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★KTMファクトリーライダー ブラッドリー・スミス ロングインタビュー

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Crash.netにブラッドリー・スミス選手のロングインタビューが掲載されていました。分析派のスミス選手にとって、KTMの充実したサポートのファクトリー体制の元でバイクを開発していくというのは、本当に幸せな環境なんだというのが伝わってきます。テック3での2015年と2016年の感触の違い、KTMとの比較などなどコアな話も沢山飛び出します。

サテライトではデータエンジニアをチームメイト同士で共有しているというような話も聞いたことがありますが、そうした人的なサポートという意味でもテック3の2倍とのことです。 f:id:teletele916:20161126150857p:plain (Photo courtesy of michelin)

スミスは過去6年間をテック3ヤマハで過ごしてきた。Moto2では3度表彰台を獲得しMotoGPに2013年に参戦。彼のMotoGPにおける最高位は2015年ミサノで獲得して2位だ。彼は同年ランキング6位、トップサテライトライダーとしてチャンピオンシップを終えた。スミスは毎年MotoGPで結果を向上させてきたが、2016年は怪我の影響でランキング17位となった。なおこの年はタイヤがブリヂストンからミシュランに、新たに統一ECUソフトウェアが導入されている。その後スミスはKTMのRC16をヴァレンシアとヘレスのプレシーズンテストでライディングしている。


Q

「まずは11月28日の誕生日おめでとうございます!」

ブラッドリー・スミス

「ありがとう!ちょっと年を食った感じですね(笑)」


Q

「年を取ったと感じるか、優雅さを増したと感じますか?」

ブラッドリー・スミス

「半分半分です。まだ怪我から回復している途中なんです。これで26になりました。」


Q

「今までレースをしてきていかがでしょうか?」

ブラッドリー・スミス

レースは6歳からしていますから、これで20年ですね。長い時間です。最初はもちろん週末の趣味という程度でした。最初はモトクロスでね。プロになったのは2006年からです。」


Q

「これまで努力と犠牲にしてきたものもあると思いますが、ただの仕事と感じた事はありますか?」

ブラッドリー・スミス

「実際、今は仕事以上のものだと感じます。というのもファクトリーチームからの期待をかけられているわけですから。チームの誰もがある一定のレベルのパフォーマンスを求めていますし、目標を達成する必要があるんです。そうしたプレッシャーが全て自分の肩にかかっています。普通の職場であれば何かしら目標があって、それを上回れば良い、下回ればまずいことになるわけです。ただ、そうして観点から考えると、もっとシリアスなんです。ただそれよりも重要なのは、自分が本当に愛する事をしているということ、毎日その現場にいるということです。これ以上にやりたいことはありませんし、本当にラッキーだと思います。


Q

「それでは仕事という意味で大変なこととは?」

ブラッドリー・スミス

「今のところで最大の挑戦は、バイクとチームとでもって、可能な限り最高の結果を出すということですね。すべての複雑なディティールに関しての作業がバイクを速くします。シャーシ、サスペンション、エレクトロニクス、そしてチームと共に働き、自分の最高のパフォーマンスを引き出すんです。そしてそうした全ての仕事を、日曜に結果として示すことです。実際、日曜の結果というのが、多くの人が成し遂げた事に対する最終的な完成品なんですよ。」


Q

「聞いた感じでは、MotoGPバイクのライディングをしながら開発を楽しんでいるようですね。」

ブラッドリー・スミス

「まさにその通りです。本当に技術的なこと、開発に関する事を楽しんでいます。自分のトラックでのパフォーマンスに影響を与えるクルーチーフ、エンジニア達と仕事をするのは本当に楽しいですよ。バイクを速くするためのアルゴリズムに基づいて仕事をするのは興味深いですね。もちろん有効な情報を提供するために、ライダーはある程度バイクの技術面に関して知っておく必要があると思っています。自分は常にバイクについているシステムについては、最低限基本的な事は理解するようにしているんです。そうすれば、一緒に仕事をしている人達と同じレベルで話が出来ますからね。」


「曖昧なコメントは間違った解決策を導く恐れがありますし、もう少しインプットを持ち、技術的に正確になろうとしているんですよ。そうした答えがいくつかの選択肢を得る助けとなり、テクニシャンにとっても速く解決策を見つけることが出来る助けになる事を望んでいるんです。これは自分がこの仕事を愛している部分でもあって、KTMが今年自分にオファーをしてくれた時に注目した部分でもあります。こういった技術的な挑戦が目の前に現れたわけですが、自分はこうした機会を長いこと待っていたんです。基本的に白紙のプロジェクトと一緒に作業を開始出来るのは、本当にエキサイティングですよ。」


Q

「KTMとは2年契約ですよね?」

ブラッドリー・スミス

「2017年と2018年の2年契約です。」


Q

「1年目は開発、2年目はレースというような感覚がありますか?」

ブラッドリー・スミス

「なんとなくそう言えますが、ただそうした見方はしていません。2017年は結果は求めず、2018年からゲームが始まりだという考え方はしたくないんです。出来る限りすぐにバイクの戦闘力を発揮したいですね。毎日全力でバイクに向き合っているんです。もし開幕から6戦でバイクが競争力を持てば最高ですけど、2018年の前に戦闘力を発揮するのでも構いません。速いほうがいいですけどね。MotoGPでは誰も歩みを止めませんし、追い付くにはかなりかかると思います。初年度は忙しいでしょうね。」


Q

「データに関して核心的な部分の作業に携わりたいですか?」

ブラッドリー・スミス

「ええ本当に。エンジニア達と一緒にやるのが得意なんです。サスペンション、シャーシ、データに関してもね。生データからグラフを解釈したり、ストラテジーの提案などには関わるでしょう。数字を有効なパフォーマンスに関する提案に翻訳するという意味では、ライダーはデータエンジニアを助けられると思います。


データエンジニアにとってはグラフの中の線かもしれませんが、ライダーからの情報で、その線をトラック上で感じられるフィーリングに翻訳することが出来るんです。データエンジニアに、このグラフの線がトラック上でどのように感じられるかというのを教えるのはライダーの仕事です。そして時間があるテストの中でこれをやっておけば、時間が無いレースの中で時間をかけずにこれが出来るようになります。ただ、正直なところ時々自分があまりに深く関わり過ぎてしまうこともあります。ですから、ツナギを来て外に出て、チームに仕事をさせたほうが良いのかもしれませんね。ただ、結局そうした観点で何かしらもたらすことも出来るんです。」


Q

「2016年を迎える前は上向きの軌道を描いていましたが、昨年は違いました。技術的な変更による影響が大きかったのでしょうか?」

ブラッドリー・スミス

「変更は別として何も上手くいかないシーズンでした。アルゼンチンでは日曜にトラックに合わないタイヤが届き、オースティンではカルの転倒に気を取られて転倒しました。それに今年はいつもよりバイクの問題が多かったんです。今まで無かったような種類の問題でした。 いろいろなことがあって、シーズン中盤に立て直そうとしている時に怪我をしてしまい、3戦欠場する事になりました。」


「3年前はその後の2年に向けて正しい方向に進むことが出来たと思います。そして2015年は絵に描いたように完璧な年でした。全てがうまくいき、2016年は3年間で不運だった1年ということですね。レースの世界で自分の思うとおりに物事が進まない時は、得てしてそういうものなんです。それにたった1つというだけではなくて、問題が重なっていくんですよ。自分の性格はそうした事で出来上がっているんです。」


Q

「サテライトヤマハにとっては、技術的な変更が他のバイクよりも影響したと思いますか?」

ブラッドリー・スミス

「ヤマハは非常に開発がしっかりとされたバイクだと思います。恐らく他のバイクよりもブリヂストンに特化していたと言えるかもしれません。ですからパッケージ全体が2015年に完璧に働いていて、そのせいで変化による影響も大きかったのではと思います。そうした高いレベルでバランスが取れていたバイクに乗っていたわけで、それからミシュランを使おうとしたわけです。2015年の素晴らしいフィーリングの流れから来たわけですが、ミシュランでは同じフィーリングが得られませんでした。他のライダーよりも影響を受けていたのかもしれません。」


「2015年にこうした素晴らしいフィーリング得られていなければ、2016年のバイクに関してもう少し理解が出来たかもしれません。ただ自分は前年のフィーリングを求めていて、結局それはそこにはなかったんです。自分が何をしても関係なかったんです。何をしてもそのフィーリングが得られず、それが自分を少し落ち込ませていたんです。外側に見えていたのは、自分がお話した妙な不運と入り混じったものだったんです。」


Q

「チームがバイクに無頓着だったと思いますか?2015年のパフォーマンスを見て、2016年の準備が足りなかったとか?」

ブラッドリー・スミス

「無頓着だったとは言いません。むしろ自分が昔のフィーリングを追い求めていたのがあって、ミシュランの乗り方を理解するのと合わせて色々と問題が出てきたんです。自分はチームに昨年のスウィートスポットを探すように動いてもらったんですが、それは存在しなかったんです。いかにミシュランタイヤが機能するかという事を受け止めずに、このパッケージには存在しないものを追い求めていたんです。


「ブリヂストンの事は良く理解していましたし、ミシュランでは良いラップタイムが異なる方法で訪れるということも理解しました。そしていかにコーナリングスピードを保つかということもミシュランでは大きく異なりますし、フロントも同じように使えません。ですからそれを理解するのに長いことかかりました。今はより良く理解していると思います。恐らく色々と苦戦したこと、要点を外していたことは、来年KTMで働くにあたって自分を良い位置に持っていってくれたと思います。そういう意味ではポジティブに考えていますよ。」


Q

「ファクトリーの関与、リソースの投入ということに関して、ホンダとアプリリアが両端にあって、スズキがその中間のどこかだとすると、KTMはどうでしょうか?

ブラッドリー・スミス

正直なところ、ホンダと同様にトップですね。彼らはこのプロジェクトを本当に真剣に捉えています。プロジェクトに関わっている人間の数も多いですし、2つのテストライダーのチームを今年走らせていて、4名のライダーで数多くのテストを行っていました。彼らが自分とポル、そしてテストライダーにミカを2017年に採用したのは、その強力なコミットメントの現れでしょう。彼らのコミットメントはホンダ、ヤマハ、Ducatiのようだと言えるでしょう。」


「唯一の問題は経験です。グループとしてもチームとしても、彼らはMotoGPをフルシーズン戦った経験がありません。アルゼンチンやオースティンに行ったことはありませんし、これらが自分達にとっても挑戦ですね。あるトラックではライバルに20年の経験があるというのは手強いですよ。でもコミットメントとマンパワーに関しては、これ以上は求められませんね。」


Q

「ガレージは全く新しい顔ぶれなのか、誰か連れてきたんでしょうか?」

ブラッドリー・スミス

チームはKTMによって作られたものです。多くの経験がありますからね。MotoGPだけでなく、Moto3、AMAスーパークロスなどもありますから。ですから彼らがチームを作ると伝えて来た時、嬉しかったですね。自分はチーム編成にあまり関わっていませんが、その面々をみれば彼らがいかに深い経験を持っているか、どんな人が参加しているかというのは驚くべきものです。レプソルホンダで勝利したことがある人達もいますし、自分は彼らをガッカリさせたくないんです。彼らに見合う結果を出したいと思います。それに自分はクルーチーフともテック3でのMoto2時代以前に働いていたことがありますし、その時良いバイクを作っていましたから。」


Q

「関わっているクルーの数は?」

ブラッドリー・スミス

昔の2倍ですね。テック3で6人だったとしたら12人いるわけで、これは本当に凄いことですよ。ただ、これは良い点と悪い点があって、人数が多ければ良い結果が出るわけでもないんです。ただ本当に細かい内容が違いを生み出すわけなので、そういう意味ではいろいろな気付きが得られます。チームのサイズは達成すべき物事のプレッシャーが大きくなりますが、今の段階では出来るだけ多くの人手が必要なんです。」


Q

「新しいチーム環境でコミュニケーションが必要なようですね。」

ブラッドリー・スミス

「新しいチームで働き始めたら、常に新しい人間関係に慣れる必要があります。すべてのライダーが物事を違う形で伝えますから、全ての環境がしっくりくるのには6ヶ月程度はかかるでしょう。クルーチーフと仕事をしたことがあるというのが助けになります。チームは皆英語ですし、自分も26ですから、周りの人の手助けをするくらいの自信はあります。6ヶ月が速く過ぎると良いですね。」


Q

Red Bullがスポンサーについているということは、チームの資金も豊富なんでしょうか?

ブラッドリー・スミス

ええ。しっかりとした予算があるでしょう。サポートに関しては大手メーカーと同様だと思います。何か必要になった時は、この予算が助けになってくれると思います。もっとテスト必要であったり、何かを作ったり、開発したりが必要であれば、それが実現するものだと周りにもわかるでしょう。」


Q

「KTMに乗った後で、あなたが予想していたよりも開発が必要なのか、そうでないのかどうでしょう?」

ブラッドリー・スミス

「自分が予想していたよりも快適だと言えます。シッティングポジション、ハンドルバーの位置など、手や足の裏から感じるフィーリングに関してはすぐに快適だと感じました。フィードバックに曖昧さがあると怖いんですが、バイクがしっかりと話しかけてきてくれます。この豊富なフィードバックは、KTMのスチールシャーシによるものだと思いますね。それに彼らが1年で成し遂げられた事にも驚きました。バイクのことが理解しやすいので、何が必要なのかもわかりやすいんです。自分は本当に良く開発されたヤマハのM1から乗り換えましたが、これは比較の物差しとして非常に有効です。全体的に今の自分達の状況には満足です。」


Q

「改善が必要な部分についてもう少し詳しく教えてもらえますか?」

ブラッドリー・スミス

「正直なところ、どこと言える明確な部分はないんです。すべてのエリアをより良くするという感じです。もしどこかの箇所だけが目立っているのであれば作業は簡単なんですが、そういうわけではないんですよね。」


Q

「なぜチームはWPサスペンションを使用するのでしょうか?」

ブラッドリー・スミス

「KTMの本部はWPの横にあって、彼らは実に長いこと関係を持っていて、いろいろなプロジェクトで成功を収めています。彼らはMoto3をブラッド・ビンダーと共に勝利し、過去数年ザルコと共にMoto2でも勝利しています。MotoGPにしても、彼らにとってそこまで大きな挑戦ではないでしょう。WPに関して明確なことは、自分達がWPを唯一使用するチームだということで、彼らのリソースを全てKTMが使えることになり、彼らはショックやフォークの開発を自分達のためだけにしてくれるわけです。自分達に利用可能なものはエンドレスで、もし自分達が彼らから何か必要だとしたらそれを得ることが出来ますし、常に最新のものが使えるわけです。サテライトチームでは与えられたものでなんとかするしかありませんでしたが、WPでは自分達が最優先されます。」


Q

「ブレーキはブレンボですか?」

ブラッドリー・スミス

「そうです。」


Q

「エンジンは十分な出力があるんでしょうか?」

ブラッドリー・スミス

「まず最初にエンジンに関して気づいたのはパワーではなくて、パワー特性なんです。KTMではV4エンジンですが、現状はどのようにそのパワーを使うかなんです。ただ非常に多くのパワーがあるようには感じます。パワーに関しては向上させることが出来るという部分ではないんです。それよりもむしろ、シャーシとエレクトロニックの調整とともに効率よく使うという部分なんです。現在取り組んでいるのはこの部分で、まだしっかりと理解出来ていません。トップスピードに関しては非常に強力だと言えるでしょう。250、260馬力をいかに有効に使うのかという部分ですね。


Q

「スクリーマーエンジンの音は不快に感じますか?」

ブラッドリー・スミス

「初日のテストの後にエンジン音が自分を混乱させると言ったと思いますけど、エンジンに慣れるという意味でですよ。 長年同じノイズ、ピッチのバイクに親しんでいましたから、違う音のバイクに乗って困惑したということです。ただすぐに慣れました。未だに驚かされることもありますけどね。エンジンサウンドというのは、時には自分が思っているより速く走っていると思わせることがあるんです。ただ問題なく慣れることが出来ていますよ。」


Q

「プレシーズンテストでは、明らかにあなたはラップタイムを求めるのではなく、開発をメインに走っているようでした。トップからは2秒ほど遅いタイムでした。もしラップタイムを出そうと思えば速く走れるということですか?」

ブラッドリー・スミス

「自分の働き方からしてNoと言います。有効なアイディアを得るには出来る限り速く走らないといけないんです。タイムが遅かった理由として、2回以上同じセッティングのバイクで走らなかったというのもあるかもしれません。色々な事を試していて、いろいろな事を変えていましたから。バイクに関しては毎回違う内容があって学習が必要でした。ただ、毎回ベストを尽くして走っていましたよ。今見えている自分達のタイムの限界というのは、テストのプログラムに与えられた限界なんだと思います。」


Q

「来年に関しては特定の狙いや期待などはありますか?」

ブラッドリー・スミス

今のところは最終テストがどうなるか、そして自分達がチームをいかに助け、正しい方向に導けるかによりますね。ミカ・カリオを見れば、彼のラップタイムはバレンシアでホルへから2.6秒遅く、ポルのタイムは2秒以下といったところでしょう。ですから自分達はトップから2〜2.5秒差という状態で、あと2秒ほどでゴールが見えるわけです。」


Q

「最後にヘレスでのジョナサン・レイのタイムですが、最も簡単にタイムを出すには、カワサキのディーラーに行ってZX-10Rを購入することだと思いますか?」

ブラッドリー・スミス

「う~ん。多分違うんじゃないですか。それよりもピレリを売っているお店に行って、同じタイヤを買うことのほうが興味深いでしょう。冷えたコンディションでは、ピレリとミシュランは同じレベルで機能するということですけど、ジョナサン・レイがプロダクションベースのバイクで成し遂げたことは本当に凄いですね。もし2月に彼をマレーシアに招いたとしたら、結果は少し違ってくるんじゃないでしょうか。」


Q

「ブラッドリー、今日はありがとう。」

ブラッドリー・スミス

「いいんですよ。」

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