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★MotoGP2016 なぜペドロサはミサノで速かったのか?

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マン島TTで優勝経験もあるマット・オクスレイさんによる、ミサノGPのペドロサ選手の勝利要因の詳細な分析記事です。高い路面温度とミシュランのケーシング剛性の高い新型フロントタイヤが肝だったということですが、このタイヤをブルノ、さらにその先のトラックでも使用出来るのか?というのは大きなポイントになりそうです。 f:id:teletele916:20160914005058j:plain 私が初めてペドロサにインタビューを行ったのは2002年。私は1985年生まれ、17歳の彼にどんな音楽が好きなのか?を尋ねていた。1980年台のポップミュージックと彼は答えた。彼のメンターであるアルベルト・プーチはどんな音楽を聞くべきかも教えているのか。と私は驚いた。であるからして、私は新時代のヒーローのThe Jam(知らない方のために説明しておくと非常に素晴らしいバンドだ。)のThat’s Entertainmentを彼が聞いた事があるかどうかは知らない。この歌はシンプルに人生の素晴らしさを歌ったものだ。”女の子と抱き合って古臭い香水の匂いを嗅ぐ。テレビを見ながら週末に思いを馳せる。暑い夏の日、そしてベトベトした黒い路面”


ペドロサはこのベトベトした黒い路面を何よりも愛していたであろう。それなしには彼は勝てなかった。日曜の勝利は、彼にとってミシュランタイヤでは初めての勝利であると同時に、2016年に入って3度目の表彰台だった。他の表彰台は恐ろしく路面が暑かったヘレスとカタルーニャだ。今年路面温度が40℃を超えたサーキットは4つしかない。ヘレス、カタルーニャ、ミサノ、ムジェロだ。ムジェロではペドロサは4位を獲得。表彰台からは0.2秒以下の差だった。


ペドロサの直面する困難はわかりやすい。彼は160cm、51kgという体格なのだ。タイヤ1本でレースをする時代においては、1つのタイヤが全ての状況にフィットする必要があるため。ペドロサの小柄な体は大きなハンディキャップだ。多くの彼のライバルは、彼がもう少し背が高く体重が重ければ、少なくとも1度はMotoGPのタイトルを獲得していただろうと考えている。日が照りつけない限りは、彼はタイヤに必要な熱を生み出すには軽すぎるのだ。


13度世界タイトルを獲得したアンヘル・ニエトは、ペドロサはまるで天使のようなライディングをすると語る。けしてラインを外すこと無く、1つのコーナーから次のコーナーへと流れるように素晴らしい動きをする。ハンドルバーが異常な振動を起こす事はほぼない。他に選択肢が無いと言え、彼は完全にマシンと一体で、彼がMotoGPバイクに乗る様子は、天使がスカッドミサイルに括り付けられているようだ。


ペドロサはヴァレンティーノ・ロッシや他のライダーのようにはライディング出来ない。これはコーナーを走る中で、体の荷重を前後左右にあまり動かす事が出来ないためだ。また彼は手足の筋力でレプソルホンダを服従させるという事も出来ない。バイクを慎重に正しい方向に導きながら、バイクなりに走らせるという、自分自身のユニークなライディングスタイルを開発せざるを得なかったのだ。これが彼がMotoGPバイクを操縦する唯一の方法だ。しかしこのテクニックは彼が抱えるタイヤの温度という問題を悪化させる。彼のライディングはスムーズ過ぎて、タイヤを温めるという作業をあまり行わないのだ。


ホルヘ・ロレンゾも同様にガラスのようなスムーズさのライディングスタイルだ。彼も今年はトラックの温度が低い場合に同じ問題を抱えている。ブリヂストン時代も、ペドロサはタイヤに十分な熱を与えられないという問題を抱えていた。彼が数年前にル・マンの最初のシケインで転倒した事を思い出す。転倒についてなぜかと尋ねると、彼はストレートでタイヤが冷えすぎてしまうことが原因だと語った。


ミシュランタイヤは歴史的にブリヂストンに比べて柔らかいケーシングのタイヤであり、柔軟性が高く熱を生み出しやすいことから、多くの人が彼はミシュランタイヤになれば良い結果を残せると期待していた。ミシュランのフロントタイヤは冬期テストではあまり良い結果を残さなかった。彼のスムーズで流れるようなスタイルは、フロントタイヤに与えるストレスが少なく、そのためミシュランに合うだろうと思われていた。


実際、ペドロサは先週の日曜までミシュランタイヤで苦戦している。今年は彼にとってルーキーイヤーの2001年、125cc時代以降最悪の年と言える。その年以降、125cc、250cc、MotoGPクラスで彼は年に1度は優勝している。


今シーズン、彼は路面温度が低いトラックでは非常に苦戦している。温度が下がると、彼の調子もまた下がるのだ。最も記憶に残ったのは、レッドブルリンクにおいて金曜の午前中の練習走行中にストレートで転倒したことだろう。アスファルトは僅か14℃という状態で、彼は最終コーナーのためにブレーキングを行ったが、彼がコーナリングの事を考えるよりも前にフロントタイヤは一瞬にして滑ったのだった。


こうした出来事の後に自信を回復するのは並大抵のことではない。しかしペドロサはこうした状況から立ち上がることに慣れている。埃をはらい、自分の仕事に戻るのだ。彼は恐らくMotoGPグリッドの中で最も怪我をしている選手だろう。骨折によって125ccと250cc、MotoGPのタイトルを少なくとも1度は失っている。しかし、少しづつHRCはRC213Vがミシュランタイヤと上手くいくセットアップを作り出している。全く暑いとは言えなかったシルバーストーンにおいて、彼はついにフロントに関する自信を得、トップ集団で2位をかけて争った。


ミサノでのRC213Vが抱える主な問題は(元々はブリヂストンのフロントタイヤの性能に頼って恐ろしく深くまでブレーキングしていく中でわかったものだが)、フロントタイヤの温度を上げすぎてしまうということだ。その為ミシュランは、よりケーシング剛性が高く、多くのタイトターンでの激しいブレーキングで生み出される熱を低減するために薄いトレッドを採用した2種類のフロントタイヤを持ちこんだのだ。


多くのライダーはこの剛性の高いタイヤのほうがコーナー進入で安定していると考えたが、ペドロサのチームメイトのマルク・マルケスは、このタイヤがソフトとミディアムだけであったために、このタイヤではレースが出来なかった。彼の恐ろしくアグレッシブなライディングスタイルでは、どちらのタイヤもレースが終わるまでに”終わってしまう”ためだった。そのためマルケスは古いタイプのハードタイヤでレースをすることとなり、彼が必要としていたコーナーエントリーでのグリップを得られなかったのだ。


ペドロサは最も柔らかいフロントタイヤを選択。彼の軽い体重と優しいライディングスタイルが武器となり、このグリップの高いタイヤを履くことが出来たトップライダーは彼だけだったのだ。そして彼は他のライダーがまるで止まっているかのような勢いのレースを展開した。疑いの余地なく、ミサノでの勝利は彼の29回のMotoGPクラスでの優勝の中で最高のものだった。というのも今まで優勝の中では、最も後ろのグリッドから彼は優勝を遂げたのだ。彼は1周目に6位となり、マルケス、アンドレア・ドヴィツィオーゾ、マーヴェリック・ビニャーレス、ロレンゾ、そして最後にヴァレンティーノ・ロッシをかわした。


ロレンゾのように、ペドロサは通常レースの序盤にフロントに立ち、差を広げて勝利する。というのも彼は他のライバルとのバトルよりもクリアなトラックを好むのだ。今回は彼は誰よりもコーナー進入速度が高く、他の選手をらくらくと追い抜くことが出来た。新しいフロントタイヤは、特に彼にとっては素晴らしい働きをした。というのも剛性の高いケーシングは、ライダーがブレーキングをしてコーナーに進入する中で、全ての荷重がフロントタイヤに集中する際にタイヤのよれが少ないのだ。ということは、タイヤはより理想的な形を保っているということでバイクが良く曲がり、自分の体重や手足を使ってマシンを曲げるという事が出来ないペドロサには、これが特に重要なのだ。


ダニは残りの5戦でさらに優勝を重ねることを期待しているだろう。しかしそうはならないかもしれない。ミシュランの新しいケーシングのフロントタイヤは、ミサノが要求する特殊な条件に合うように開発されたものだ。そのため、他のレースにもこのタイヤが持ち込まれるかもしれないし、そうでないかもしれない。ペドロサが家で同じタイヤが使えるようにと祈る中、ミシュランのエンジニアは、アラゴン、そしてその先のラウンドのタイヤのアロケーション(割り当て)について考えているところだろう。

by Mat Oxley

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