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★CAGIVA(カジバ)V593 500ccGPレーサー試乗記

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1994年当時、最高のバイクの1台であったCAGIVA(カジバ)V593 500ccGPレーサーに関する記事をご紹介。前々から気になっていた記事でしたが、なかなかタイミングがなく翻訳出来ていませんでした。今やMotoGPでも500ccのGPマシン経験者はロッシ選手だけになってしまいました。WRCのグループBもそうですが、昔はとてつもない化け物を命をかけて操縦していたわけです。いやはや。(※今のMotoGPマシンも十分に化け物でしょうが。。)

★CAGIVA(カジバ)V593 500ccGPレーサー試乗記

バイクの事を恐ろしいと思ったのは今回がおそらく初めてだ。つまり純粋なる恐怖だ。このバイクは大変希少なもので、素晴らしい歴史を持っているバイクでもある。 Cagiva(カジバ)がグランプリレーシングの世界に参入したのは1990年。そして資金に余裕のある日本メーカーと限られた予算で戦った。レースのコストとライダーの給料というのは天井知らずだった時代だ。

★CAGIVA(カジバ)V593 500ccGPレーサー試乗記

最も安いギャラのライダーでも最低でも100万ドルは必要であったが、この小さな企業は最終的に勝利を遂げた。財政危機が訪れなければワールドタイトルを獲得することも可能だっただろう。Cagiva(カジバ)V539はモーターサイクルファン、そして熱心なコレクターであるスティーブ・バーンが所有している。このバイクはスティーブの所有するバーに、アンドリュー・ピットがワールドタイトルを獲得したカワサキのZX-6RRと共に飾ってある。スティーブは他にも18台のバイクをガレージに保管している。オーストラリアのMVアグスタのインポーターであるポール・フィーニーが、コシンスキーがアメリカのラグナ・セカGPで1993年に勝利、オーストラリアGPで1994年に勝利を獲得したバイクであるV593を売りに出すと聞いた時、彼はどうしてもこれを所有したいと思ったのだ。

★CAGIVA(カジバ)V593 500ccGPレーサー試乗記

Cagiva(カジバ)に初めての勝利をもたらしたのはエディー・ローソンで、1991年にハンガリーGPで勝利を遂げている。ローソンは引退の前にCagiva(カジバ)を去るが、その他のスター達がCagiva(カジバ)に引き寄せられていく。ランディ・マモラ、マット・ムラディン、ダグ・チャンドラーなどがいずれもそのキャリアの中でCagiva(カジバ)のバイクに乗っている。しかし才能溢れるジョン・コシンスキーが最もCagiva(カジバ)に勝利を捧げたライダーであることは間違いないだろう。その後12年に渡って開催地とならなかったアメリカGPのラグナ・セカで勝利を遂げたのも彼だ。V594でシーズンを終えた段階で、ジョンは1994年シーズンをランキング3位で終えた。しかしそれがCagiva(カジバ)にとっては最後のグランプリへのフル参戦となる。

Cagiva(カジバ)V539のライディング

★CAGIVA(カジバ)V593 500ccGPレーサー試乗記

ウォームアップはミック・ドゥーハンの元メカニックであるディック・スマートによって行われた。私の緊張度は元GPレーサーであるダリル・ビーティーにも伝わり、彼は「リラックスして通常どおりライディングしなよ。スーパーバイクみたいなもんだよ。ただもう少し軽くて速いだけさ。このカーボンブレーキが適温に温まるまでは注意しなよ。」というアドバイスをくれた。彼は「温度に気をつけるんだ。パワーバルブもそう。9500回転くらいでちょっとジャムるからね。」と続けて、外科医が弓のこで胸を開く前に患者を安心させるように妙な方法で私を安心させた。


次の瞬間、私はスマートにピットレーンまで押し出され、私はクラッチを離し、V4エンジンに火が入った。レーサーとしての私がすぐに顔を出し、その後ターン2で既に膝を擦っている自分がいた。最初の走行では、クイーンズランドレースウェイのバックストレートで私はショートシフトで走行。3速でバイクが咳き込むのを終えるのを待った後、デジタルタコメーターは急に9,500回転を過ぎた。ターン3でブレーキングを開始する前に12,500回転でシフトアップし、私は肩の関節がバラバラになるような衝撃を感じた。

★CAGIVA(カジバ)V593 500ccGPレーサー試乗記

その時はブレーキは通常のブレーキのようであったが、きっとブレーキはまだ冷えていたのだろう。コーナーを抜けて私はスロットルをゆっくり開けエンジンが9,000回転の谷を乗り越えるのを待った。再びエンジンが咆哮を上げ、私はしがみついているのがやっとだった。ホイールスピンとウイリー、ホイールスピンとウイリーを繰り返し、私は思わず「クソッタレ。。」と叫んだ。こんな加速は未だかつて体験した事が無い。ターボのバイクでもワールドスーパーバイクでもあり得ない加速だ。最初は2つの左コーナーに警戒していた。しかしターン6前の短いストレートで、パワーデリバリーを見るためにスロットルを捻った。坂の手間でエンジンは再び咳き込んだが、その咳き込みが止んだ後にバイクはまさに爆発的な加速をみせた。逆シフトでシフトアップをしながら、4ストロークではこんな加速は絶対に無理、GP500は凄まじいと身を持って感じた。

ダリル・ビーティー

「1997年にリタイアして以来最も楽しいね!ピットレーンを離れてすぐに500GPの記憶が蘇ってきたんだ。500GPに勝るバイクは無いね。このバイクの事は良く覚えていて「どうやって乗ったらいいだろう?」っていつも考えていたんだ。1994年に乗ったヤマハのエンジンと似ているね。でもヤマハのほうがハンドリングは良かったな。このバイクも本当にスイートなハンドリングで、カーボンブレーキも素晴らしいね。レーシングバイクに再び乗るというのは良いもんだね。いかに曲がり、止まり、加速するかを手懐ける事は出来ないんだよ。こいつは何速であってもウイリーしたがるからね。」

★CAGIVA(カジバ)V593 500ccGPレーサー試乗記

ブレンボのブレーキをストレートで握る。必要なのは一本の指だけだ。しかし私はローターの温度が急激に上昇し、私がブレーキの力を調整する前にフロントホイールがロックする様を想像した。しかし、すぐに私はトレールブレーキングも出来るようになり、自信を持ってコーナー出口で後輪にパワーをかけていけるようになった。しかしこのバイクがどれほどまでに集中力を必要とするかは、私を大いに驚かせた。ダンロップのタイヤは温まり、タイヤに関しての安心感は増した。私は毎周Cagiva(カジバ)をさらにプッシュした。しかしスロットルを開ける前に出来る限りバイクを起こさなければいけない事は明白だった。ミスなく走らなければならない。コーナーの中頃で風を受けて、私はバイクごと飛びそうになった。

★CAGIVA(カジバ)V593 500ccGPレーサー試乗記

シャーシは恐ろしく硬く、バイクはあまりにも軽い。バイクとの強固な信頼関係が必要で、バイクからのフィードバックを自信を持って操縦しなければならない。しかし、一度バイクのことがわかるとこのバイクは実に良く話しかけてくる。私は過去のスリックタイヤでの走行の記憶を元に、今のペースでどこまでプッシュして良いかを理解していた。リヤのオーリンズGPスペックショックは非常に固く、正直に言って長い間使用されていなかったためか整備が必要であるように思えた。フロントサスペンションの動きはしっかりとしていたが、私が想像していたものとは全く異なった。しかし、実際のところマシンはクイーンズランドレースウェイの酷くバンピーな路面で素晴らしい走りを披露した。メインストレートでバンプに揺られながら風を受けた時に関してはそういう評価は出来ないが。。

★CAGIVA(カジバ)V593 500ccGPレーサー試乗記

セッションが終わりに近付き、私は残りの周回に出来る限りのプッシュを行った。驚く事ではないが、V593では速く走ろうとすればするほど良いフィーリングを感じた。そして最終ラップで、私はダリルが話していた事を試した。普通のバイクを乗るようにコーナーに速く進入しようとし、バイクを起こして最大限に加速。レッドゾーンの1,000回転手前の13,000回点まで引っ張って加速を行った。最終ラップでは私はまるで世界から切り離されているような感覚を得た。レースをしていた日々に素晴らしいラップから感じていた陶酔感を感じていたのだ。レースを辞めて以来こんな気持ちにさせてくれるバイクは一台として無かった。そして私自身そんな事は不可能だとも思っていた。私は恋に落ちていた。ピットに戻りバイクを降りて、私は実に落ち着いていた。スティーブが私に歩み寄り、冷たいビールを手渡す。これは私にとって最高の日だと言えるだろう。

★CAGIVA(カジバ)V593 500ccGPレーサー試乗記

1994年製のCagiva(カジバ)500は、このイタリアのブランドが当時の500ccGPでいかに突出した戦闘力を誇っていたかを示すものだ。そして彼らの情熱、熱意すべてが注がれていた。彼らがか翌年に参戦出来るだけの資金が無かったというのが実に悔やまれる。

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