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★スーパーバイク世界選手権2017で最も過酷なブレーキングセクションを擁するサーキットは?

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本国のBrembo (@BremboBrakes) | Twitterさんから、スーパーバイク世界選手権のブレーキに関する記事を寄稿していただきましたのでご紹介させていただきます。各サーキットごとになぜブレーキングシステムにハードと言えるのか?という解説が非常に興味深い記事となっています。

各サーキットのブレーキングの難易度とMotoGPとの比較

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(Photo courtesy of brembo)

スーパーバイク世界選手権のサーキットはどれも同じと思っているひと、いませんか?これらのサーキットについて、レースの走行距離はレギュレーションにより定められているため確かに似通っていますが(85~110 km)、カーブの数やスロープの平均および最大の傾斜度、直進距離の長さ、路面のうねり、そして使用されるアスファルトの種類など、その他の要素にはすべてそれぞれのトラック固有の特徴がよく出ています。これに加えて、レース当日の気温やアスファルトの温度、天候、レースの開催時間などによってもライダーやバイクのパフォーマンスは大きく影響を受けます。


これらの要素はブレーキングシステムの機能にも同じく影響します。実際のところ、ブレーキへの負荷が大きいサーキットもあれば、非常に軽い負荷で走りきることのできるサーキットも存在するのです。しかし、トラックごとのブレーキングの難易度を分類するには様々な条件を複合的に評価して判断する必要があります。単純にスピードだけで判断するのは大きな間違いです。


2016年、フィリップアイランド(オーストラリア)での第1レースのベストラップタイムはチャーン(タイ)のそれとほぼ同じでした(オーストラリア:174.990 km/h、タイ:174.527 km/h)。それでも、前者のトラックはブレーキ時の負荷が非常に小さいのに対して後者はブレーキングシステムに大きな負担がかかるコースです。


また、トラックで使われるブレーキの回数も、ブレーキングシステムにかかるストレスを評価する上での重要な指標にはなりません。例えば、ロサイル(カタール)とドニントン(イギリス)。スーパーバイクのライダーはロサイルサーキットではトラックにある16箇所のカーブで13回のブレーキをかけ、ドニントンではラップあたり7回しかブレーキングしません。ところが意外なことに、ブレーキに対してより過酷なのはロサイルではなく、ドニントンのサーキットの方なのです。


一方で、アッセン(オランダ)とアラゴン(スペイン)の両サーキットの場合は、どちらもラップあたりで必要になるブレーキング回数は10回ですが、アッセンのトラックはブレーキングが容易なのに対して、アラゴンはその逆で非常に難しくなっています。この違いは、ブレーキングの強さにあります。アッセンの場合、4秒以上の制動を必要とするブレーキングセクションは1箇所のみですが、アラゴンではそれと同様の箇所が3箇所あります。


当然のことながら、300 km/hでブレーキングセクションに進入した場合にかかる負荷と200 km/hから減速するときにかかる負荷は同じではありません。ここではムジェロやバルセロナなど、MotoGPクラスが345 km/hを超えるようなトラックについての話をしているわけではありませんが、スーパーバイク世界選手権で使用されるサーキットの中にもライダーの走行スピードが300 km/hを超えるところはいくつもあります。


ただし、非常に速い速度から進入するブレーキングセクションが1箇所のみでその他のセクションは比較的穏やかな速度域から減速すれば良いトラックの方が、高速域からの制動が複数箇所にばらけて発生するトラックよりもブレーキングシステムにかかるストレスは格段に小さくなります。この状態を最も顕著に表しているのが、先ほども登場したフィリップアイランドです。ライダーたちはスタートライン直後に設置されたカーブ1にめがけて312 km/hまで加速します。しかしこのオーストラリアのトラックにおいて230 km/h以上の速度から減速するブレーキングセクションはこの1箇所のみとなっています。


イモラでは、バイクはタンブレロカーブへ289 km/hの速度で進入し、これがこのトラック内のカーブ進入時の最高速度ですが、この他にも235 km/h以上の速度から入るブレーキングセクションがあと5箇所あります。エンツォ・フェラーリとその息子ディーノにちなんで名付けられたこのサーキットが、スーパーバイク世界選手権で使用される他のほぼすべてのサーキットと比較して非常に難しいとされるのはこのためです。


スピードの他にも、数十メートルのブレーキングを行うこととそれより更に長い距離でブレーキングを行うことは別の動きとして考える必要があります。ドニントンのカーブ9やアッセンのカーブ6、そしてミサノのカーブ8では、どれもスーパーバイクがブレーキングセクションに進入する時点での速度は270~273 km/hです。しかし、ドニントンの場合、そのブレーキング距離は183 m、アッセンでは65 m、そしてミサノでは224 mとなります。その結果、ブレーキングシステムの作動温度はサーキットによって全く異なった値となります。


しかし、ブレーキングセクションの長さが同じであっても、レバーにかかる操作荷重が異なれば、ブレーキングシステムにかかる負荷は違ってきます。ヘレスのカーブ8とポルティマオのカーブ10の場合、スーパーバイクはいずれの場合も108 mのブレーキ距離で制動しますが、その際にシステムへかかるプレッシャ値は、ヘレスで11.1 bar、ポルティマオで8.9 bar となります。


ブレンボの技術者たちはこれらすべての変数はもちろんのこと、通常であれば数値化の難しいその他の要素も含めてすべての記録をとり、ブレーキングシステムに与えるストレスの大きさについて、スーパーバイク世界選手権2017年シーズンが開催される13のサーキットを分類しました。各サーキットは1~5までの5段階で評価されています。フィリップアイランドとアッセンが最も低いスコアとなり、これはブレーキにかかる負担が軽いことを意味します。これに対して、チャーン、イモラ、およびドニントンではストレスが遙かに大きく、結果的にこれらのトラックには最も高いスコアが付けられています。

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(Photo courtesy of brembo)


MotoGPとの比較

スーパーバイクとMotoGP。両者は使用するマテリアルや最低重量などがそれぞれ異なる全く別の世界に存在しています。例えばMotoGPのプレミアムクラスで使われるプロトタイプマシンの最低重量が157 kgなのに対し、スーパーバイク選手権に参戦する市販車ベースのバイクは168 kgとなっています。


にもかかわらず、ラップタイムは近似しておりその差はほとんどありません。アッセンにおけるMotoGPバイクでのベストタイム(1’32’’627、バレンティノ・ロッシ)はスーパーバイクのパフォーマンス(1’34’’357、ロリス・バズ)と比較して僅か約1.7秒の僅差。その他で記録したMotoGPのアドバンテージについても、フィリップアイランドでは2秒、ミサノとヘレスでは2.2秒、ロサイルでは2.4秒、アラゴンでは2.7秒と、いずれもごく僅かな差となっています。


MotoGPバイクはより大きな馬力を持ち、加速も素早いため、結果として次のカーブにより速い速度で到達することになります。ロサイルのカーブ7の場合、MotoGPのライダーは218 km/hの速度からブレーキングを行いますが、これはスーパーバイク(193 km/h)を25 km/h上回るスピードです。これは、MotoGPバイクでのブレーキ距離が43 m長くなることを意味します(スーパーバイクが114 mであるのに対してMotoGPバイクが157 m)。


スーパーバイクにはカーボンブレーキの使用が禁止されていることから、ブレーキ時間の面で大きく不利な状態にあります。ミサノのカーブ1の場合、MotoGPバイクはより速いスピード(スーパーバイク256 km/h に対して271 km/h)まで加速しますが、その後ブレーキを使いながらスーパーバイクと同じスピードまで減速してカーブに進入します(115~116 km/h)。減速量がスーパーバイクより大きいにもかかわらず、MotoGPバイクのブレーキ時間は3.9秒で、これはスーパーバイクの約半分の時間です。


ここで、ほとんど差がないために考慮する必要がないものとしては、ライダーが感じる減速度の違いがあります。ロサイルのカーブ9の場合、違いはほとんど感じられませんが、その他の残りの4箇所のブレーキングセクションにおいてもその差は0.2 gを超えない程度となっています。

出典元:ブレンボ brembo

www.brembo.com

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