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★MotoGP共通ECUの向かう先。より安全に、簡単に、そしてより平等に

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オープンルール、ファクトリー2ルール、そして2016年からのソフトウェア共通化に関しては、参戦コストを下げたいドルナ、ホンダやヤマハに追い付きたいDucati、自前の開発が止まるのを嫌がったホンダ、ヤマハという構図かなと管理人は理解しているんですが、考えてみれば、今回のECU、ソフトウェア共通化というのは、今までのモータースポーツの歴史においては画期的な取り組みですよね。

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MotoGPに参戦するメーカーの間で過去にはなかったようなメーカー間の協力が行われようとしている。これは今ままで秘密となっていた彼らのエレクトロニクスの秘密を共有し、新しい共通のECUを開発しようというものだ。

 

現在の”チャンピオンシップECU”はオープンクラス向けのものだが、2016年から使用されることになるECUは全チームに使用が強制されることとなる。

※現在のファクトリーチームは同じECUのハードウェアを使用してはいるが、彼ら自身のソフトウェアの開発を許可されている。

 

これらの非常に複雑化したエレクトロニクスは、トラクションコントロール、ウイリーコントロール、ローンチコントロール、エンジンブレーキングやトルク伝達などにおいて最大限の効果を発揮するように使用されており、近年では燃料の消費低減などにおいて大きな効果を発揮するようになってきている。現在のオープンクラスのソフトウェアはドルナの依頼によりMagneti-Marelliが作成したもので、例えばメーカーが新しくウイリーコントロールの機能が欲しいとすると、下記のような流れになる。

 

MotoGP技術ディレクター コラード・チェッキネロ
「チームがまず自分達に彼らの戦略のロジックを伝え、それに関して我々が現在の仕組みよりも優れていると判断した場合、Magneti-Marelliのエンジニアが新たにコードを書き、それを皆がオープンクラスのソフトウェアとして共通に扱えるようになります。オープンクラスのソフトウェアが顧客の声をもとに進化しているということを皆が理解出来たら素晴らしいですね。」

 

「現状に関して言えばリソースが問題で、何をするにしても時間がかかってしまっています。でもこのプロジェクトを動かしていきますよ。このままでというわけにはいきません。現在そして将来的なMotoGPクラスへの参戦メーカーは”チャンピオンシップECU”の開発に協力することになります。このECUの開発はクローズドなサーバー上で行われ、開発の参加者はソフトウェアの開発のモニタリングやモディファイに関する提案などが行えます。」

 

ヤマハ リン・ジャービス
「来年6月の終わりから実質的に自前ソフトウェアの開発は出来なくなります。でも思うに今の段階から各メーカーのエレクトロニックエンジニア達は、色々な話をしたり共に作業をしたりということを始めていると思います。ソフトウェアに関して大事な事は次の目的を必ず達成することです。1つは全参加者において共通したパフォーマンスが出せること。そして2つ目には誰もが簡単に理解して操れること。現在オープンクラスのチームなどに我々のソフトウェアを渡そうと思えば可能なんですが、パラメーターの調整範囲があまりにも多すぎたりして、きっと彼らではファクトリーチーム専用のソフトウェアを使いこなすことは出来ないでしょう。」

 

実はこのシナリオはDucatiがオープンクラスでの参戦を目論んでいたシーズン当初描いていたものだ。ファクトリーからオープンクラスへのスイッチにあたり、Ducatiは彼らのソフトウェアの秘密をオープンクラスの開発チームに共有するものと思われていた。

しかし新しいソフトウェアはDucatiにとってのみ使いやすいもので、オープンクラスと言いつつもファクトリーのエンジニアやリソースが存在するDucatiのみがそのメリットを享受する形となった。Ducatiはファクトリーでの参戦ながらもオープンクラスのメリットを受けて参戦し、他のオープンクラスのチームは以前の旧型のソフトウェアのままで参戦することになった。

 

リン・ジャービス
「誰にとっても使いやすく安全であることが必要です。ヤマハがソフトウェア開発において最も重視していることは、何事も”フェイルセーフ”(※誤操作、誤動作が起きても常に安全側にふって設計、制御すること)の考えのもとにあるべきというものです。ソフトウェアは絶対に”驚き”というものを開発に内包してはいけません。ほんの少しの機能しか発生しないようなものであっても、安全で操作が簡単であることに勝るものはありません。」

 

一般的にコントロールECUはライダーやドライバーへの電子的な補助を禁止する方向で開発が進められてきた。このプロセスの中でコントロールECUはサードパーティーによって開発され、チームに引き渡されるという流れを踏む。

 

MotoGPの場合はこれとは異なるスタンスを取り、ソフトウェアの開発内容のメーカー間共有を禁止し、ライダーを助けるための電子システム類を基本的に禁止するというものであった。当初のMotoGPにおけるECUの目的は、単純にどのチームでも同じレベルのECUが使用出来るようにし、参戦コストを抑えるということだった。
勿論ライダーを助けるための開発は続いていたが、それはラップタイムを0.5秒刻むとか燃費を改善するというよりは、ライダーの安全性を高めるという事を重視して開発されていた。

 

しかし、なぜ全てのメーカーがコントロールECUの使用に合意したのだろうか?

これについては日本車メーカーがオープンクラスのルールの抜け穴に敗れ、仕方なく今の状況を選択したのだという憶測も流れている。
オープンクラスの前身であるCRTのルールによってファクトリーには少なからず開発に支障が出ていたという向きもあるが、オープンクラスルールにその種の内容は盛り込まれていない。

 

オープンクラスで規定されたECUを使用する場合、燃料やタイヤ、豊富なテスト機会などの様々なメリットが享受出来るわけだが、他のオープンクラスのマシンに比べて明らかに高いパフォーマンスを発揮するDucati機は、ジジ・ダリーニャがこういった内容を見込んで開発を進めたと思って間違いないだろう。

 

現状のルールではメーカーの正式なマシンがオープンクラスから参戦する事を禁ずる事は出来ず、Ducatiは他のMSMAのメーカーからの評価を落とすことも辞さないという姿勢のため、遅かれ早かれ全ての参戦メーカーはパフォーマンスの追求のためにオープンクラスから参戦するようになる。これは2016年からの共通ECUの使用に向けたそもそもの土台となる考えとは異なるもので、今シーズンの開始前に急遽発表された変更版ルールの元となった。

 

この変更版ルールは非公式にファクトリー2ルールと呼ばれているもので、このルールの元に参戦するチームは全てのオープンクラスでのメリットを享受しながらにしてファクトリー製のソフトウェアを使用することが出来る。決勝の結果によっては使用出来る燃料などのメリットは失われるが、Dcuatiは常にホンダやヤマハに追い付くためのエンジン開発の凍結を避けられるのであれば、オープンクラスは魅力的だというスタンスだった。


ホンダは常に共通のECUの使用に関しては反対という立場で、これはMotoGPでの電子的な開発内容のフィードバックを市販車両に行えなくなるというのが建前だった。
チェッキネロはメーカーがオープンクラス用のECUの開発を手動すると強調したが、ホンダはこうした一連のソフトウェア開発からメーカーが除外されると考えていた。

 

ホンダ リヴィオ・スッポ
「過去のインタビューなどを通じて明確になっていない点を強調しておきたいんですが、新しいルールのもとでもメーカーには何らかの開発の自由が与えられます。そしてこれこそがホンダが共通のソフトウェアを皆が使用するというルールに合意した理由です。【唯一のソフトウェアを絶対に使用しなければならない】という状況と、最終的に合意に至った【各メーカーからMagneti Marelliに対して開発に関する提案が出来る】という状況を比較すると、後者のほうはテクノロジーの開発というレース活動の正当性を活かした方向性ですから。」

 

Ducatiはオープンカテゴリーから参戦するという試みを諦め、ソフトウェアの共通化に対して白旗を上げたと見て間違いないだろう。

 

Ducati パオロ・チャバティ
「1つのメーカーがソフトウェア開発に関してリクエストしたものに関しては、それが何であれ皆が共通して使えるようになる。これがこのルールの精神です。何らかの戦略の為に開発しようとした機能であっても、Marelliが開発して全てのメーカーに対して明らかになってしまう。ファクトリーソフトウェアの開発は来年の6月に開発が凍結されます。そしてその段階からは各エンジニアは自分たちが持っている秘密を全て共通して互いから見える場所に出すことが求められます。共通のソフトウェアを使用することでエレクトロニック・エンジニアの余分な作業や開発を減らす事になるでしょうね。最終的には他の競合チームも使えるものを用意することになるわけですから、共通のソフトウェアが満足出来る性能を発揮出来るようになったら、少し開発の手があくかもしれませんね。」

 

新しいECUは現行のファクトリーのソフトウェアを統合したようなものになるであろうから、スッポは新たに(機能として)変更が加わる事は無いと考えているが、2015年から参戦するスズキやアプリリアにとっては大きな助けとなるだろうと考えている。

 

ホンダ リヴィオ・スッポ
「これはオーガナイザーと参戦メーカーとの間の実に上手い妥協点のバランス取り方だと思いますね。参戦メーカーの知識が結集するわけですから、パフォーマンスが低下するとは思わないですね。ただ、新顔のメーカーと既存メーカーとのギャップは縮まっていくでしょう。」

 

しかし、メーカーごとの秘密が失われる以上、メーカーがエレクトロニクス開発にリソースを裂くモチベーションはどこにあるのだろう?

 

ホンダ リヴィオ・スッポ
「開発内容を秘匿には出来なくなりますが、我々は開発から学ぶ事が出来ます。それこそが開発のモチベーションになります。」

 

またソフトウェアと同様に各種センサーなども誰もが使用出来るようにホモロゲーションという扱いになるかもしれない。そうなれば、ホンダのマシンだけについているというセンサーと冗談として言われるtorqueductorは、単純にマルケスの右手首だという事も明らかになるだろう。コントロールECUの使用というのは2016年ルールの目玉で、既存の3種類のルールを統合するものとなる。そして同時にブリヂストンからミシュランにタイヤも変更となる。


MotoGP News - 2016 MotoGP ECU to be ‘equal, easy, safe’

 

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