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★カワサキのMotoGP復帰は、おそらく噂に終わる見通し

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色々と紛らわしいニュースが多いんでアレですが、今回のヘレステストの内容から推測するに、カワサキのMotoGP復帰はなさそうです。金融危機の中、資金難で撤退してWSBKに注力して結果が出てきている中で、その力を分散する必要もないでしょうし、Akiraとしてのプライベートテストだと名言していますし。ある程度予想できた結末ですが残念ですね。

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スペインのヘレスサーキットでWSBKのテストが行われたが、WSBKの話題が少なかったのは残念なことだ。
最も話題になったのはトラック上で最も遅いバイクで、ケニー・ノエスとドミニク・エガーターが操縦していた。そう。Avintiaレーシングが昨年MotoGPクラスで走行させていたカワサキのマシンを改良したもので、しばらく前から話題になっているカワサキのMotoGP復帰か?と噂されているバイクだ。

 このプロジェクトのクルーチーフGilles BigotがスペインのウェブサイトMotocuatroに語ったところによると、これはエンジンチューナーであるAkiraのプライベートプロジェクトということだ。AkiraはカワサキのMotoGP、WSBKのエンジン開発に関して関わってきたチューナーで、Avintiaレーシングが2014年に使用していたマシン2013年のFTRのマシン開発にも携わっている。彼らとしては2年間の開発成果を無駄にするのは惜しいということだろう。このバイクの開発を続け開発の余地を探っているようだ。

これはカワサキのオフィシャルチームがMotoGP参戦を目論んでバックアップしているのだろうか? 私が現時点で判断出来る情報の中では、応えはNoだ。

カワサキのMotoGP復帰を望むファンは多いが、実際カワサキがこのプロジェクトに絡んでいないという証拠はいくつもある。一番はっきりとした証拠としては、ガレージの中に一人も日本人エンジニアがいないことだ。クルーチーフはBigotだし、多くのエンジニアはスイスのチューニング会社出身だ。

 

そしてタイヤだ。ドミニク・エガーターはミシュランを履いていたが、これはミシュランが現在MotoGP向けに開発しているものではない。このタイヤの正体はスペインのCEVMoto2チャンピオンシップのもので、ケニー・ノエスとドミニク・エガーターは周りのペースから5秒も遅かった。エガーターはドイツのウェブサイトSpeedweekに「タイヤのパフォーマンスは良くない。」と語っている。もしこのプロジェクトの背後にカワサキがいるのであれば、カワサキもしくはドルナ(ドルナはファクトリーチームがMotoGPに戻ってくることに関して大歓迎という立場だ。)が、ミシュランの開発中のタイヤかブリヂストンのMotoGPタイヤの調達を行うだろう。

だが、MotoGPのエントリーとは全く関係ないプライベートテストを行うとしたらタイヤは調達出来るだろうか?その答えはNoだ。FTRが最初にCRT機のテストを始めた時でさえ、最初はピレリを使用せざるを得ず、ブリヂストンのMotoGPタイヤは供給されなかった。

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今回のマシンに使用されていたパーツに関してもごった煮と呼ぶのがふさわしく、エンジンはAvintiaが2014年に使用していたニューマチックバルブ搭載のもの。シャーシは2種類使用されていたようだが、1つは軽くモディファイされたものでもう1つは昨年のものと完全に同じもの。カウルは色々なものが組み合わさっているようで、MCNのサイモン・パターソンが教えてくれた話によると、ガレージには大量のカウルが山積みでバイクがガレージの外に出るたびにカウルのカラーリングが部分的に異なるほどだったそうだ。これはおそらくAkiraがバイクのエアロダイナミクスをテストしていたということだろうが、本当にMotoGPに復帰するチームであればこんなテストをするだろうか?ファクトリーとしての正式テストではないからこそ、今までの古いスペアパーツが大量にあるのに新しいカウル作成に資金は使いたくないということだろう。

 

チームが他に試していたのはエレクトロニクスで、ECUはMagneti Marelliで、エガーターによるとアンチウイリーやトラクションコントロールの類は使用していなかったらしい。実際のところダイノ上のテストとこうした実地テストの違いは大きく、学ぶことが大量にある。エンジンマッピングにしても、ダイノ上と風や空気圧、温度の異なるサーキットの上では大きく異なるのだ。

Akiraは今年の年末にもテストを行いたいとしているが、AvintiaはDucatiにマシンを変更してしまったし誰も資金を出さないのになぜ続けるのだろう?Bigotは「このバイクがどこまで戦闘力を高められるかを見たいんだ。」と語っているが、このバイクが2016年のMotoGPグリッドに並ぶ可能性はあるのだろうか?Bigotはこのバイクでどこまで行けるかを見たいと答えるだけだった。しかしBigotは、このプロジェクトはカワサキのプロジェクトではないという点は繰り返し述べた。Akiraは今までカワサキと近しい関係でマシン開発を進めてきただけに混乱する内容ではある。

 

それで結局、カワサキはMotoGPに復帰するのだろうか?残念ながら今後数年間それは無いだろう。カワサキが最後にMotoGPに関わっていた時に経験したのは、大量出血とも言えるほどの出費だ。5回の表彰台、優勝無しという記録にかかった経費は、年間約6000万ユーロ(約80億円)。彼らがMotoGP撤退を決めた2008年は世界金融危機のまっただ中で、ドルナはカワサキに参戦コストの減額を提案したのかもしれないが、それでもカワサキにとってMotoGPにかかる出費は多すぎたのだ。カワサキにとってMotoGP参戦で得た経験は莫大な出費以外のなにものではないというのが実態である。

 

視点を変えてWSBKではどうか?MotoGPを去った後に彼らはWSBKに注力し、その努力はすぐに報われた。2012年にトム・サイクスがあと一歩でタイトルを逃しているが、2013年にタイトルを獲得した。2014年は最終戦でタイトルを逃すも、2015年はトム・サイクスとジョナサン・リアという2人の優勝候補ライダーを抱えている。6000万ユーロを使う代わりに彼らはわずかに500万ユーロ(約6億7000万円)しか使用していない。もしレースがマーケティングだとしたら、彼はWSBKでレースに勝ち素晴らしいマーケティング効果を得ている。MotoGPでせいぜい10位かそこらで走行するよりもよっぽど良いだろう。

 

2016年のMotoGPの狙いは参戦コストの削減も含まれている。だが共通ECUの使用が大幅なコスト削減に繋がるかというと、そういうことにはならないだろう。リヴィオ・スッポが11月にヴァレンシアで述べているように、コストとルールの相関はそれほどない。チャンピオンシップで勝つための研究開発等にこそコストがかかるのだ。MotoGPがバイクレースの頂点である限り、その参戦コストが急激に下ることは無いだろう。

ではなぜ、ケニー・ノエスとドミニク・エガーターは今回のテストを引き受けたのか?それは金ではなく成功への情熱だろう。人々がレースに参加するのは競い合いたいからであり、その中で成功したいからだ。そしてその先で金を稼ぎたいと思うものだ。そして何よりもレースに参加する人々はこのスポーツを愛している。それこそが人々を夢中にさせる何よりのドラッグなんだろう。

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