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★カル・クラッチロー 2014年を語る 第一話(Ducatiへ適応するための苦難)

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motomattersにカル・クラッチロー選手の今年度に関しての詳細インタビューが掲載されていました。余りにも長いので3部構成となるようです。インタビュアーは詳細なインタビューでお馴染みのダビデ(デイビット)・エメット氏です。

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カル・クラッチローにとってタフな1年間が続いている。2013年はテック3ヤマハから参戦して4回の表彰台、シリーズランキングは5位という結果だった。その状態からのDucatiへの移籍は、実に大きなチャレンジだった。技術的なトラブル、クラッシュ、デスモセディチ特有のアンダーステアなど。これは明らかに彼がDucatiと契約した時に思い描いていた未来ではなかろう。

 

我々(moto matters)はアラゴンGPで彼に今年の現状。来年の抱負、現状の中でいかにモチベーションを維持しているかなどを聞いた。カルは非常に率直に語ってくれ、こういった状態の中での心の持ちようから、普段我々が知り得ないレース現場の話、ライダーそして人としての勇気について語ってくれた。

 

インタビューは非常に長く充実したものとなったために、3部に渡ってお届けする事となった。まず最初の第一弾としては2014年に彼がDucatiに適応するための苦難の話だ。

第二弾は火曜日にお届けする。内容は長く結果が出ないシーズンの中でいかに彼がモチベーションを保っていったか。というものだ。
第三弾は水曜日に、彼がいかにメンタルの強さがこのスポーツにおいて重要だと考えているか、そしてジャック・ミラーについて。といった内容でお届けする。

 


ダビデ・エメット(moto mattersのジャーナリスト)
「以前2011年のシーズンが最もタフだったと語っていましたが、今年と比べていかがですか?」

カル・クラッチロー
「今年が今までで一番でしょうね。Ducatiに来た時は上手くやっていけると思っていました。バイクが望む通りに操縦出来るという自信があったんです。こうやって新しいバイクに乗ることになるライダーが皆そうであるように、自分も自分自身に自信を持っていました。」

 

「実際のDucatiのバイクがどういう状態であるかは乗るまでわかりませんでした。2011年よりも状況は悪いか?という質問への答えはイエスですね。今年は上手く出来るだろうと期待していましたが、2011年はそう思っていませんでしたから。2011年はそこから良くして行こうと思っていたという点も違いますね。今の状況をこれ以上良くしようと思っていないわけではありませんが、2011年はすぐに競争力を発揮できるだろうと考えていたんです。それまではワールドスーパーバイクでずっとフロントを走って来ましたから。でもそれはそこまで問題では無かったんでしょうね。だって結果を見れば2011年のほうが良かったわけですからね。」

 

「今のほうがレースのペースは早いし、戦闘力の高いバイクも沢山います。でも今年のほうがタフなのは、自分がどこまで出来るかという限界が見えてしまっているからなんですよ。2011年は自分の限界は見えていませんでした。過去2年間は高い戦闘力を発揮するのが簡単だったとは言わないですけど、コンスタントに高い競争力を発揮するということは今よりも楽に出来ていました。今年は過去に比べて70%ハードであるにも関わらず、競争力があると言えるレベルにはかすりもしないような状況です。まぁ今年のほうが明らかに困難なシーズンですよ。」

 

ダビデ・エメット
「どのようにしてバイクに合わせようと努力したんでしょうか?我々ジャーナリストもDucatiにはひどいアンダーステアがあることはわかっています。Ducatiに新しく乗ることになったライダーは口を揃えてアンダーステアの事を語りますからね。あなた自身はコーナリングスピードが高いライダーだと思いますが、そういう乗り方が出来ないという状態でどうしようとしたのでしょうか?」

カル・クラッチロー
「まず、Ducatiは今まで乗ってきたどのバイクよりも難しいですね。自分自身のスタイルを完璧にDucatiに合わせる事が出来てこなかったように思いますね。シーズン最初にまず乗った時、そして最初の5戦は断固として自分のスタイルを変えまいとしていたんです。なにせ過去3年間はロレンゾのようなライディングをすることを学んできたわけですからね。確かに完全にマスターすることは出来ませんでしたけどかなり近い線までは行っていました。自分が一番最初にレース活動を始めた時よりもどんどん良くなっていたし、自分のクルーチーフのダニエラもそのようにしたほうが良いという方向性でしたしね。」

 

「ロレンゾのようなライディングにすることで、レースの中でも良い結果が得られるようになっていました。ですからDucatiに移籍した時、今までのようにコーナリングスピードを保ったままコーナリングするというライディングだったんです。でもDucatiではそれが出来なかった。つまり、ブレーキングでのスタイルを変えざるを得ないわけです。ブレーキで恐ろしく深くまで突っ込むわけですよ。Ducatiはブレーキではめっぽう強いですからね。恐らく自分が今まで乗ってきたバイクの中で一番ブレーキが強いバイクですね。

 

「でも、ブレーキングは自分の弱点なんですよ。自分は最初は優しく中間でハードにかけて、その後はブレーキをリリースするんです。Ducatiの場合は自分が今までブレーキングしていた区間よりも更に先までブレーキをかけないといけないんです。よりハードより長くね。そしてコーナーに飛び込んでいく。そこからブレーキをリリースして曲がるんです。このスタイルは自分の今までのスタイルとあまりにも違いすぎました。ですから、今でも乗るたびにこういう乗り方を意識してやらないといけないんです。」

 

「問題はトラックに出るたびにこの問題を常に感じないといけないことなんですよ。アンドレア・ドヴィヅィオーソも去年は自分と同じ状態だったはずなんですよ。彼は2シーズンで2台違うバイクに乗りました。そして3年目で3台目のバイク(Ducati)に乗って、今自分がやっているような乗り方でバイクに乗っていたはずなんです。その後、彼は今年の最初のテストでバイクをあっという間に理解して、今もその延長で乗っているという感じですね。ですから、おそらくもう1年Ducatiに残れば同じ事が起きるとは思うんですよね。そして自分自身ももっと競争力を持った状態で挑めるはずなんですよ。そう思いたいですね。でも、だからといって今現在Ducatiに自分のスタイルをあわせるということを諦めたとかいうわけではないですよ。」

 

ダビデ・エメット
「確かにそれは二人のアンドレアに関して言えますね。ドヴィヅィオーソもイアンノーネもDucatiに自分のスタイルを合わせるのに1年はかかっていますね。去年のドヴィヅィオーソに関して言えばまるでショック状態のような感じでしたからね。だが今年は違う。」

カル・クラッチロー
「そうですね。今の自分の状態がまさに昨年のドヴィヅィオーソのような状態でしょうね。ですから、あと1年Ducatiに残れればドヴィヅィオーソのように良い結果を出せると思うんですよ。もちろんいきなりレースで勝ったり表彰台をばんばん獲得したりということでは無いとは思いますけどね。ドヴィヅィオーソは自分が見た中ではキャリアの中で一番の走りをしているように思いますね。イアンノーネもいいですよね。二人共明らかに自分よりも良いライディングをしています。彼らの士気は明らかに自分よりも高いですよ。」

 

「ミサノでは自分はトラックから何度もランオフして何度もミスを犯しました。10秒は無駄にしましたかね。またトップスピードにおいても10秒は失ってますね。なんせ彼らのバイクはエンジンパワーだけで1周につき0.4秒も自分より速いんですからね。彼らの場合は練習走行や予選の良い結果によっての士気の高まりがあったから速いというのもあるとは思いますけどね。」

 

「まぁでも士気っていうのは面白いもので、例えば翌日に初めての走行で、そのセッションのトップタイムをマークしてしまったとしたら、次のセッションだとか週末全体での士気を保てるかどうかっていうのはわからないですよね。自分としてはDucatiがソフトタイヤを使えるというのは好きじゃないんですよ。自分以外の二人はソフトタイヤをよく使いますよね。予選で上位に来れば確かに勢いはつきます。でも自分はソフトタイヤを使いたくないんですよ。だって決勝ではほぼ使えないわけですからね。今年一回だけソフトタイヤでレースをしたことがありますが、そうなるとルール上その週末はそのコンパウンドのタイヤを使わざるを得なくなるんですよね。」

 

「それで、ええと自分のスタイルを変えるという話ですけど、けして自分のスタイルをDucatiに合わせて変えるのをやめたわけではないんですよ。でも、ぱっとサーキットにやってきて競争力をすぐに発揮出来るような状態ではないということですね。」

 

ダビデ・エメット
「スタイルを変えるというのは、あなたの体や筋肉で覚えた乗り方を変え、トラックごとでの乗り方を変えないといけないということでしょうか?」

カル・クラッチロー
「ええ。ミサノはテストをしていたサーキットなので、今までよりも良く乗れていたんですよ。金曜にミサノに到着した時は雨でした。そこで、もしかしたらテストしたことがあるこのサーキットでアドバンテージを持てるかもと思ったんですよ。でもトラックのグリップレベルが十分で無いとわかり、自分のライディングスタイルとあわず他のライダーに比べて苦戦を強いられることになりました。彼ら(他のDucatiライダー)はより深くまでブレーキで突っ込んで遅いコーナリングスピードで侵入し、立ち上がりの速度は速い。自分はコーナリングスピードを保ったまま侵入しバイクを曲げようとするライディングをしようとしていたんですが、非常に困難でした。」

 

「おそらく今年は最後までタフなシーズンになるでしょうね。他の二人は自分とは違うパッケージ(来季のファクトリーライダーのため)になっていきますし、さらにその差は広がっていくでしょう。でもDucatiは自分にベストを尽くしてくれるし、うちのクルーはとても懸命に働いてくれます。ですから自分としては彼らの働きぶりやマシンに関しては不満は無いんですよ。今現状で手元にあるリソースで最大限できる事をする。シンプルなこの作業を続けていくだけです。」

(motomatters)