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★MotoGP2015 Ducati GP15は何がどう新しいのか?

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David EmmetさんによるDucatiの新型GP15の詳細な解説記事が出てきましたのでご紹介。見た目からして色々と違っていますが、フレームは完全に別物と言える設計なんですね。確かに海外記事でも日本車っぽくなった。という論調のものが目立ちます。

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Ducatiのプレゼンテーションを見たものは、Emozionateとtanto lavoroという何度も登場した2つのイタリア語を覚えたことだろう。デスモセディチGP15はその開発にあたり、tanto lavoro(ハードワーク)を必要とし、さらにこれからもそうだという事だ。

 今回発表されたバイクはハードワークの末にemozionate(素晴らしい)なものとなった。月曜日のプレゼンテーションにおけるDucatiのスタッフは熱意に満ちており、GP15のプレゼンテーションは良い意味で長く、やかましく、今までとは違うものだった。

プレゼンテーションはイタリア一色で、イタリアのテレビ局のプレゼンターがイタリア人のマネージャーやエンジニアを紹介し、イタリアのバイクを操縦するイタリア人を紹介するという具合で、スロベニアのテレビ局、ドルナからのチーム、そして、筆者くらいが数少ない例外だった。

イタリアらしからぬバイクへと姿を変えたGP15 

しかし、そこで紹介されたバイクはイタリアのバイクと呼べるものからはかなり異なるものであり、殆どどの角度から見ても、そしてそのコンセプトからしても日本車のようだった。何が変わったのかと言うと、まさに全てだ。カウル類も当然全てが新しいが、エンジンに関してはV型4気筒からレイアウトの変更は無い。デスモドローミック機構なども引き継がれているが、既存エンジンと比べると明らかに小型化されている。

 

GP14のエンジンも3年前のエンジンと比べると幾分コンパクトになっていたが、今回その流れが完結し、エンジンの搭載位置はRC213Vのそれに非常に近い。何よりも重要なのは、今まで巨大だったエンジンが全体的に小型化されたことだ。ギアボックスを保持するケースなどはGP14に比べて小さく、幅が狭くなっている。そしてエンジンの構成部品はコンパクト化実現の為に、配置位置が見直されている。

 

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今回の車体デザインのゴールとされたのは、車体のジオメトリーと重量配分が重要なポイントとなる「ある特定の」セットアップを、ショートホイールベースで、人間工学に基づいた車体で実現することだった。これらの変化はGP14で繰り返し行われてきたことで、GP14.3で結実したが、それでもまだバイク自体が長すぎたのだ。

アンダーステアの解消

車体が長いバイクは曲がらない。(チョッパーに乗った事があればわかるだろう)なので、車体が短いバイクを作る事は曲がりやすいバイクを作るということに繋がる。そして車体が長いバイクの問題点であるアンダーステア解決のための手段として、車体を短くするという事が重要だ。

このGP15が明らかに小さいのは誰が見ても明らかだ。タンクは短く幅が狭くなり、トップフレームも幅が狭く、エンジンの下を通るフレームのボトム部分の幅も狭くなっている。シートも幅が狭くなり、タンクとの境となる部分の幅は非常に狭くなっている。バイクのテール部分も短くなり、大胆にカットされている。 

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フレームはRC213Vに近い?

最大の違いはフレームだ。今までのバイクとはフレームのラインが完全に異なり、GP14よりはむしろRC213Vに似ている。フレームのアッパーメンバーの角度はGP14よりもキツく、ステアリングヘッドストックと、スイングアームピボットを結ぶ線はより直線的だ。

フレームのリアメンバーの上部も短くなっており、この部分に関しては15cmほど短くなっている。エンジンのマウント位置は完全に別位置となった。エンジンのフロント側をマウントする部分は、GP14と比較して数cm長くなっているようだ。こういった手法はフレームに柔軟性を持たせ、バイクのフロントからの情報量を増やすという意味においては定石とも言える手法だ。

 

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コンパクトになったリア周りとエキゾースト

エキゾーストも大きく変わり、今までタンクを囲うように配置されていたリアシリンダー側のエキゾーストは、タンクの右側にレイアウトされた。これはエキゾーストからの熱をタンクに伝えないようにするための工夫だ。(※温度の低い燃料のほうがパワーが出る)

フロント側のエキゾーストはさらに短くなり、車体重心の集中化に貢献している。ただ、この車体下に位置するエキゾーストはスイングアームに熱を持たせてしまうという問題がある。ヤマハのM1のエキゾーストのように、スラッシュカットするというのが一つの解決策だろう。

 ライディングポジションの最適化

ライダーにとって最も大きな変化はエルゴノミクスだろう。コンパクトなバイクはライディングポジションの自由度に繋がる。テストライダーのミケール・ピッロが現時点でGP15を操縦した唯一のライダーであるが、彼はバイクについて語ることを禁じられている。シェイクダウンのテストの後、アンドレア・ドヴィヅィオーソがピッロを呼び出して色々と聞いたようだが、ピッロはドヴィヅィオーソに対してもバイクについて語ることを禁じられていた。

 

今回、誰もシェイクダウンがどこで行われたのか教えてくれなかったが、通常のサーキットでテストを行っていたとしたら、情報がある程度出回ることを考えても、テストが行われたのは、通常のサーキットではない事は確かだろう。ただ、このテストはあくまでシェイクダウンにすぎず、エンジンがブローしたり、何かのパーツがどこかに飛んで行ったりしないという事の確認というような意味合いのものと思われる。

初めての公式テストは次回のセパンテストだ。しかし、次回のセパンテストでアンドレア・ドヴィヅィオーソとアンドレア・イアンノーネが操縦するのは、GP15が1台、GP14.3が一台という組み合わせで、初日にGP15を駆るのはピッロだけだ。

 エンジンの変化について

さて、エンジンは大きく変わったのだろうか?これに関してもジジは多くを語らず、彼と彼のチームは熱力学について時間を割いたという事を認めるのみだった。これはつまるところ、燃焼効率に繋がる。アンドレア・ドヴィヅィオーソはエンジンサウンドが異なるという事を話していたので、おそらくファイアリングオーダーが変更されているか、エンジン特性が変わっている可能性がある。エンジンをコンパクトにする事が今回の開発の目的だった場合、Ducatiはファイアリングオーダーをビッグバンからプライマリーバランスに優れるスクリーマーに変更した可能性が高い。ただこれはあくまで推測の域を出ない。セパンで実際に走行するGP15を見れば何らかのアイディアが得られるだろう。

(※管理人注 ビッグバン=不等間隔位相同爆方式と呼ばれるもので、ライダーが感覚的にグリップを把握しやすいと言われます。スクリーマー=等間隔爆発に近い点火順序の形式)

 

GP15の開発の根底にあるのはデザインフィロソフィーではないだろう。ジジ・ダリーニャのDucatiにおけるメインミッションは、レース部門の立て直しだ。ある者は去り、新たに加わった者もいる。殆どのメンバーは残ったわけだが、今や完全に一丸となったチームだ。パオロ・チャバティは「開発チーム内での調和をトラック上、開発の現場の両方で生み出したいと思っています。」と語る。

 

エンジン開発部署がシャーシ開発部署に、シャーシ開発部門がエレクトロニクス開発部門に、エレクトロニクス開発部門がエンジン開発部門にという具合に意思伝達が行われることで、ジジは彼が望む形で開発を進めることが出来る。そしてこれは単純に彼の望む形というだけでなく、全ての開発部署が密接に連携して開発が行われる事を意味する。


ジジによると、開発の進め方は、まず目的を定め、スタッフからの意見をヒアリングし、その中から最も優れた方法を選択し、一つのコンセプトにまとめていくというものだ。
これによって単純に一人の作業で開発が進むのではなくチーム全体で開発が進むようになる。こうした手法を取りながらも、誰もがこれは「ジジのバイクだ。」と認めている。

 

GP15はDucatiにとってどれくらい大きな存在なのだろうか?プレゼンテーションの場にチャバティとジジ、そして両ファクトリーライダーが揃っていることからも、その答えは伺い知れよう。Ducatiが新しいエンジンを搭載した完全に新型のバイクをつくり上げるのは、2003年にMotoGP参戦を開始して以降初めてのことだ。
誰もが成功を確信しているし、失敗の可能性は考えていないだろう。この新型バイクはDucatiの未来そのものであり、そこには多くの改善の余地が残されている。

Ducatiの今季の目標はシーズン1勝

彼らは成功するだろうか?Ducatiの2015年の目標はレースで1勝を上げることだが、簡単な目標ではなかろう。レースで優勝するということは、マルク・マルケス、ヴァレンティーノ・ロッシ、ホルヘ・ロレンゾ、ダニ・ペドロサなど、合計して20個、最高峰クラスで11個のワールドタイトルを持つライダー達に勝たねばならないのだ。

 

これはヤマハやホンダのエンジニアリングに勝つということであり、天才的なライダーであるケイシー・ストーナーが2007年に達成した偉業を再び起こすということでもある。
ただ、Ducatiチームの中には圧倒的な未来への期待がある。シーズンで1勝するというのは、もはや空虚な夢ではない。ライダーにとって最大のモチベーションであると同時に、エンジニアやメカニックが費やしてきた膨大な時間を正当化する目標であるのだ。簡単なことではないが、今のDucatiにとっては不可能な目標ではない。今年Ducatiはヤマハやホンダよりも多くの燃料を使用でき、ソフトコンパウンドの予選用タイヤも使用出来る。そして何よりも、彼らはエンジン開発を凍結されていないのだ。


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