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★鉱物油か化学合成油か、それが問題だ。

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Cycle Worldの人気コーナー「Ask Kevin」(ケヴィンに聞く)に化学合成油と鉱物油の違いに関する質問があり、結構面白かったので紹介します。

結局のところエンジン側の要求スペックを満たしていさえすれば何でもいいみたいですね。

 

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Q

「Cycle Worldの初期からずっとケヴィンの記事を読んでいます。化学合成油と鉱物油とでどちらがより優れているのか?という議論が良く出てくると思いますが、ケヴィンの意見を聞いてみたいです。」

A

「これは非常にポピュラーな質問です。実際のところ化学合成油にしか適合しないエンジンというのは限られています。そういったエンジンの場合は化学合成油を使う以外の選択肢はありません。」

「 それ以外のケースではメーカ側でそのエンジンに対応するオイルの粘度(例 5W-30)とオイルのAPI規格(例 SJとか)を公表していますので、基本はそれに従うわけですが、化学合成油にするか鉱物油にするかの判断はオーナーの好みで良いでしょう。この事を理解するには潤滑に関して3つのことを理解する必要があります。」

 

1)完全油膜潤滑もしくは動圧潤滑  
この潤滑方式の場合、パーツの動きとオイルの粘度によって部品同士(クランクジャーナルとベアリング、ピストンリングとシリンダーの壁面、カムの突起面とタペット)の接触面が接触しないように十分なクリアランスが保たれる。この場合のフリクションは非常に低く、一般的にかかっている負荷の0.001倍の負荷がかかる。

 

2)混合潤滑
この状況での負荷はオイル自体とパーツ自体の接触面の両方に分散される。この状況はエンジンの始動時にパーツの隅々までオイルが行き渡る前に起きやすく、通常では起こりえないような高負荷がかかった場合、オイルの粘度が低すぎる場合、パーツの動きが遅すぎるために油膜を十分に形成出来ない場合に起きる。

 

3)境界潤滑
もし油膜がパーツの接触面から絞り出されてしまうと負荷はパーツ同士の接触面にダイレクトにかかる。これは本来は望ましくない形式ではあるが、聞こえほど実際の状況としては悪くはない。

現代のエンジンオイルは界面活性添加物を含んでおり、これらの分子が結びつくことによりオイルと似た働きをするということもあるし、そもそもパーツ表面にローフリクションになるような加工がなされている事が多い。このような科学的に結びついた表面層は、メタルとメタル同士の境界接触に比べて低いフリクションとなる。

この場合の接触面の負荷は完全潤滑の場合に比べて10〜100倍高いが、パーツの表面を傷つけるほどのものではない。


「完全潤滑の場合、オイルの粘度は負荷を支えるパーツの動きと完全に結びついています。そのためエンジン側で要求する粘度さえクリアしてオイルであればどんなオイルであれ事は足ります。そのため、この場合では化学合成油が鉱物油よりも優れているということにはなりません。

 

「また、オイルの粘度というのは永続するものではなく、粘度は気温によって変化し、温度の上昇によってどれだけの粘度が低下するかという事を粘度指数と呼んでいます。マルチグレードオイルの場合、ベースオイルにそのベースオイルの粘度の代わりとなる添加物を入れて作られています。」

 

「1950年の冬に、私の両親が彼らの車のエンジン始動がうまく出来ない時がありました。そのエンジンは30Wのシングルグレードの特性のエンジンオイルを使用しており、気温が低いということで粘度が高くなっていたせいで、6Vのスターターではエンジンを始動することが出来なかったのです。」

 

10W-40Wのようなマルチグレードオイルの場合、通常の温度の場合はシングルグレードオイルのような特性を発揮し、温度が0度の時は10Wの粘度のように働きます。また、温度が上がって100度まで到達した場合に40Wの特性を発揮します。これは温度と共に粘度が上がっていくというわけではなく、あくまで温度が低い時に10Wのオイルの粘度のように働くということです。」

 

「このようにオイルのボトルに書いてある粘度というのは0度の時にどういった粘度特性で働き、100度の時にどういった粘度特性で働くのかを表しています。化学合成油と炭化水素油(鉱物油)との違いは、軍隊の人員構成のようなものと考えるとわかりやすく、炭化水素油は一人ひとり異なる個人であるのに対し、化学合成油は全てが同じクローン人間であるというような理解で良いでしょう。」

 

「さらに付け加えるべきは、オイルの分子は徐々に剪断されて細かくなっていくということです。つまりオイルの分子がどんどん短く剪断されるに従ってオイルの粘度は低下していくということです。」

 

化学合成油は炭化水素油に比べて剪断への耐性が強いものの、全てのオイルの分子は長い炭化水素鎖の構造をしていますので、鉱物油であろうが化学合成油であろうが剪断によって分子構造が細かくなることに変わりはありません。石油系油分は化学合成油が狙っている特性に近い形で分子構造の均質化と耐久性で改良されているものの、つまるところオイルはマジックでも何でも無いのです。」

 

「オーナーズマニュアルに記載されているオイルの交換サイクルというのは、このオイルの粘度低下を受けて決定されているものです。こういった背景にも関わらず、オーナー、そして中にはディーラーの中にも3000マイル(4800キロ)もしくはさらに頻繁にオイルを交換するべきとしているところもあります。」


化学合成油の何が優れているのかというと、高い温度にさらされた時の耐久性です。
ジェットエンジンの開発初期は鉱物油しかなく、鉱物油で高音で回転するシャフトベアリングとアクセサリードライブの潤滑を行っていました。エンジンがさらに発展してくると鉱物油の温度上昇にともなう変質や、重合反応によるガム化、ニス化が問題になってきました。その中で化学合成油が代替品として評価され、ジエステルがタービンエンジンの潤滑油として選ばれていきました。」

 

「それ以来、オイルに高い温度耐性を求める場合はさらに高い温度耐性を持った構造、ネオペンチルポリオールエステルのようなものが求められるようになりました。つまりオイルの温度が高くなるほど、より適切な化学合成油であることが求められるのです。ですから、ファミリーカー、ヴァケーションで重いトレーラーを引いて走行する車などには、バイクの場合より化学合成油を使うべきなのです。(※もちろんバイクの場合でも化学合成油はエンジン冷却に効果があります。)」


「特定の合成油は車用エンジンのベースとして使えることがわかりましたが、石油系油分に添加するため開発されたいくつかのものは、化学合成油の代替が可能なほどのものではありませんでした。結果的に化学合成油の中に入っているような活性成分をとどめておくために、いくつかの新しい化学成分の開発が必要となりました。これにより石油系油分の中でも添加物を加えたものは、化学合成油よりも安い価格で良いパフォーマンスを発揮出来るようになりました。」

 

「APIオイル規格(SJのような)は、耐摩耗性、潤滑性、耐酸化性、耐食性などの観点からオイルの特性を規定しています。このような特性は、ベースオイルにどのような添加剤が加わっているかによって左右され、ベースオイルの特性そのもので決まるわけではありません。」

 

つまりどういう事かと言うと、あなたの車両のオーナーズマニュアルに【化学合成油の使用に限る。】などと書かれていない限り、化学合成油を選ぶか、鉱物油を選ぶかはあなた次第ということです。」

 

「ライダーの多くは自分のバイクのエンジンを守る為に「何かしなければ」と思っていて、高い化学合成油を買ったり、頻繁にオイルを交換したりすることと思います。それは確かに彼らの精神の平穏には良いでしょうし、実際エンジンに害はありません。それ以外の人たちはそういった行為に肩をすくめて、オーナーズマニュアルに記載してある必要条件を満たせばどんなオイルでもハッピーでいることでしょう。」

 

「実際オーナーズマニュアルに記載してあるオイル粘度というのは、かなり厳密なテストを経て決定されています。ほとんどのエンジンの摩耗は、コールドスタートの際の1分間で引き起こされます。これはオイルが各パーツに行き渡るのに時間がかかるためです。また、冷間時の摩耗を防ぐための働きはほとんどの場合添加剤によるものであり、ベースオイルの性能そのものではないのです。」


Ask Kevin: Should I Use Motorcycle Synthetic Oil or Petroleum?