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★MotoGP2014 各メーカーごとエンジンの使用状況に関する考察

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前回のECUの話に引き続きマニアックなエントリーが続きますが、今回の内容はMotoGPクラスのライダー達のエンジンの使用サイクルについてです。

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アメリカのベテランジャーナリスト、デニス・ノイズと私(デヴィット・エメット)、ドルナの素晴らしいメディアオフィサーからの要請により、IRTAとドルナはエンジンの使用チャートを公開することに関して折れてくれた。

これらのチャートは誰がトラブルに陥り、誰がピットレーンスタートを余儀なくされ、誰がシーズン終了までエンジンを温存できたのかなどが一目でわかる。

 

2010年にエンジンの使用制限数が設けられてからエンジンの使用制限数は6基から5基に制限されてきたわけだが、メーカーは信じられないような耐久性を持った高出力エンジンの開発がどんどん上手くなっていった。ファクトリーオプションのホンダとヤマハの8人のライダーは2014年に約9,000kmをたった5基のエンジンでもって走りきった。ブラッドリー・スミスにおいてはわずかに4基のエンジンで9,416kmを走行している。これは1基あたり2,354kmの走行となる。

 

最初にエンジンの使用耐久に関するルールが設けられた時、各メーカーがそのレギュレーションに沿った開発を一斉に始めたため、これは参戦コストを引き上げるルールだと思われたが、結果的にはこれは参戦コストの引き下げに繋がった。エンジンはそれまでのように日本でバラされ、計測され、テストされ、組み直され、ヨーロッパの次のラウンドに備えて送らてくるというプロセスを踏む必要がなくなったのだ。

 

さらに重要なこととしては、各メーカーがこの分野で技術力を大きく伸ばしたということが言えるだろう。これはそのまま市販車にフィードバック出来る、高い信頼性とモアパワーという要求を満たすものだった。

 

近年の高出力エンジンは素材の進化と潤滑テクノロジーの進化によって、耐久性を犠牲にすることなくパワーを向上させることが出来た。もし2013年にこうした信頼性の部分でエンジンに問題があったとしたら、エンジン開発が凍結された今年のシーズンはかなり厳しいものになっていただろう。


つまり5基すべてのエンジンの内部パーツも、ケース部分も同一のエンジンを使うとなった場合、ホンダもヤマハもアップデートバージョンのエンジンを登場させたとしても古いエンジンを引退させようとは思わなかっただろう。

 

ファクトリーとサテライトチームは5基の同一のエンジンを使用し、その使用距離が限界を突破したときはそのエンジンの使用をやめる。そしてそのエンジンが再び使用可能な状況になる時は、その後使用していたエンジンが故障した時となる。

 

例えばポル・エスパロガロの#1エンジンは最初の3戦でガレージに戻され、たったの17セッションをこなしただけだった。彼の#2エンジンがアラゴンで49セッション後にダメになった時、#1エンジンは修理から戻され、その後11セッションをこなした。モンスターテック3ヤマハのエンジンの使い方は実に見事で、彼らはいずれのライダーも年間をほとんど4基のエンジンで走りきり、ポルは5基目のエンジンを最終戦ヴァレンシアで使用した。

 

ヤマハのM1のエンジンは恐ろしく頑丈で、ホルヘ・ロレンゾは63セッションを#2エンジンだけでこなした。また#1エンジンで55セッションをこなしており、第8戦のアラゴンで#3エンジンを始めて使用した。ロレンゾはシーズン183セッションを、#1#2エンジン合わせて118セッションをこなしている。

 

ロレンゾの#1エンジンが最後に使用されたのはミサノで、#2エンジンは16戦目のフィリップアイランドでも使用された。ロレンゾにせよロッシにせよどちらも5基目のエンジンはそれほど必要とはしていなかったようで、それぞれ5基目のエンジンは12,13回しか使用していない。ただ、エンジンの使用パターンの変化やエンジン再利用の理由などの細かい部分は、ヤマハのエンジニアにしかわからない部分なので、チャートからは読み取れない。

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ホンダのアプローチはよりシステマチックだ。だいたい40セッション前後でエンジンは交換されるサイクルが見て取れ、これはシーズン終了まで変わっていない。最後の1基に関しては40セッションに達しておらず、マルケスにしてもペドロサにしても#5のエンジンは27セッション、25セッションとなっており、少し余裕を持たせてあるようだ。


ホンダはこのエンジンの残りの耐久性を利用して、回転数を通常よりも上げていたのか?などというのは明らかではない。ただホンダのエンジニアは天才揃いなわけであるわけだから、何らかのこうした戦略が隠されていると見てもよかろう。

 

ダニ・ペドロサのエンジンの使用チャートはホンダの戦略の縮図だ。ペドロサは#1エンジンと#2エンジンを最初の6戦で入れ替え、#3エンジンをバルセロナで使用。#1、#2エンジンは#4エンジンがブルノで投入されるまで#3エンジンと交互に使用されている。#3エンジンはアラゴンで使用され#5エンジンがその次に入れ替えられた。そして、この#5エンジンは#4エンジンと共にシーズン終了まで使用された。


面白い事に#3エンジンはペドロサがアラゴンでクラッシュした時のエンジンだ。そしてこの後#3エンジンが表舞台に出てくることは無かった。このエンジンがクラッシュで大きなダメージを受けたのかはわからないが、このエンジンは40セッション使用されていた。#2エンジンと同じく通常の寿命を迎えたという考え方も出来る。

 

ファクトリーオプションのバイクとオープンクラスのバイクのエンジンの使用方法には大きな違いがある。ファクトリーの場合は使用を停止したエンジンは単純に入れ替えの順番から外れるだけで、次にエンジンの中身を開けるときは検査の時かメンテナンスの時だけだ。オープンクラスの場合はエンジンの入れ替えは激しく、ファクトリーライダーが5基のエンジンを使用するところ、カレル・エイブラハムは10基、レディングとヘイデンは11基、青山は12基のエンジンを使用している。

※青山の場合はRC213V-RSの新型エンジンを含むために12基となっている。

 

ファクトリーオプションのライダー達が5基のエンジンを常に使用出来るのに対し、オープンクラスのホンダは3基のみとなっている。これは2基が常に使用されており、もう1基は再組み立てのために送られることになっているためだ。これはジャーナリストがオープンクラスのホンダライダーに話をする時に良く見られた光景で、大体の場合において、RCV1000Rのエンジンが1基エンジンベンチに鎮座し再組み立てを待っているのだ。


これはまるでヌーディストキャンプにいきなりやってきたような状況で、我々ジャーナリストは何気無い顔をしながら、直接それらのエンジンを見ないようにしながら、スマートフォンで写真を撮るのだw

 

ヤマハのオープンクラスのバイクはサテライトにより近く、フォワードヤマハのライダー達は同時に3基のエンジンを使用出来る状況だった。


Ducatiに関してはさらに面白く、ヨニー・ヘルナンデスはGP13で1シーズンを7基のエンジンで戦った。ヘルナンデスはもう少し少ないエンジンで戦えたのではないかという推測も出来る。エンジンのアップデートを受けなかったカル・クラッチローは9基のエンジンで戦い、アンドレア・ドヴィヅィオーソとイアンノーネの2名はエンジン改良版のGP14.2をアラゴンで使用した。

 

このGP14.2のエンジンは少し壊れやすいようで、ドヴィヅィオーソがクラッシュで1基を失った後は、このエンジンに対して正確な判断が難しい状況だった。


この中でイアンノーネはモルモットとして使用されたようで、彼は1つのセッションで青い煙を吐いて止まった2基のエンジンを失うなどのトラブルに見舞われた。これに関してはイアンノーネはこの新型エンジンがどこまでの負荷に耐えられるのか?という実験役とされたというのが、パドック内のもっぱらの噂だ。


オープンクラスのバイクにとっては明らかにコストの削減にこのルールは役立っており、2015年もエンジンの使用に関しては同じような状況となるだろう。興味深い疑問としてはGP15はどの程度の開発を必要とするのか?そしてスズキやアプリリアは?というものだ。


Analyzing MotoGP Engine Usage in 2014