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★MotoGP2015 第一回目セパンテストでの見どころ

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2015年シーズンが開幕しました。すでにセパンテストは始まっておりラップタイムも公表されていますが、moto mattersのDavid Emmetさんによるセパンテストの見どころに関する記事をご紹介します。今回のテストのラップタイムと見比べて読んでいくと面白いです。(※初日の結果を見る限り、トップ6台が突出していて速い印象ですね。)

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いよいよ2015年のMotoGPシーズンが開幕する。ライダー達は昨年まで開発し、冬の間にエンジニア達が進めていた開発内容をテストするため、セパンのトラック上に集まった。
とはいえ、チームの開発内容の中でも最も興味深い2つに関しては、セパンの初回テストでは披露されない。

 Ducati GP15

DucatiのGP15は今回のテストには間に合わず、19日にボローニャにて正式に披露される予定だ。つまり2回目となるセパンテストまでは、我々がサーキットで走行する姿を見ることは無い。(※管理人注 2回目となるセパンテストでテスト出来ない場合、2回目のセパンテストで予定されているミシュランタイヤのテストも出来ませんし、カタールの開幕直前テストまで完全新型となる車両を試す事が出来ません。つまり、Ducatiファクトリーは何がなんでも2回目のセパンテストにはGP15を間に合わせるでしょう。)

 

ヤマハのシームレスギアボックス

ヤマハのシームレスギアボックスはアップデートによってシフトアップ、シフトダウン両方で操作出来るようになるが、これに関しても2回目となるセパンテストでの登場となる。(※管理人注 シームレス=「継ぎ目がない」という意味で、クラッチ操作をせずにギヤチェンジが出来るようになるわけですが、シフトアップ側はコーナー立ち上がりでの加速に、シフトダウン側は制動時の挙動に影響を与えるようです。現時点のヤマハのシームレスギアボックスはシフトアップ側にのみ対応しています。)

 

公式でアナウンスされている、これら2つの開発内容が初回のセパンテストに間に合わない理由は「ほとんど完成しているが、実戦投入の前の最終チェックを行っている」というものだ。が、別の側面から少し穿った見方をすると、「あえて初回のセパンテストには持ち込まなかった」という見方も出来る。

 

セパンの初回テストというのは、長い長い冬のオフシーズンが明けてからの始めてのシーズンインとなるわけで、ファンにとってもジャーナリストやフォトグラファーにとっても待ちわびたシーズン開幕となる。そのため、セパンの初回テストは非常に多くのプレス関係者でごった返すこととなる。2回目のテストはそれほど新しい内容はチームから発表されず、淡々とテストをこなしていく事になりがちだ。さほど変わらない内容の取材の為に取材経費を出す出版社は少ないため、初回テストと比較するとプレス関係者は少なくなる。もしかするとチームはこれらの事情を鑑みて、プレスからの注目度が低い環境の中で重要なニューパーツを試そうとしているのかもしれない。

もちろん単純にセパンの初回テストに間に合わなかっただけということも考えられるが。。これら2つの興味深いニュースがないのは残念だが、それでも見るべき事はたくさんある。各チームで誰が何をしているのか?注目すべきことは何なのかまとめてみよう。

 

ヤマハ(Yamaha)

シフトダウン時にも有効なシームレスギアボックスが無い状態で、ヤマハのピットで注目すべきことはあるのだろうか?その答はYESだ。2014年型の車両と2015年型車両の差異はわずかであるので、2014年型M1の膨大な写真を眺めないと、その差異には気づきにくい。ヤマハは20Lになった燃料と、ブリヂストンの耐熱レイヤーありのタイヤに対応するために2014年の間にM1に多くの変更を加えた。これらの変更はM1の伝統的な強みであったコーナリングスピードに影響を与えた。昨シーズンの終わりになってヤマハはコーナーの脱出速度を再び得て、失っていたタイヤのエッジグリップを多少取り戻し、ホンダ機と戦える状況になった。


また、ヤマハはかねてよりの弱点であったブレーキングにおいても改善を見せた。そもそもYZR-M1は早めにブレーキングを行い、高いコーナリングスピードを維持したまま曲がる。そしてコーナーでは大きな弧を描いていくのが特徴だ。ホルヘ・ロレンゾやヴァレンティーノ・ロッシが今まで直面していた問題は、コーナリングの為にブレーキをリリースしたタイミングでホンダがインに飛び込んでくるという問題だ。ホンダのRC213Vは強烈なブレーキングが特徴のマシンで、それはまるで過去のケヴィン・シュワンツを思い起こさせる。

2015年のR1は完全なシームレスギアボックスだけではなく改良されたスイングアームとシャーシを採用しており、これらがM1のブレーキングパフォーマンスを向上させている。

 

このテストはロレンゾとヴァレンティーノにとってはメンタルの面でも重要なテストとなる。両者とも2015年には大きな期待を寄せており、テストの最初の段階から良いラップを記録することが非常に重要だ。ヴァレンティーノは既に10回目の世界タイトルを取ると公言しているし、2014年シーズンの素晴らしい結果、そして冬季トレーニングによって、彼は昨年のシーズンスタートよりも確実に良い状況にあると言える。クルーチーフのシルヴァーノ・ガルブセラはMotoGPクラスでの経験を増し、ヴァレンティーノとの息もあっている。


ホルヘ・ロレンゾにとっても今回のテストは重要だ。2014年シーズン前半をほぼ棒に振ったと言える彼の場合、実質的にはシーズン後半だけが良い結果だったとも言える。彼の場合はミスから学んでいるわけだが、今年の冬はかなりハードにトレーニングを積んでいる。昨年よりも体を絞り込んでいるし、明らかにコンディションは良さそうだ。今年に関してはルール変更やタイヤの変更に悩まされることもないだろう。


モンスターテック3の場合、ブラッドリー・スミスとポル・エスパロガロがニューパーツに関して行う作業は少ない。彼らが使用するマシンは昨年とはほとんど差がないため、殆どの作業はマシンのセットアップになるだろう。

スミスにとってはコンスタントな結果を残す事、そしてしっかりしたセッティングを早めに出すことが必要になる。2014年シーズンは彼は多くの時間をセットアップに使い、レースウィークの後半になってようやくマシンのセットアップが出来るという状況が多く見られた。

ポル・エスパロガロの場合も同じくコンスタントな結果を残すということが重要になる。最初のルーキーイヤーで強い走りを見せたものの、彼は昨年6位に終わった。今年はトップ5位を目指す走りになるが、Ducati機、サテライトホンダに乗るカル・クラッチローやスコット・レディングがライバルとなるだろう。

 

ヤマハは、かねてよりポル・エスパロガロにMoto2スタイルのリヤをスライドさせるブレーキングを試させており、彼がセパンでどのような走りを見せるのかは気になるポイントだ。セパンはストレートからのハードブレーキングを行う2つのコーナーを持つというレイアウト上、そうした走りを試しやすい。

 

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(※本日のセパンテストの最終結果です。)

ホンダ(Honda)

ホンダは粛々と開発を進めているようだが、彼らの問題はパフォーマンスではなく乗りやすさだ。ホンダのRC213Vは非常に成功したマシンで、2年でライダーとチーム/メーカーの2冠を達成している。しかしかねてからコメントされているように、性能の最後の数%を絞りだすのが非常に難しいバイクだ。

RC213Vは乗り手にとって厳しく、攻撃的なバイクだ。11月のヴァレンシアにおいてもHRCの中本氏は開発の最優先事項はバイクを乗りやすくすることだと語っていた。

ヴァレンシアでのテストでは、マルケスでさえ、コーナーエントリーでリヤがロックする挙動に関して扱いづらくアグレッシブすぎると語っていたほどだ。

 

ストーナーが先週セパンでテストを終えたが、乗りやすさに関して開発を進めていたことは間違いない。彼がMotoGP.comに語った内容によると、ホンダがずっとテストしていたのはエンジンブレーキのセッティングとエンジンマッピング、そしてフロントフォークのセッティングということだ。

 

マルケスにとっては今年の目標はタイトル防衛、そして2014年シーズン後半の安定しない走りを繰り返さないということだろう。しかしチームメイトのダニ・ペドロサにとっては今年は大きなチャレンジとなる。昨シーズンはペドロサにとっては最も成績が出なかったシーズンと言え、彼にとっては勝てるようになることが最も重要な目標となるだろう。その布陣として、彼は新しいクルーチーフに以前のデータエンジニアのラモン・オーリンを迎えている。

 

ホンダにとって、テストが重要であるのは主にサテライトライダーだろう。

カル・クラッチローとスコット・レディングにとって、どのようにRC213Vに慣れるか?という意味で、今回のテストは非常に重要だ。クラッチローはバイクの手強さを感じているようであり、レディングに関しては前を走るライバル達との差は「受け入れがたいほど」だと語っている。彼らはまずはホンダのファクトリーマシンを理解することから始めなければならないだろう。

 

彼らはマルケスやヴァレンティーノから1000分の1秒以内までタイムを接近させる必要はないが、クラッチローの場合、その差を0.8秒以内、レディングの場合は1.6秒以内程度にしなければならないだろう。なお、両者とも新しいクルーチーフを迎えている。

クラッチローはLCRへの加入と同時にダニエレ・ロマニョーリの元を離れざるを得ず、レディングは古巣のMarc VDSに戻った。レディングの場合は、クルーチーフにWSBKのジョナサン・リアのクルーチーフを務めたクリス・パイクを迎えている。

Ducati

我々が見たいと思っていた完全な新型機は今回の一回目のセパンテストには登場しない。
その代わりにトラックを走るのはGP14.3で、アンドレア・ドヴィヅィオーソとアンドレア・イアンノーネの2人のイタリア人ライダーは、GP14.2からわずかに進化したバージョンのマシンを操縦する。一番の問題であるエンジン(前後長が長く大きい)はそのままだが、改良されたシャーシは改められており、その開発内容などはGP15に引き継がれる予定だ。

DucatiがGP14.3でどの程度の走りをするのかは見ものであるが、我々が知っているGP15はGP14.2にきわめて良く似た少しこぶりなバイクで、リヤまわりとエキゾースト周りが少し変わったバイクであるということだけだ。

 

GP14.3はGP14.2と同じエンジンを使用しているが、特に小さくなっているわけではない。しかし新しいシャーシはリヤまわりのレイアウト、そして最も重要なマシンの重量バランスに影響を与えているはずだ。このバイクがどのようにターンするか、そしてこのバイクの呪われた弱点であるアンダーステアの改善への手がかりとなるデータが得られるかもしれない。

 

エンジンレイアウトに関してはどうしようも無いので、GP15でテストするしかないと言えるが、イタリアの情報誌であるMotosprintが、今年のはじめにDucatiがクランクシャフトの重量をアップさせる実験を2014年シーズン内に行っていたと書いていたが、これは扱いやすいエンジンにする為の実験だったのかもしれない。

GP15のエンジン内部がGP14シリーズとかなり異なるとしたら、こうしたクランクシャフトやカムシャフトの重量といった部分になるかもしれない。

 

アンドレア・ドヴィヅィオーソのメインタスクは、GP15の登場まで辛抱強く開発を続け、今まで継続してきたDucati機の挙動の解析と改良へのアドバイスを行うことだろう。ドヴィヅィオーソは2年間の経験でDucatiに乗るには忍耐が必要だということを理解している。彼が2年間貯めこんだデータが、ジジ・ダリーニャのDucati加入によってようやくGP15として形になろうとしているのだ。

 

アンドレア・イアンノーネのタスクは、ファクトリーガレージでのふるまい方を学ぶところからだろう。彼はプラマックチームで十分に速いライダーであったが、コンスタントな成績を残すという部分が弱点だった。ファクトリーライダーになるということは、より重圧がかかるということでもあり、忍耐するということを学ぶ必要がある。


プラマックに目を移すと、ヨニー・ヘルナンデスの不在により、チームはダニロ・ペトルーチに集中している。現在のところ彼はDucatiに移籍して上手くやっているようであり、セパンにおいても、その調子でテストを続けていくことが重要になるだろう。

スズキ(Suzuki)

新顔であるスズキには多くの注目が集まっている。アレイシ・エスパロガロとマーヴェリック・ビニャーレスの2人は、ヴァレンシアテストで素晴らしい結果を残しており、両名ともによく曲がるそのハンドリングを高く評価している。

このマシンの唯一の課題といえるのがパワーで、そのコーナリングパフォーマンスに比例したほどのパフォーマンスが無く、ストレートでは明らかに他のファクトリーマシンよりも遅い。


ただ、このパワー不足は意図したもので、ヴァレンシアテストでランディ・ドプニエがいくつかエンジンを故障させたことを受けて、少し馬力を落としているようだ。

これはスズキが解決しなければいけない課題であり、ヴァレンシアにおいて、スズキは問題に集中し解決を急ぐとしていたが、ダイノ上では発生しない問題をトラックを走らずに解決するのは容易ではなかろう。

 

パドックの中の話では、スズキのエンジン故障の原因はエンジンオイルの供給に関連する問題ではないかと言われている。ただ、このエンジンの問題に関しては2人のライダーがテストを開始するまではなんとも言えないだろう。

 

Aprilia

我々がアプリリアに期待できることは何だろう?昨シーズンにMotoGP復帰を決めたアプリリアは、新しいバイクを仕上げるために多くの時間を裂けていたとは言えない状況だ。ヴァレンシアにおいてアプリリアARTは明らかに遅く。アルヴァロ・バウティスタはトップから1.8秒遅れ、マルコ・メランドリは3.3秒遅れという状況だった。

 

バウティスタがMotoGP.comに語った内容によると、ヴァレンシアテストでの主な問題はパワー不足だったようで、昨年の終わりにアプリリアがヘレスに持ち込んだ81mmボアのニューマチックバルブを搭載した新型エンジンによって解決されたようだ。

ただ、パワーは十分なものの、現在のシャーシではその性能を発揮しきれず、パワーをエレクトロニクスでかなり制御をしているとのこと。

 

テストライダーであるマックス・ビアッジがヘレスでMotoGPのエレクトロニクスのテストを行っているので、アプリリアがセパンに持ち込んでる電制パッケージは、より進化しているはずだ。セパンはヴァレンシアに比べるとより高速なサーキットなので、アプリリアがホンダやヤマハ、Ducatiに接近するのはかなり厳しいだろう。

 

バウティスタはグレシーニで受けていた厄介者のような待遇から飛び出し、今期はファクトリーライダーとしてシーズンをスタートしている。彼はファクトリーライダーとしてマシンの開発、そしてポイントの獲得を目指すこととなり、当面は昨年の自分自身の結果がライバルとなるだろう。


マルコ・メランドリにとってやるべき仕事は山盛りだ。そもそもメランドリはWSBKでタイトルをかけて競っていた状態からMotoGPで再び走る状況に移ることを嫌がっており、新しいMotoGPバイク、ブリヂストンタイヤに慣れるという作業があるわけだが、彼自信のやる気を取り戻すこと自体が先かもしれない。

 

オープンバイク

オープンカテゴリーでホンダを操縦するライダーにとっては、ようやくまともな馬力を持つバイクで戦えるようになった。RC213V-RSは鈍足のRCV1000Rに代わり、ファクトリーマシンにパフォーマンス面で限りなく近いオープンバイクと言える。

しかし、より強大な馬力はより複雑なセットアップを必要とし、同時にMagneti Marelliのエレクトロニクスのセットアップも必要となる。


ルーキーのジャック・ミラーはHRCと3年の契約だが、彼はとにかく学び、どのようにバイクを走らせるのかを学ぶことが必要だ。

ニッキー・ヘイデンは昨シーズンはRCV1000Rのパフォーマンスに失望し、手首の故障に悩まされたシーズンだった。ただ、彼が2015年シーズンに良い結果を残せなかった場合、2016年シーズンにパドック上に彼の居場所は無いかもしれない。

 

フォワードヤマハの場合、全てのプレッシャーはステファン・ブラドルにのしかかっている。LCRホンダで着実に成績を残した後、2014年は彼にとってパッとしないシーズンとなった。

彼にとって今年に入って新しいマシンに乗ることは、再び良い結果を出すためのきっかけになるかもしれない。彼が残すべき結果はどの程度が良いのかというのは難しい問題だが、アレイシ・エスパロガロのタイムが基準となるのは間違いない。

 

ブラドルはフォワードが日本のカヤバと契約を結んだことでカヤバのサスペンションをヴァレンシアテストで使用したが、テストの酷い結果を受けて、カヤバのサスペンションを使わないと公言した。カヤバの挑戦は過去のものとなり、2015年フォワードヤマハは以前から使用していたオーリンズを使用する。


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