わっていない。現在は新しいシリンダーヘッドの技術、冶金術、インジェクション、エレクトロニクス、そして50%増しのパワーという構成になっている。


私は実際3年間もレストアに費やしてきた。そして使用したパーツは恐らく9,000ドルで、数百時間もの時間を作業小屋の中で過ごした。このバイクのホイールは20年間回ったことが無かった。レーススタンドの上で回転させられた事を除けば、私はこのバイクを全くテストしていなかった。控えめに言っても私はナーバスで興奮していた。それは過去にジョン・コシンスキーのカジバ500に乗った時と同様だった。私は現在のGSX-R750に非常に親しんでおり、かなり距離をこのバイクで乗ってきた。私はまた2011年のGSX-R750も一時期所有していた。正直にいって私はオリジナルとなるバイクに対し大きな期待を抱いていたわけではない。しかし最近オリジナルのGSX-R750と同時期のほとんどの4ストロークバイクに乗った事があるため、それらを良く比較する事が出来た。また私は当時のスズキのメインライバルとも言える1985年式のヤマハFZ750を所有している。ウェイン・レイニーやケヴィン・シュワンツに当時のバトルを聞いてみると良いだろう。

1985年製 GSX-R750試乗レビュー

私は誇らしい気持ちでバイクの周りを歩き、セーフティーチェックを行った。そして30年前にこのバイクのデビュー走行がスズキテストコースの竜洋で開かれた際に、ジャーナリスト達が何を思ったかを想像した。彼らはきっと大騒ぎしていたに違いない。私はレーサーレプリカの美しさにヨダレを垂らし、そしてバイクに乗った。このバイクのオールドスクールなフィーリングは素晴らしい。巨大なスクリーンは高く、ワイドでクレイジーだ。これは最新のバイクの3倍から4倍はあるだろう。つまりこれはロード走行では最高だということだ。このスクリーンがバイクを囲む様子は、バイクをレーシーな雰囲気にしている。背が高く幅が狭いタンクは耐久仕様の燃料キャップが付いており、ベントは胸のすぐ下だ。耐久仕様のベンチレーションホースが腕の間を通り、私の気分はケヴィン・シュワンツだ。

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ハンドルバーは非常に幅が広い。私はトップ側の三叉が伝統的なクリップオンハンドルの上についている様が好きだ。これが1980年台のレースの雰囲気だ。乗車すると背は曲がり、ほとんどレースタックの姿勢になる。(※レースにおいてストレートで伏せている状態)体はしっかりとバイクの内側に収まる。バイクの上ではない。

 

シートは豪華で非常に低い。アルミニウム製の折りたたみ式フットペグは恐ろしく高く、足をつったような気分になる。全体的に4気筒バイクにしては非常に細いバイクで、膝の間が間隔が狭い。これはメインフレームが現代のフレームのようにエンジンを囲っているのではなく、エンジンを上から吊っている形式のためだ。ダッシュボードは非常に基本的な作りながら、現在の目からしてもレースにすぐに使える作りだ。私はこのフォームにマウントされた計器類が非常に好きで、これぞ1980年代、1990年代のグランプリマシンの作りなのだ。またタコメーターは3,000回転以下は表示されておらず、こうした細かい部分がGSX-R750の意図を感じさせる。

 

キーを回して気付くことは。。。何も無いことだ。そう。燃料ポンプの音もしなければ、サーボモーターの音もしない。ダッシュボードもてんかんを引き起こすような点滅もしない。ニュートラルランプが点灯する以外は何も起こらない。これが1980年代のバイクの動きなのだ。フューエルコックをオンにし、チョークを引く。(この2つを最後に使ったのはいつだろうか?)そしてスターターボタンを押す。バイクは力強く数度クランクした後、エンジンに火が入り、高い回転数でアイドリングを始めた。チョークを引くことで暖められた未燃焼ガスの匂いが私のレザースーツを刺す。

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ウォームップは永遠に続くかに思われた。正常なアイドリングに落ち着くまでにかかった時間は5分で、最新のバイクのように一瞬で安定して、隣人を起こす前にすぐに走りだせるというわけにはいかない。チョークを戻し、軽くストットルを煽る。重いスロットルと俊敏なレスポンスが、このバイクがメカニカルフラットスライドの加速ポンプを標準で装備していることを思い出させる。

 

軽いタッチの油圧クラッチを引いてギヤを1速に入れ、私は初めてのライディングを開始した。この瞬間を私は簡単に忘れることはないだろう。これは私がずっと想像していた以上の瞬間だった。そしてウォームアップ走行をする間に自分が成し遂げたことに関する充実感を味わっていた。数ラップタイヤの皮むきを行い、ブレーキパッドを馴染ませ、燃料やオイル漏れが無いことを確認する。私はこのバイクを適切にテストし、出来る限りこのバイクを速く走らせる。そう。それが1985年にそう操縦されたように。

 

 

すぐに気付いたのは、いかにこのエンジンがスムーズであるかということだ。スズキは素晴らしい仕事をやってのけた。このエンジンは近年のギヤボックスが恥ずかしくなるくらいに素晴らしいギヤボックスとともに絹のように滑らかである。ショートでカチッとしたシフトは最小の動きでシフトが可能で、まるで良くセットアップされたレーサーのようでもある。シフトアップもシフトダウンも滑らかでレシオも近く、ライディングに興奮を与えている。なぜこれらバイクがその時代に素晴らしい存在であったのかを感じる事が出来る。世界トップクラスのジャーナリスト達は、このバイクをこの時代に乗ってぶったまげたことだろう。

★新旧のスズキGSX-R750を比較する

キャブレターはフラットサイド型の為に神経質だが、正しくセッティングされたこのバイクには最適でエンジンも高回転まで回りたがる。私はスロットルをストッパーに当たるまで回し、GSX-Rはピークパワーを発生する10,500回転まで叫び声を上げる。ピークトルクも8,000回転と高く、速い段階からアクセルを開けて最新のバイクのようにラインに乗せていくことが出来る。スタンダードエキゾーストからのサウンドは爽快で、新型の750のように背筋が寒くなるようなサウンドを奏でるが、新型は吸気音をさほど感じさせない。加速性は新型には全く及ばない。トップスピードは1速で88km/h、2速で115km/h、3速で152km/h、4速でようやく185km/hであり、2015年型であれはこの時点で212km/hが出ている。トップスピードでは実に27km/hの差がある。

 

正直に言うとこのバイクのサスペンションはフロントスプリングに最新の物を使用しており、エミュレーターがフロントフォークに取り付けられている。リヤサスペンションはモディファイが加えられたR6のものが取り付けられている。そのためこのバイクのサスペンションはストック状態のものよりも良くなっている。ブレーキも同様にVenhillのブレーキライン、Bendixのブレーキパッドを装着している。ストック状態から比べると多少の改善はしているが、最新のバイクのブレーキとは比べるまでもない。

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コーナリングはオールドスタイルで曲がる必要がある。コーナリング前にしっかりとブレーキングを行い速い速度でコーナリングをする。細いタイヤは(Pirelli Sport Demon)速いコーナリングスピードを生み出し軽量の細いリムも同様にコーナリングスピードを助ける。ステアリングは巨大な18インチホイールにしては思いのほか軽い。扱いやすさ、レースのしやすさという事で言えば、新型R750は1本しかラインの無い旧型のGSX-R750Fと対象的に、その周りを自由に動けるだけの自由度がある。低い姿勢でタックインをして、あまりハングオフしない体制が最も快適だった。総合的に30歳のバイクとしては驚くべきバイクであるが、新型のバイクが怒り任せでもライディング出来るのに対して、体づくり、忍耐が必要とされるバイクだと言える。

 

ストリートでは、1985年製の私のGSX-Rは足がつりそうな位置のフットペグを除けば非常に快適なロードバイクだ。驚くべきことに、常に適温の状態で走行が出来る。横内さんは祖母から熱いお風呂をかき混ぜる事を教わった事がGSX-Rの油冷のインスピレーションを得たという。その当時のお風呂は直火でお湯を沸かしていたために、お湯の熱い部分を避けるにはお湯をかき混ぜて循環させる必要があったのだ。そしてこのアイディアを元にGSX-Rの燃焼室の周りをオイルが循環し続けるという仕組みが採用されたのだ。

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2015年製 GSX-R750試乗レビュー

このバイクも素晴らしいが、少しオリジナルのGSX-R750を感じさせる部分もある。ヘッドライトは2連では無いし、これは他のバイクにも見ることが出来ない特徴であるが、私は30周年記念エディションのボディーワークそして何よりもマフラーが好きだ。このバイクが私の1985年製のバイクとガレージに並んでいたらどれだけ良いだろう。4月に新しい世代のバイクが世に出るが、私は幸運にも1985年型にまたがって、この親戚とも言えるバイクと時間を共にすることが出来るが、それには60周年エディションまで待つ必要があるだろう。

 

自分の年取ったGSX-Rにしたのと同じように、私は新型のGSX-R750のまわりを一周する。必要最低限のカウル、ちいさなスクリーン、1985年製のバイクと比較すると驚くほどに小さいが、肉厚なフレームとなっている。この型は2011年の登場以来、外観の変更以外に大きなアップデートは無い。このモデルは2009年型に対してミッドレンジのパワーを増し、ブレンボのブレーキを装備して登場した。

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750ccのレースカテゴリーが無くなって10年以上が経過するが、多くの人が750ccは600ccの副産物程度に考えているだろう。しかしそうではない。実際のところ750が優先されて作られたモデルであり、GSX-R600は単純に750の小排気量版なのだ。750こそがそのメリットに特化して開発されたモデルであり、600のビッグボアバージョンではない。

 

私はこのバイクが好きだ。しかしこのバイクのまわりを一周してもヨダレを垂らしたりはしなかった。これは私がオリジナルのGSX-R750を子供の頃に憧れを持ってショーウィンドウ越しに眺めていたという理由とはまた別の話だ。バイクに跨るとタンクは私の体格に合っていて快適だ。フラットなタンクとシート、細いシートのおかげもあって非常に低く感じる。1985年製のGSX-R750が皆そうだったようにフットペグは高くて快適ではない。私にはこれらは一番下の位置であるべきだ。それでもまだ高いとは思うが。。

 

ハンドルバーは最新のバイクにしては広いが、オリジナルのGSX-R750に比べると狭く、角度が急だ。1985年製のGSX-R750よりも乗車位置はハンドルに近く、バイクの中にいると言うよりバイクの上にいるという感覚だ。膝の間の間隔はより広く感じられるが、タンクや三叉のあたりはより低く感じる。シート高は高く、シートはしっかりしていて幅が広い。全てが非常にアグレッシブで1985年製のバイクが出た時に皆がアグレッシブ過ぎると語ったのが信じがたい。物事の変化は驚くべきものがある。ダッシュボードはシンプルでコンパクトだが、オリジナルのGSX-R750のようなオールドスクールの計器のカッコ良さはどこにもない。

 

始動は簡単でチョークを引く必要もない。数秒以上の暖気も不要だし、エンジンをスタートさせてから1分以内にエンジン回転は安定する。インテークからの吸気音とマフラーの唸り声はシャープだという点は似ている。すべてのモデルが一本筋の通った共通の性格を持っているのだ。

 

ピットレーンを抜けてシフトアップをするが、レシオは旧型よりもクロスしていると感じる。また、回転の頭打ちも早い。バイクが旧型の2倍の速度でトラックの斜面を駆け登るのは私をニヤリとさせたが、ターン3のヘアピンで大きな違いを感じた。ブレンボの初期の噛み付きはオリジナルのGSX-R750のトキコと比較すると異常なほどで、ブレーキングの間のサスペンションのサポートも素晴らしい。現代のブレーキとサスペンションにどうしてケチを付けられようか? 

 

ターンインのレスポンスは速くて軽く、ライディングポジションは私を快適にさせ、すべてをコントロールしている気分にさせる。これはオリジナルのGSX-R750にはなかった点だ。一度タイヤを暖めると私はいつも通りのテストの方法でプッシュを始めた。一周トラックに慣れるために走り、一周プッシュし、一周ラップレコードを破る努力をする。加速は強烈でトップスビードはショートストレートで4速220km/hに達した。その速度からアップヒルの左コーナーへ向けてブレーキング行うが、フィーリングは最高だ。コーナーへ向けてのブレーキング(トレールブレーキング)は素晴らしく、ステアリングは軽いままで、ブレーキングの間でも正確性は失われない。

 

どこにでも望む位置にバイクを持っていけるし、どこからでも開けていくことが出来る。オリジナルのGSX-Rはこうはいかず、クラシックなライン取りが要求される。新型はブレーキに関係なくどこにでもライダーが望む位置で走行出来る。このバイクは非常にニュートラルでコントロール性が高い。ほぼ努力を必要としないと言える。切り返しも簡単で、旧型はハンドルバーの上に巨大なタンクが乗っているのかと感じさせるほど重いのと対象的だ。新型は優雅に倒しこみが出来、狙ったラインを全く不審な挙動を見せずにトレースする。これが750ccのバイクとはとても思えない。

 

180サイズのリヤタイヤはスーパースポーツ車両のミドルサイズにおいて一般的なサイズである。リヤブレーキの変化はほとんどないが、サスペンションは完全に変わっており、17インチのホイールも同様だ。大きなコーナーで加速していく際、ヘアピンに向けての進入ブレーキング、高速での向き替えなど、新型のGSX-R750は非常にレスポンスが良く乗りやすい。

 

スズキのエンジニアが成し遂げたジオメトリーはバランスが取れていて、サスペンションの性能を特徴づけている。ビッグピストンフォークはファンタスティックで、強烈なブレーキングの最中でもバイクを安定させ、コーナリングに向けてブレーキをリリースすると一瞬で安定する。すべてのバンプを吸収し、フロントタイヤを常に路面に押し付け続ける。リヤショックはフロントフォークほどの感動はなく、いくつかのバンプで少し不安になったりキックバックを感じた。

 

全体的に新型のGSX-R750には感嘆した。しかし私はオリジナルの1985年製GSX-R750を愛している。そう、2台とも欲しいのだ!

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1985年製 GSX-R750 技術話

ライバルが水冷に移行する中、横内氏は別の方法でエンジンを冷却した。彼は軽量でコンパクトさを必要とした。GS1000のエンジンとGSX750Eのレースの経験を活かしてGSX-R750のエンジンはデザインされた。

 

DOHC16バルブの直列4気筒、4ストロークエンジンは70.0mm x 48.7mmのボアxストローク。圧縮比は9.8:1。湿式の多板クラッチ、6速のクロスレシオギアボックスを装備。水冷は世の中を席巻していたが、まだ完全に最適化されて仕組みではなかった。そのため開発チームはXN85ターボで使用していた油冷システムを採用することにした。バルブトレイン、アッパーシリンダーヘッドなどを冷却するため通常のモデルよりもオイル容量が必要となった。デュアルオイルポンプがオイルがエンジンをめぐるエンジンの流れを支えた。これらがスズキのSACS(スズキ・アドバンスド・クーリングシステム)と呼ばれるもので、オーバーヒートとは無縁で100馬力を実現した。

 

GSX750Eのエンジンは全てが完全新設計だった。ピストンは10%軽量でコンロッドは25%、クランクシャフトは20%。シリンダーヘッドは22%、シリンダーブロックは17%軽量でギヤボックスとクラッチも同様に新設計で、他に類を見ないほど軽量なものだった。燃料供給は競技車レベルのVM29SSフラットサイドキャブレターを採用。イグニッションはトランジスタータイプ、これは現代の標準でもある。巨大なエアボックスはガスタンクの下にあり、ライトウェイトなエキゾーストは4-1スタイルだった。

 

フレームは時代の最先端のもので、軽量のアルミニウム・クレイドルフレームにキャストアロイのヘッドストックを採用。サイドスイングアームピボットプレートがボックスセクションのアロイスイングアームとキャストのアルミニウム製トリプルクランプを保持した。フォークは油圧式アンチダイブタイプで、ダンパー、コンプレッション、プリロードの調整が可能で、直系41mm、130mmのトラベル量を持つものだった。リヤショックはフルフローターユニット、リバウンド、プリロードの調整が可能で127mmのトラベル量があった。

 

もう一つの当時としての話題はブレーキだった。デュアルの300mmステンレススチールローターにトキコの4ピストンキャリパーは強烈でスズキ製のマスター・シリンダーが組み合わされていた。ホイールはキャストアルミニウムで、前後18インチ、フロントタイヤは110/80、リヤは140/70とサイズだった。

 

シャーシチームは藤原氏によってリードされ、GSX-R400をベースとしていた。5つのキャスティング部品と21のチューブのみでGSX-Rのフレームは出来ている。これはわずか8kgのフレームで、スタイルは限りなくXR41レーサーに似せて作られた。これがGSX-Rがレーサーに非常に近い外観をしている理由でもある。ウインドトンネルでのテストに重きが置かれ、ウイングレットとスクリーンはレーサー譲りの装備だ。


by Jeff Ware
Photos by: Heather Ware, Keith Muir, Suzuki Australia

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