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★KTMのMotoGP復帰はWSBKの放棄か?

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クラッチロー選手の電撃移籍話で霞んでしまいましたが、KTMが2017年からMotoGPに参戦するようです。
参戦メーカーが増えて嬉しいですけど、話はそこまで単純ではないようです。
 
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新たなメーカーの参戦が先ごろ発表された。KTMはホンダ、ヤマハDucati、スズキ、アプリリアに続いて2017年からMotoGPに参戦する。
 
これはKTMのCEOステファン氏の発表で、ドイツのウェブサイトSpeedweakに掲載されたものだ。
 
これはファクトリー体制での参戦ではなく、バイクを作成してプライベートチームに供給するという彼らがMoto3で行っている手法での参戦となる。
 
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バイクはパイプフレームにV4エンジンを搭載したものになる予定で、サスペンションは当然WPになるだろう。エンジンの設計は既にスタートしており、ダイノ上のテストを2015年5月に、完成したバイクのトラックでのテストは2015年末を予定している。
 
2016年はさらなる開発を続け、2017年に備えるようだ。2016年中頃のワイルドカード参戦はあり得るとしており、価格は100万ユーロ程度になる予定だ。これはドルナがプライベートチームがMotoGPマシンを手に入れる事が出来るようにと考えている価格とほぼ同額である。
 
KTMにとってMotoGPの挑戦は2度目である。1度目はケニー・ロバーツのチームのKRで参戦した2005年だ。
この時のマシンはV4エンジンを搭載していたが、アグレッシブ過ぎるエンジン特性と開発途上の電子制御によって、非常に扱いにくいマシンであった。

それ以来KTMのマシン開発はスムーズなパワーデリバリーと操縦のしやすさを追求しており、今回のMotoGP復帰に関しては共通のソフトウェアを使用することもあり、ソフトウェアに関してはさほど問題にはならないだろう。

 
現在開発中のRC16と呼ばれるマシンのエンジンは、現在Moto3クラスで圧倒的な強さを誇るKTMのエンジン設計を担当したKurt氏が担当している。
 
今回のKTMのファクトリーではない参戦体制については特筆すべき点がある。
 
つまりBMWが取っている手法と同じく世界選手権での失敗に対しては責任を負わず、世界選手権の中で蓄積される技術や情報に関してはコストをさほどかけずに全て自社に還元する。というメリットが発生するのだ。
 
実際に販売されるのはRC16だけではなくそのマシンのプライベーター版が市販される予定だ。
 
このマシンは排ガス規制などによって公道走行は出来ないだろうが、裕福なMotoGPファンに向けて150,000ユーロ〜200,000ユーロで発売され、少なくとも100台の販売を見込んでいる。もちろん、これがMotoGPマシンの開発資金に回される事は間違いない。
 
KTMMotoGPマシンの開発に力を入れるのは、近年EUの中でWSBKひいてはそのベース車両となる市販車両へ高まる安全性への過度な要求にも原因がある。
 
ステファン氏は「200馬力を超えるパフォーマンスを持ったマシンが、公道走行をする事は実質不可能なんです。」と語る。
 
ただ、現実的に公道走行可能なマシンの馬力を制限していくことは難しいであろうし、実際にバイク事故は幅広い速度帯で発生しており、死亡事故のほとんどは他の車両によって引き起こされている。
 
公道走行を目的とした車両の開発よりもレース専用車両の開発を優先するというKTMの考え方は、WSBKの存在意義に対して問題を投げかける考え方と言える。
 
スーパーバイクのパフォーマンスはこの20年で飛躍的に進歩した。
 
Ducatiを例に出すと、916は1994年に114馬力で登場し996で122馬力となった。998で123馬力になり、このマシンは2002年まで発売された。
2003年から発売された999は150馬力で、その後1098にその座を譲り、2009年からの1098Rは180馬力を発生する。最新のパニガーレ1199Rは195馬力を発生する。
 
つまりこの20年でエンジンパフォーマンスは70%向上しているのだ。
エンジンパフォーマンスの向上と比例して売上は下がり、公道で扱えるパフォーマンスからはどんどん遠ざかって行く。ハンドリングや各種電子制御の進化にも関わらず、警察のお世話になることも増えていく。
 
スーパーバイクの参戦車両となるRC8ではなくホモロゲーションの規定を満たさないMotoGPマシンの開発に専念するということは、KTMWSBKを見限ったとも見て取れる。
 
もし今後WSBKの参戦規定がさらに厳しくなるようであれば、ただでさえ厳しいWSBKの立場はさらに厳しいものになっていくだろう。