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★MotoGP2016 HRC中本氏が語る「ウイングレットのマイナス点」

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HRC副社長の中本さんが、ウイングレットのマイナス点についてヒントを与えてくれています。なぜペドロサ選手のバイクにウイングレットがついていないのか?というのは、実は既に半分答えになっているということですね。ウイングレットの効果を最大限に使用するDucatiが、来年どのようなバイクを作ってくるのかも興味深いですね。 f:id:teletele916:20160917200822p:plain ダニ・ペドロサの圧倒的なミサノでの勝利の後、かなりの数の"識者"(※自称専門家を揶揄した言葉)が彼のバイクにウイングレットがついていなかった事が、彼のパフォーマンスの鍵だと語った。それが本当であるなら申し訳ないが、彼の勝利はウイングレットが無かったからではない。ザクセンリンク、シルバーストーン、ブルノでも、彼のバイクにはウイングがついていなかった。ペドロサのマシンに小さなウイングがついたのはレッドブルリンクのみだったのだ。


シルバーストーンでの日曜の朝、レースまで数分という時に、私は丁度、先程聞いた面白い話の事(※後述のDucatiの話)を考えながらパドックを歩いていた。その時偶然HRCの副社長である中本氏に出会った。彼は私が丁度考えていたことを助けてくれるであろう人であった。話題というのは、エアロダイナミクスが、今後禁止となるウイングレットの後を追うという事に関してだった。ウイングレットはMotoGPバイクのパフォーマンスにポジティブな影響を及ぼしており、ファクトリーのエンジニアが、そのエアロダイナミクス上でのメリットを簡単に諦めるとは思えなかった。こうした人達と20年近く働いてきたお陰で、いかにレースエンジニアが考えるのか私はわかっていた。


私はこの考えについて中本に聞いてみたところ、彼は逆に「なんでダニはウイングレットを彼のバイクで使わないんだと思う?」と聞いてきた。


「わかりません。なぜですか?」と私は答えた。


「君が知らない事を教えてあげよう。20年前ホンダはエアロダイナミクスの上で完璧と言えるバイクを作った。そのバイクで鈴鹿を走ったところ、その当時のレースバイクよりも1秒以上速く走ったんだ。1秒だよ。」と中本。


「1秒ですか?!それは凄い!」恐らく私の目はまんまるだったろう。「それでそのバイクでレースはしたんですか?そのバイクを見たことも聞いた事もありませんが。」と私。


「これはホンダのエンジニア以外目にしたものはいない。この車両はレースには出場していない。なぜならレースが出来るようなバイクではなかったんだ。」と彼は語る。


「なぜ?技術的な問題ですか?」


「いや、1周走っただけでテストライダーの体力がゼロになってしまったんだ。そのバイクは乗るのが尋常じゃないほど大変だった。確かにそのバイクはとんでもなく速く、当時の我々のバイクよりも1秒も速かった。ただそのバイクで2周以上走れたライダーはいなかった。そして、そのバイクは私が今まで見た中で最も醜いバイクだった(笑) 」


この話を分析すると、中本は2つの事を話している。

1. エアロダイナミクス戦争になれば、ホンダはどのメーカーよりもその戦いに対して準備が出来ている。知識があり、そして当然、金もあるのだ。

2. バイクのエアロダイナミクスを突き詰めていくと、バイクを速く走らえるのに体力的に多くを要求される。であるからして、中本はなぜペドロサがウイングレットを使わないのか?という事に関して、既に理由を述べている。つまり単純に体の強さが足りないのだ。ペドロサは160cmで50kgと小柄なため、それで数多くのアドバンテージを得ているが、バイクにスピードが乗っている時に車体を曲げるという事に関しては不利だ。


驚いた事に、中本が教えてくれた内容は、アンドレア・イアンノーネとアンドレア・ドヴィヅィオーソが、トラック上でデスモセディチGPにボロボロにされたことで証明された。(※両選手ともに腕上がりに苦しんだ。)シルバーストーンのレースの後、両選手は彼らのバイクをライディングする事は腕に大きな負担がかかり、終盤はまともにバイクをコントロールできなかったと語った。イアンノーネは転倒でレースを終え、ドヴィヅィオーソはピットに帰りたかったと語っており、最後の3周は悪夢だったと語る。

アンドレア・ドヴィヅィオーソ

「右腕の前腕に問題が出てきたんです。その後からはレースは完全に試練となりました。今日は良い結果が得られるはずだったのにチームには申し訳ないです。ただハードにプッシュが出来なかっただけです。何度も転倒しそうになりました。バイクをコントロール下に置いておくのが難しくて、6位が精一杯でした。」

アンドレア・イアンノーネ

「今の乗り方は非常に疲れるんです。MotoGPでは自分の力を25周全てで使うというのは難しいですね。疲れる事無く速く走れるバイクが必要で、これが自分達の主な問題です。解決策を見つけようとしてきましたが、このバイクは向きを変えるという事に関しては非常に難しくて、あまりにも重いんですよ。」


シルバーストーンまでは、これはピットボックス内の秘密だった。しかし昨年からこの問題があることはわかっていた。「ドヴィヅィオーソやイアンノーネがポールポジションを獲得出来ても、優勝出来ないのはなんでだと思う?」とDucatiガレージの中の人間がミサノで話していた。


もしこれが本当なら、なぜ2台のDucatiはオーストリアを圧倒出来たのか?オーストリアでの成功は、レッドブル・リンクの作りのシンプルさにある。8つのコーナーは基本的にDucatiにとっては理想的なストレートで繋がっており、ペドロサのバイクにもホンダはウイングレットを装着するに至った。ただシルバーストーンは対象的だった。コーナーの数は倍で、多くを要求する向き変えが必要だ。そしてこれらは2人のアンドレアにとっては拷問だった。


この記事のそもそもの疑問点に戻ろう。ダニ・ペドロサのRC213Vにウイングレットが無かった事とミサノの優勝には何の関連性もない。彼の優勝の理由はユニークなタイヤチョイスにあり、この選択が小柄な彼にライディングの自信を与えたのだ。(※管理人注 今までは体重が軽いせいで、タイヤのグリップを発生させるための荷重をタイヤに与える事が難しかった。また、この日の路面温度43℃も大きな助けとなったはず。)技術的な部分は確かに重要であるが、一番の違いを生み出すのはライダーの頭脳なのだ。

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