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★MotoGP2017 6メーカーのリードエンジニア達が語るMotoGP

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Manuel PecinoさんがMotoGPに参戦する6メーカーのリードエンジニア達に、現在のMotoGPを取り巻く環境について同じ質問をしてみた。という記事が面白いのでご紹介します。各メーカーともにいろいろな考えをしながら開発を進めているんですね。

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(Photo courtesy of michelin)

毎シーズン、各メーカーのレース部門のエンジニア達は、どんどん厳しくなるレギュレーションの中で彼らのモーターサイクルの開発、進化をさせる事に苦労している。各ブランドのリードエンジニア達、各メーカーのMotoGPプロジェクトで責任を負っている才能ある技術者達に、現在のMotoGPバイクがどういった方向に向かっているのかについて同じ5つの質問を行った。6人のリーダー達というのは、辻幸一(ヤマハ)、桑田哲宏(HRC)、ジジ・ダッリーニャ(Ducati)、河内健(スズキ)、ロマーノ・アルベシアーノ(アプリリア)、セバスチャン・リッセ(KTM)だ。興味深く、時には対立する意見を聞かせてくれた。

Q

「ウイングレットの禁止の後にエアロダイナミクスの研究はどのような方向に向かうのでしょうか?」

ヤマハ 辻幸一 氏

「エンジニア達はエアロダイナミクスのメリットを探そうとしており、そのメリット見つけた時にさらに大きくしようとしました。これは昨年ウイングに関して起きていたことです。現時点でも研究は続いており、その目標はシンプルでドラッグの低減と操縦性を高めるということです。」

HRC 桑田哲宏 氏

「ダウンフォースが減り、パフォーマンスに影響が出ています。皆が失われたダウンフォースを再び得るための解決策について考えています。ウイングレットがない状態だと難しいですね。ただ、我々エンジニアは解決策を見つけるためにここにいます。我々には挑戦が必要です。これは大きな挑戦ですよ。」

Ducati ジジ・ダッリーニャ

「ウイングなしだと確かに難しいですね。同じダウンフォースを得るというのは不可能です。今まで得ていたバランスを得ようとしていますが、明らかに我々のバイクは不安定になりました。良い方向での妥協策を見つけようとしています。セパンから試しているウイングレットなし2016年型カウルで、シーズンをスタートするという方向です。」

スズキ 河内健 氏

「ウイングレットがもたらしてくれたエアロダイナミクス上のサポートについては理解していますし、異なる方法で失われたダウンフォースを取り戻そうとしています。明らかにウイングがもたらしてくれたものを再現するのは難しいですが、レギュレーションが許す範囲でダウンフォースを得るために作業をする必要があります。バイクの軽快さ、操縦性に関しては、ウイングレットが失われた事によってスズキのバイクの性格には影響が出ていません。」

アプリリア ロマーノ・アルベシアーノ

「ウイングレットに関しては色々と言われていますが、ウイングレットがもたらしてくれた安定性に関しては誰も否定は出来ないでしょう。我々はウイングレットを残したいと思っていたんです。にも関わらず、その有効性は大げさに喧伝されていましたね。その証拠に、アレイシ・エスパルガロがウイング無しの我々のバイクをバレンシアでテストした時、彼はすぐさまに良いタイムを記録したんです。現在はいくつかのメーカーは新しいデザインのカウルでダウンフォースを得ようとしていますが、その他のメーカーはこの分野にはあまり興味ないようですね。」

KTM セバスチャン・リッセ

「我々の立場としては、ウイングレットというものを使った事はありません。ウイングレットに関する研究を始めたんですが、すぐにこれが禁止される事がわかりました。ですからあまり研究を進めなかったんですよ。ライバルメーカー達が失われたダウンフォースを得るために、どんな開発をするのか興味がありますね。皆が何かしらのアイディアがあるようですが、このサーキット、もしくはまた別のサーキットでどのような形で機能するかもわからずに、誰が革命的なカウルを使用するでしょうか?誰もがステップ・バイ・ステップで作業が出来るわけでもありませんし、シーズンに変更が一回しか許されないわけですから、間違った方向での開発は許されないわけですよ。」

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(Photo courtesy of michelin)

Q

「エンジンパワーに関しての優先事項というのは何でしょう?」

ヤマハ

「エンジンパワーというのは終わりなき旅です。しかしそれを使う必要がありますし、バイクを走らせるのに役立つ最高の形でのキャラクターを維持しようとしています。我々にとってはエンジンはシャーシの構成部品ですね。」

HRC

「それで作業が単純になるわけではありませんが、エンジン開発については定量化しやすいんです。もちろんエンジンパワーについては出来る限り欲しいですよ。強力なエンジンは加速の速さ、ストレートでの速さを約束するものです。これはサーキットでラップタイムを出す上での、1つの最高の形です。もちろんこのパワーは使いやすいものである必要があります。ですからこのエンジンパワーを適切に使用するために電子制御がいるんです。またパワーはシャーシを食ってしまうものではいけません。こうしたバランスを探しているんです。」

Ducati

「我々はエンジン開発をけして止めません。現在のゴールはエンジンの強力さを維持しながら扱いやすさを増すことにあります。」

スズキ

「昨年から低回転でのパワーが大きく向上しました。我々のエンジンは使いやすいものですが、このエンジンキャラクターは我々が維持したいと思っているものです。同時に(エンジン回転の)中速域、高速域でのパワーアップも望んでいます。全てはバランスなんです。低回転でのパワーが増すということはスライド量が多くなるということで、トラクションコントロールへの要求が大きくなりますしこういった方向は望んでいません。また低回転から中速域へのつながりというものが非常に重要なんです。」

アプリリア

「エンジン全域でのトルクカーブを向上させようとしています。いずれにせよ、他のライダーと戦う時にはパワーというものは必要不可欠であるという事は理解しています。ストレートで速く走れればベストですね。」

KTM

「パワーはあるんです。昨年我々のバイクをテストしたライダー達から、そのデリバリーに関しては良いフィードバックを貰っています。現在いる2人のライダー達は、MotoGPデビュー当時からヤマハのエンジンしか知らないライダー達です。M1は素晴らしく使いやすいパワーカーブを持つことで有名なバイクです。彼らは今はV4という全く異なる特性のエンジンを使う必要があるんです。我々の側としては進歩を続けて行く必要があります。ポルとブラッドリーからのアクセルワーク、ハンドリング、トルクカーブの組み合わせに関してのフィードバックにより、11月から多くの作業が行われています。悪くはないと思いますよ。」

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(Photo courtesy of michelin)

Q

「昨年から同じ電子制御用のソフトウェアを使うことを余儀なくされています。開発に関しては今どのような感じですか?」

ヤマハ

「パフォーマンスの面で言うと、大きな改善というのは見込まれていません。一方、安全性に関してはより良くして行くことが必要です。」

HRC

「我々が100%と言える状況ではありません。いずれにせよ、99%だったとしてもさらに改善を進める必要があります。」

Ducati

「これ以上の開発は出来ません。現在は全く同じレベルにあるんです。」

スズキ

「開発が終わる事はありません。今のところは70%か80%というところでしょうか。まだ20%の改善の余地はあります。」

アプリリア

「個人的にはまだ改善の余地はあると思います。このソフトウェアの全ての可能性を知るというところからは、かなり遠いところにいます。検討の必要があるパラメーターが1000通りはあるんですよ。私の意見としては、このソフトウェアを知るには少なくとも5年はかかるでしょう。」

KTM

「このソフトウェアは大きなツールボックスです。その全てを選択する必要はありませんし、使えないものもありますし、足りないものもあります。ただ皆が同じものを使っているんです。ですから我々がやる必要があることというのは、使用可能なパラメーターを最適化してエラーを避けながら、正しい方向性で使用するということです。ソフトウェアが1つしかないとしてもこれは極めて複雑ですよ。恐らく皆が自前のソフトウェアを使うよりも複雑なんじゃないかと思います。いずれにせよ、最終的にはベストを尽くすしかありません。」


Q

「シャーシに関しては、ブリヂストンからミシュランにタイヤが変わったことで、変更をしたということはあるんでしょうか?」

ヤマハ

「開発の目的が異なるサーキットにおけるタイヤの働き、パフォーマンスを最適化するということである以上、バイクをタイヤに合わせるということは、終わりのない工程なんですよ。」

HRC

「これは終わりのない問題です。今では皆メーカーの違いというのを理解していると思います。いずれにせよ、もうライダー達はタイヤに関連するバイクの挙動について文句を言わなくなりましたね。」

Ducati

「常に我々は全ての面で前進しようとしています。ウイングレットが失われたことで、より安定しなくなったバイクを安定させる方法を見つける必要が出てきたとは言え、現状はより満足出来る状況になりました。」

スズキ

「タイヤブランドが変わったことに関しては、あまり影響がありません。MotoGPに復帰してからというもの、我々のバイクは常にコーナリングスピードに関しては高いパフォーマンスを持っています。ただコーナーリングの終わりでのパフォーマンスに関しては、少し失われている部分があります。この問題については前進がありましたが、元々タイヤの変更に関連している問題でもないんです。」

アプリリア

「良いバランスを見つけましたが、これは今まで使用していたセッティングと大差ないものです。タイヤの変更というのは、究極的にはバイクのセッティングというよりは、ライダーのフィーリングに関するものですね。」

KTM

「我々は常にミシュランと仕事をしてきました。ですから我々は新しいメーカーに対応するという必要がありませんでした。我々のバイクはミシュランタイヤで開発されたものです。昨年はミシュランがどのような方向に進んでいくのか、我々はどのような方向に作業をすれば良いのかなど、ミシュランとは密に連絡を取り合ってきました。レースで使用されるタイヤと異なるタイヤで開発を進めるというのは、常に容易だったわけではありません。ただ、最終的には現在の状況には満足しています。」

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(Photo courtesy of michelin)

Q

「技術的なレギュレーションが厳しくなる中で、違いを生み出す事は可能なのでしょうか?エンジニアとしての見解はいかがですか?」

ヤマハ

「このレギュレーションの中でもまだ色々と出来ることはあります。さらにはレギュレーションというのは、発明と同義語であることもあるんです。いずれにせよ、現状のレギュレーションには満足しています。」

HRC

「レギュレーションはエンジニア達にとっては常に挑戦です。我々に課せられた限界の中で解決策を見つけるということは我々にかかっています。これは面白い頭の体操ですね。明らかにさらなる開発に自由は欲しいですよ。でも現実的になってそこでかかるコストを考えるべきでしょう。こうした種類のレギュレーションというのは新しいメーカーには助けとなるものですから、ポジティブでもあります。」

Ducati

「まだ開発の余地はあります。レギュレーションというのは制限を課すものでありますが、このスポーツにおいて想像力と創造性が重要なんです。将来には、エアロダイナミクス上の追加パーツに関するような禁止事項が増えないことを願っています。いずれにせよ、このレベルのレースで非常に高額な運営予算に頼らずに開発が出来るのは良いことです。」

スズキ

「エンジニアとしては、シーズン中の開発凍結に関してもう少しレギュレーションを緩くして欲しいですね。これが予算をコントロールするのだとわかっていてもね。シーズンが始まるとエンジンの開発が出来ないというのは、エンジニアの仕事を助けることにはなりませんからね。 とはいえ、引き続きシーズンの最後にしっかりと準備が出来た状態という開発を続ける必要があります。そしてこれは簡単なことではないんです。 またベースの状態を引き上げるために、もう少しテストの日数は欲しいですね。これはあくまでエンジニアとしての意見であって、チームマネージャーとしての意見ではありませんけどね。」

アプリリア

「エアロダイナミクス上の付加物に関連して、こうした話は既に表面化していますよね。エンジニア達は新たな技術的な解決策を禁止される事を好みません。レギュレーションがコスト制限と新たな技術との間の妥協の産物であったとしてもね。今のフレームワークというのは悪くはないと思いますよ。制限があったとしても、革新を生み出す余地はありますから。」

KTM

「まだ開発の余地は多く残されています。最終的にはやる仕事は同じで、ルールをしっかりと研究し、どこまでたどり着けるかを決定するために限界を定義する必要があるんです。レギュレーションがエンジニア達の創造性に影響を与えているとは思いません。こうしたレギュレーションは制限以外の何物でもない。それだけです。」

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