気になるバイクニュース。

世界のバイクニュース、MotoGP最新情報、各メーカーの新車情報などを紹介しているブログメディアです。

★エンジン・シミュレーター Trans4motor(トランスフォーモーター)

Sponsored Link

今回は趣向を変えて、バイク好き、エンジン好きが楽しめるiPad、 iPhone向けのエンジン・シミュレータ・アプリ「Trans4motor(トランスフォーモーター)」をご紹介します。管理人も昨年あたりにアプリの存在を知ったのですが、開発元の株式会社キットピークの阿部さんに今回お話を伺う事が出来ました。 f:id:teletele916:20160527110419p:plain 「Trans4motor」は単気筒から最大12気筒エンジンまで、ロータリーエンジンを含めた4ストロークエンジンをiPad/iPhone上で動作させる事の出来るエンジン・シミュレータです。プリセットで登録されているエンジンにはDucati916、ル・マンで91年にル・マン24時間耐久で優勝したMazda 787B、水平対向12気筒エンジンを搭載したFerrariの312Tなどの往年の名車から、ホンダが誇る傑作車RC211V、2004年にクロスプレーン型クランクを搭載したYZR-M1などがあります。

このアプリの面白いところは普段内部を見ることが出来ないエンジンの各部品の動きを視覚的に捉える事が出来る点で、特にクランク角度の違いによるピストンの動き、カウンターウェイトの動き方などからエンジンに関する考察を深める事が出来ます。バイク好きとして特に面白いエンジンはホンダのRC211VとヤマハのYZR-M1なんですが、まずはアプリの特徴と使い方をご紹介します。

Trans4motor(トランスフォーモーター)の特長

【シームレスなエンジン形式の変形】

f:id:teletele916:20160526184541p:plain 楽しみ方として真っ先に思いつくのは、収録されているエンジンごとに違いを見て「お~なるほど!」という部分だと思いますが、「Trans4motor」は、直列4気筒エンジンからV型4気筒へ、あるいはV型8気筒エンジンからV型10気筒エンジンなどエンジン型式を変更すると(※縦スクロール)エンジンが駆動した状態で連続的なアニメーションで変形して行きます。 直列エンジンのカムシャフトが左右に分割されてV型になったり、クランクシャフトが気筒間の位相角変化で回転、分離、合体したりと、様々なエンジン形状の変化が楽しめます。 なお、アプリ名の「Trans4motor」は「トランスフォーマー」から来ているとか。

【回転数制御】

f:id:teletele916:20160526184607p:plain 「どの回転ごとにどのような動きをしているのか?」というのも気になるポイントだと思いますが、操作画面からエンジン回転数を変更する事が出来ます。なお、エンジン回転数を最低に落とすと、ピストンの動き、そしてクランク角度が気筒ごとに何度ずつずれているという視覚的な理解に役立ちます。

【各種設定機能】

・パーツ毎(カムシャフト/バルブ/スパークプラグ/ピストン/シリンダー/燃焼気体/クランクシャフト)の表示/非表示機能がありますので、ピストンとコネクティングロッドを非表示にしてカウンターウェイトの動きをじっくり見たり、コネクティングロッドとピストンのみを表示してピストンの動きをじっくり観察するなどの操作が可能です。
・3D表示形式の変更(リアルタイムCG または リアルタイム線画))

【エンジンの追加拡張】

f:id:teletele916:20160526184626p:plain ・プリセット登録エンジンに加えてユーザー自身が新しいエンジン(※愛車のエンジンなど)を新規登録する事が出来ます。エンジンのボア、ストローク、Vバンク角などから、点火順序、点火間隔まで詳細な設定が可能となっていますので(※OHVはVバンク角固定) バイクの不等間隔爆発エンジン、クロスプレーン直列4気筒、V型5気筒などの再現が可能です。

・さらに点火間隔(※クランク角)を変更する事も可能なので、「このエンジンはこういう点火間隔(※クランク角)だとこういう動きになる。」「点火間隔がずれることでクランクピンを共有出来なくなるのか。。」などの発見が出来ます。なお、プリセット登録エンジンは現在23種類。ネットワークの自動更新により随時追加拡張されます。

【エンジンサウンドの追加(アプリ内課金)】

インストールした状態ではエンジンサウンドが無い状態ですが、アプリ内課金をすることでエンジンサウンドを追加出来ます。これは革新的なエンジン音合成技術による独創的なエンジン音アプリ「RealEngineSim」の株式会社CAIメディアからの技術協力によって実現した機能とのことで、気筒数の変化、不等間隔爆発や気筒休止の設定などの再現までリアルかつ迫力あるエンジンサウンドが楽しめるようになります。

気になるエンジンを観察

使い方が分かったところで、早速気になるエンジンをじっくりと見ていくとしましょう。今回例として取り上げる車両は、ホンダのRC211V、YZR-M1、そして編集機能で作ってみた管理人の元愛車の2005年型GSX-R1000、プリセット登録されていた元愛車その2であるDucati916です。

※なお、各ピストンや部品の動きをじっくり観察するには、操作画面からエンジン回転数を目一杯落としたほうがわかりやすいです。

ホンダRC211V

f:id:teletele916:20160526160228p:plain Vバンク角75.5°のV型5気筒エンジンで、このバンク角が一次振動を低減することでバランサーのないバランサーレスエンジンとなっています。前側3気筒、後ろ側2気筒という分け方で考えられがちですが、今回Trans4motor(トランスフォーモーター)で動きも含めて確認出来るのは「クランクピンを共有するV型2気筒が2組あり、その間に単気筒エンジンが挟まっているとも言える」設計だということ。

実際にピストンやコンロッド、カウンターウェイトが動いているのを見ると、当然と言えば当然なんですがその動きは非常にスムーズ。アプリの機能であるエンジン追加機能の画面から、角気筒の点火間隔や点火順序をずらしたりすると、エンジンの横幅が増えてしまったり、エンジンの動きがメチャクチャになるのがわかります。よくこんな設計を思いついたものだという典型のような素晴らしいエンジンです。

YZR-M1

f:id:teletele916:20160526160517j:plain バイク乗りの間では一般的なフレーズになった感の強い?クロスプレーン型クランクシャフトが特徴のエンジンです。一般的な等間隔爆発の4気筒エンジンの点火間隔は180°ずつずれているので、横から見るとクランクピンは時計で言う12時と6時の位置についています。(※基本的に1、4気筒が12時にいる時、2、3気筒は6時にいます。)

一方クロスプレーン型クランクシャフトの場合、クランクピンが90°ずつずれているため、クランクピンは12時、3時、6時、9時の位置となり、横から見た際に十文字に見えるための名称です。これはヤマハのHPの解説によるとトルク変動を打ち消す事が目的のようですが、実際にアニメーションで動きを見てみると、十文字に配置されたクランクピンによって独特の動き方をするピストンが良くわかります。エンジンサウンドの機能を追加している場合、エンジン追加機能の画面から各気筒の点火間隔を180°に変更してしまうと、当然ながらクロスプレーンクランクシャフトエンジン特有の音ではなく、一般的な直4の音になってしまいます。

クロスプレーン型クランクシャフトの説明

ピストンの慣性力によりクランクの回転速度は1回転の間で僅かに変動しており、これはトルクの変動を生み出す。通常の並列4気筒エンジンでは、外側の2気筒と内側の2気筒が同じ動きをするので、回転変動が増速し回転数の変動量は4倍となる。クロスプレーン型クランクシャフトでは、このトルク変動を打ち消すため隣り合うピストンの配置を4分の1回転(90度)ごとにしクランク変動を打ち消している。

(※ヤマハ バイク用語辞典を参考)

GSX-R1000 K5

f:id:teletele916:20160526160437j:plain アプリのプリセット時点ではスズキ車がないのですが(泣)エンジンの追加機能を使って管理人の元愛車であるスズキ GSX-R1000 K5を再現してみました。クロスプレーンの説明でも触れましたが、等間隔爆発の4気筒エンジンのため点火間隔は180°ずつずれています。画像でも1、4気筒が12時の上死点にいる時、2、3番気筒は6時の下死点にいる事が見てとれます。こうしてクロスプレーン型クランクシャフトのエンジンと比較すると面白いですね。

なおGSX−Rシリーズの特徴として言えるのはこうしたリッタークラスのライバル車と比べると非常にロングストロークのエンジンだということ。低回転から素晴らしいトルクを発生するエンジンですが、画像で見てもストロークがかなり長いのがわかります。

Ducati916 Senna

f:id:teletele916:20160526163608p:plain Ducatiのエンジンと言えばデスモドロミック。これは吸排気バルブの開き側、閉じ側の両方向の動きをカムによって制御する機構のことで、カムシャフトが回転することでカム山がロッカーアームを押す形になり、これによってバルブの開閉を制御しているわけです。画像でも特徴的なカムシャフトとロッカーアームがバルブの動きを制御しているのがしっかりと確認できます。

通常の4ストロークエンジンの場合、吸排気バルブはカム山に押されることで開き、バルブスプリングの反発力によって閉じています。レースの世界などでエンジンが許容回転数を超えてしまった場合、バルブスプリングの共振によりバルブがカ厶シャフトの動きについていけない「バルブサージング」という減少が起きる事がありますが、バルブスプリングを持たないデスモドロミックエンジンはバルブサージングを考える必要がありません。

ちなみに、このバルブサージングを別の方法で解決しようと言う技術が、F1やMotoGPでは一般的なニューマチックバルブスプリングという高圧の気体(窒素など)の反発力を使って制御する方式です。デスモドロミックは機構的には高回転よりはむしろ低中速回転での効率が良いと言われていますが、Ducatiのアイデンティティーと言える技術ですので、今後も受け継がれていくと思われます。

開発でこだわった点、苦労した点、今後について

気になるバイクニュース

「開発にあたり、特にここはこだわった!という点はどのような部分でしょうか?」

株式会社キットピーク 阿部氏

「Trans4motor(トランスフォーモーター)は、Ducati916 Sennaのデスモドロミックのロッカーアームなど一部を除いて、所謂3Dモデルデータというものを利用していません。全てのエンジンは旋盤で丸棒を切り出すかのように、ピストンやスプリングなど、計算式によってプログラム内で生成しています。エンジンの動きを再現したモデリングなどは沢山ありますが、今見ているエンジンから次のエンジンに滑らかに”トランスフォームする”という事を大事にしています。」


気になるバイクニュース

「開発で特に苦労された部分はありますか?点火の順序など、どのように調べられたのかな?と思っていたのですが。」

株式会社キットピーク 阿部氏

「特に苦労したのはエンジンの各気筒の点火順序、そして気筒の数え方ですね。点火間隔は一緒でも点火順序を変えてしまうとバラバラな動きのエンジンになったりしますので、ひたすらにサービスマニュアルを見たり、海外の情報を色々と調べたりという方法で行いました。また、メーカーによって、どの気筒を何番気筒と数えるのか異なる場合もあるために大変でした。某メーカーのバイクのサービスマニュアルに従った気筒の数え方でエンジンを作成したところ、どうもおかしいとなり、色々と調査する中でサービスマニュアルの気筒の数え方が間違っていた。。なんていう事もありました。」


気になるバイクニュース

「今後の展開としてはどのような事を考えていらっしゃるのでしょうか?」

株式会社キットピーク 阿部氏

「新しいエンジンに関してはアップデートのタイミングで追加していく形になります。シリーズとして今後ちょっとやってみたいと思っているのはトランスミッションですね。」

気になるバイクニュース

「それはかなり大変そうですね。MotoGPで話題のシームレストランスミッションなども、こうしてシミュレータで視覚的に理解出来るとすると確かに面白そうですね。今回は貴重なお話をどうもありがとうございました。」

動作環境
  • 対応OS iOS 6.0以降、iOS7、iOS8、iOS9対応
  • 対応機種 iPhone(4S以降、5s/5c/6/6s/6 Plus/6s Plus)iPad 2(iPad mini以降、iPad Air/2対応)
価格
  • 360円

trans4motor.com

www.kittpeak.co.jp

twitter.com

https://www.facebook.com/Trans4motor