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★いかにマルケスはCOTAを自分のものとしたのか?

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Cycle Worldにマルケス選手のスタイルとサーキット・オブ・ジ・アメリカ(COTA)についての興味深い考察がありましたのでご紹介。MotoGPクラスデビューから4連勝という破竹の勢いでCOTAで勝ち続けるマルケス選手のスタイルがいかにこのトラックに合っているのかという事もそうですが、激しいライディングの裏に隠された綿密なタイヤ管理も伺い知ることが出来ます。

★いかにマルケスはCOTAを自分のものとしたのか?

マルク・マルケスはサーキット・オブ・ジ・アメリカ(COTA)で、Ducatiが約1.2kmのストレートでF1マシンよりも速い344.4km/hを記録したにも関わらず4連勝した。またホルヘ・ロレンゾは予選においてマルケスから0.069秒差という状況であった。

★いかにマルケスはCOTAを自分のものとしたのか?

マルケスはまず2013年に勝利、これは彼にとって初めてのMotoGP優勝であると同時に始めてのCOTAでの優勝であった。このクラスで7年走っているペドロサ(2位)、そして5年の経験があるロレンゾ(3位)を従えてのゴールだった。2014年にホンダは彼のスタイルに完璧に合致。彼は再び勝利しレースタイムを9秒ほど縮めた。誰も彼に近づけないという状況であった。 2015年にホンダはパワーを上げ、ドライビリティが低下。マルケスは新しいライディング方法の模索を強いられた。しかし彼は再び勝利。レースタイムは13.7秒も遅くなったのに関わららずだ。


そして今年。滑りやすい路面、ミシュランタイヤへの変更が進む中で、ホンダの2016年型エンジンはトップエンドのパワーを捨て加速の滑らかさを得る。マルケスはまたしてもライバルを寄せ付けず、2位のロレンゾに6秒の差をつけて優勝。(ロレンゾは20ポイントの獲得に喜んでいた。)レースタイムは興味深いことに2015年よりも10.8秒遅くなった。口だけの評論家は言う。「マルケスは単純にこのトラックが好きなんだよ。でもそれを諸手を上げて歓迎は出来ない。他の選手はフロントを失ったりする中、マルケスはなぜか上手くライディングする道を見つけている。なぜなんだろう?なぜ他の連中は出来ないんだ?」

★いかにマルケスはCOTAを自分のものとしたのか?

まず第一に、このトラック、マルケスの自然体のスタイル、ホンダのバイクはマッチしている。マルケスはブレーキングをしながら出来るかぎり向きを変え、コーナーの出口ではタイヤの痕が路面に残るほど激しくアクセルを開けて加速する。彼のブレーキがいかに遅くハードであるかは知っての通りだ。リアホイールが浮いている事も多い。バイクをコーナーのインに向けるとリアが外側に振り出される形になるため、バイクは自然とスライドをするような形になる。コーナーの頂点にバイクが差し掛かりリーンアングルが増加する。ここで彼は最も向きを変える形になる。


問題はこのスタイルは小さいコーナーに最も合っているということだ。COTAの観戦タワーの近くの大きな180°コーナーなどではない。(マルケスはここでタイムを失っていると語る)また、ヨーロッパのトラックのように「流れるような」と形容されるようなコーナーにも合ったスタイルではない。


しかしCOTAは小さいコーナーがターン12からターン15まで続いており、その間を短いストレートが繋いでいる。またCOTAはF1でダウンフォース勝負となるターン6からターン9という連続したコーナーがある。またサーキットの外周部分にあるターン1、ターン11、ターン20も小さいコーナーだ。これはマルケスのスタイルに完璧にフィットする。彼はこうした小さいコーナーの度にタイムを縮めている中、他の選手はタイムを失っているのだ。


トップライダーのスタイルの違いを良く理解するために、私はテック3ヤマハのブラッドリー・スミスと話をした。彼はヤマハを「非常に長く非常に安定したバイク」と形容した。そうして安定性を見つけるためにスプリングを入れ、ジオメトリーを当てはめるのだそうだ。

★いかにマルケスはCOTAを自分のものとしたのか?

ロングホイールベースはコーナースピードがリスクとなる中で、ホイールスピンをキャッチするのにライダーにより多くの時間を与えてくれる。低い車体はライダーの減速や加速による重量の移動のスピードを遅くし、車体はストッピーやウイリーになる事無くタイヤをコンスタントに路面に押し付け続ける。 スミスはタイヤを暴れさせない為にバイクを徐々に動かすと語るが、対象的にマルケスは車高が高く、ホイールベースが短いホンダをストッピーさせながらコーナーにタイヤ痕を残しながら操る。


なぜマルケスのスタイルを適用しないのだろうか?スミスは「ストップ&ゴーのスタイルを試してみたんですが、自分はそこまで速く走れないんです」と語る。以前ヤマハに乗っていたクラッチローは「自分はスーパーバイク出身で、ヤマハに移籍して同じ方法で乗りこなそうと思ったんですが上手く行かず、どう乗りこなすかを学習する必要がありました。」と語る。


コーナリングスピードを重視するバイクは最大グリップを必要とする。そのためバイクがバンプで暴れないようにするためにも、スプリングレートは低い必要がある。しかしスプリングが柔らかいバイクで1本のタイヤでブレーキングしようとすると(※ハードブレーキングでストッピー状態になるということ)、フロントフォークのボトム量が多くなり、フロントタイヤを失うことになる。


20年前にケニー・ロバーツによって指摘されている根本的な違いとしてはリスクだ。コーナリングスピードが高いライダーは限界で走っており、柔らかいタイヤのエッジをコーナーの全域で使用する。しかしストップ&ゴー型のライダーは、最大のリーンアングル時にのみタイヤの限界を使用することになる。


最近のコメントとしてはオーリンズのジョン・コーンウェルからのコメントがある。彼は「エッジグリップは消耗資産」だと言う。マルケスのストップ&ゴースタイルは見ていても非常に忙しい。彼はスライドを多用するが、これは彼がMoto2のタイヤマネジメントの中で学んだものだ。彼はバイクを激しく操っているが、タイヤの限界状態で走行するのは一瞬だけだ。2015年のヴァレンシアで、ペドロサにホンダの高速なターニングについて(肘が路面に接地する瞬間だ)聞いた事があるが、彼は「長くバイクを寝かせていたいんですけど、そうするとタイヤが保たないんですよ。」と語った。


再び2014年だが、ロレンゾは良いスタートを切りマルケスと同様にレースをリードした。しかしレース後半になってマルケスはロレンゾよりもタイヤが残っており、ロレンゾに勝利することが出来た。ロレンゾはロッシがしたようにスタイルの変更が必要なのかと思われた。コーナリングスピード全盛の時代は終わったかに思えた。そして2015年。ホンダはさらにアグレッシブなエンジンとなり、マルケスのスタイルの邪魔をする形になる。MotoGPのエンジン開発はシーズン中は凍結されるために、チャレンジングなレースになるかと思われた。この問題を解決しようとする中でマルケスはシーズン中に数回転倒し、チャンピオンシップをロレンゾ、ロッシに続く3位で終えた。

★いかにマルケスはCOTAを自分のものとしたのか?

COTAにおいてミシュランは3種類のフロントタイヤを用意。ハードタイヤはブレーキングの最後でロックしやすく、ミディアムはターンインでフロントを失う可能性があり、ソフトは良いタイヤだったが、最後まで保たない可能性があった。マルケスはミシュランのエンジニアにこのタイヤが何周まで保つかと質問。12周から16周は保つという回答でマルケスはこのタイヤを使用することを決めた。序盤にリードを築き後半はそのリードを守るという形だ。このようにしてマルケスは勝利し、序盤は2:04秒台、中盤は2:05秒台、そして16周目からは2:06秒台という形だった。長年をかけて得られた知識は、時代と共に変わるものではなかったのだ。(※ミシュランが語る「エッジグリップは消耗資産」という事だと思われます。)


By Kevin Cameron

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