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★MotoGP2017 ウイングレット禁止後のエアロダイナミクスの答えは「2重構造のフェアリング」

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来シーズンからMotoGPではカウルに付けられたウイング類のエアロダイナミクスパーツは一切禁止となり、フロントアクスル軸の延長線上から、カウルがどの程度までの幅ではみ出していて良いかなど細かく規定があり、ウイングレットを模した形状のカウルも実質的に禁止するルールとなっています。しかし、ウイングレットと同等の効果を2重構造のフェアリングで生み出そうとする動き、カウリング内部に可変フラップを設けるなどの動きがあるようです。 f:id:teletele916:20161006233128j:plain

(Photo Courtesy of Michelin)

GPコミッションの決定は、ウイング、スポイラー、ウイングレットと、いかなる名称であってもそういった類のパーツはMotoGPで禁止するというものだった。この決定はエンジニア達がこれらのエアロダイナミクス上の付加物が、トラックにおけるバイクのパフォーマンスを向上させると発見した後だった。


レースエンジニアを知る身として、彼らが得たアドバンテージを簡単に諦めるとは思えない。ウイングはそれが本当かどうかわからない「危険だ」という理由で禁止された。しかしエンジニア達は違う方法で同じ効果を引き出すだろう。4を得るために、今までやっていた方法は2+2=4だとすると、3+1でも1+3でも、そのやり方は無数にあるわけだ。そして全く同じ事をあるメーカーは既に開始しているわけだ。今わかっているのは1メーカーだが、同様のウイングレット禁止の迂回策を4分の3のメーカーがとるだろう。


今わかっているウイングレットのMotoGPにおけるメリットは2つ。ウイリーの減少とフロントホイールをしっかりと路面に押しつけるという効果だ。同じことのように思えるが、そうではない。


ウイリーの減少については、フロントの接地圧が希薄で、路面とのコンタクトを失いそうな時のアクセルオンで、エレクトロニクスがエンジンパワーをカットする事を低減するのに役立つ。これはウイングレットが生み出すダウンフォースによるもの。


2つ目の効果については、ウイングレットはフロントのアクスル軸に路面とタイヤをしっかりと接地させるだけの荷重を生み出す。これによって、ライダーはフロントホイールが常に路面に押し付けられているという感覚を得ることが出来る。エンジニアとしてこの内容についてはコンサルタントを務めたこともあるが、こうして生み出される荷重についてはサイズやレイク角度といったパラメーターを持っていれば、計測は容易だ。


スポイラーの角度が水平に近いかということが関係していて、スピードにもよってくる。つまり、スピードが高ければ荷重も大きくかかるということだ。ウイングの傾きによる効果は、コーナーの出口やストレートなどスピードが増すほどに増大する。


そして2つ目の効果と関連するものとして3つ目の効果があり、ブレーキングの最中にフロントのアクスルが安定するという効果がある。フロントのアクスルにより大きな荷重がかかると、高速でのブレーキングで大きな助けとなる。フロントホイールのグリップを失う傾向が薄まるわけだ。グリップが高まれば当然ブレーキングのパフォーマンスも向上する。


来シーズンからウイングレットが禁止されるが、理論上はこうしたメリットは失われる。それで一番最初の疑問である「本当にエンジニア達は、禁止されたからといってこうしたメリットを諦めるのか?」という疑問に戻るわけだが、明らかに答えは「ノー」だ。


ウイングを作らずに、ウイングレットによって得られていた効果を生み出すのだろうか?私はジャーナリストなので、これを説明することは出来ない。しかしあるメーカーが2重のフェアリングを試しているというのは知っている。2重構造のフェアリングだ!2枚のフェアリングの内側を流れる風によって、ウイングレットと同等の効果を生み出そうということだ。


この2枚のフェアリングの間にはいくつものディフレクターがあり、バイクの路面に対する角度によって理想的な効果を生み出そうというもの。新しいルールはカウルの外側に取り付けられたウイング形状の物を禁止しているから、じゃあ内側に入れてしまおうという考えだ。こうすれば、そもそも禁止の理由となった、他のライダーへの危険性もない。


これは実際にあるメーカーから聞いた話で、彼らは既にこうした作業を開始しているとのこと。今のところテストでは、予想していなかった問題に直面しているようだ。それはエンジンのオーバーヒートだ。ただ、こうした結果は付随的なもので、解決は容易だ。もし何かこの開発を止めるものがあれば、また別の状況が生まれるだろう。


素人の視点で考えると、この2重構造のフェアリングの内部にディフレクターを持つというのは、F1のストリームラインボディのアプローチに似ていると感じる。バイクに取り付けられたウイングというのは、より基本的なものと言えるだろう。そのため、これでより安価に済んでいるわけだ。エアロダイナミクスに際限のない開発にかかるコストというのは、ウイングに関する議論の中でも語られてきた内容だ。しかし、メーカーはより安全な代替案として、さらに複雑で、そしてより金がかかる方向で作業をしているわけだ。


もしこれらカウルの内側にあるディフレクターが、航空機のフラップのようにカウルの内側でコーナーエントリーを助けるために可変式だったらどうだろう?そんな未来が見える。HRCの中本氏にこの問題について尋ねたところ、彼は「稼働するエアロダイナミックパーツはルールによって禁止されている」と語っていた。


そして確かにFIMワールドチャンピオンシップのレギュレーションのパラグラフの中にはウイングに関する記述があり、可変するエアロダイナミクスデバイスは禁止されているとある。私がこれを読んだ時、これはウイングに関するものだと思ったが、中本の話によると、これはこうしたパーツ全般に関するものだという。


この問題についてDucatiのスポーティングディレクターのダヴィデ・タルドッツィは「F1と同様、我々もルールは注視しています。全ての単語が重要です。というのも”禁止”と謳われていないものは、すべて許可されるということですからね。」と語っている。

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