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★KTM「2015年にMoto3でホンダはレブリミットの上限を超えていた。」

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KTMがホンダに対して、ホンダのMoto3エンジン回転数がレギューレーションの上限を超えていたと主張しています。しかしエメットさんの調査であるとか、ホンダ側の言い分を見る限りはKTMの言いがかりのようにも思えます。シーズン開幕までに真相が明らかになるでしょうか。

★KTM「2015年にMoto3でホンダはレブリミットの上限を超えていた。」

2015年にホンダはMoto3のレブリミットを超えていたのか?これはKTMのスポーツディレクターであるピット・ベイラーがドイツのSpeedweekに語った内容だ。ベイラーはホンダからKTMにスイッチしたライダーから話を聞いた結果、この問題に行き着いたと言い、ライダーはKTMのエンジンがいかに急にレブリミットに当たるかについて不満を述べているという。


ベイラーは元ホンダのメカニックを通じてホンダのMoto3エンジンのデータを見た際に、ホンダのエンジンはレブリミットである13,500回転までフラットに周り、13,600回転に向けて収束していくと断言している。この主張が正しければ、Moto3のレギュレーションに対する明確な違反行為である。ベイラーはダニー・ケントの名前は上げていないが、最終的にKTMはホンダに6ポイントでチャンピオンシップに破れている。我々は素晴らしい結果であった今年と昨年、ダニー・ケントのクルーチーフであったピーター・ボンと話をした。ボンはKTMの申し立てを否定。これはベイラーの誤解であるとした。ホンダとKTMのMoto3でのレブリミット戦略の違いは、ホンダは多くの時間と資金をかけて、シフトダウンとアップ両方のギヤチェンジ、レブリミットの戦略を、可能なかぎりバイクを乗りやすくする方向で仕上げたことにある。

レブリミットとは

この話題を理解するにはいくつかの背景情報が必要だ。全てのレースシリーズでレブリミットが存在することから、ファクトリーはどの段階でレブリミットが働くかについて多くのエネルギーを使っている。これはバイクが(Moto3の場合で言えば)13,500回転でフルパワーを発揮することでも、13,501回転以降に全てのパワーがカットされるということでも無い。もしそんな仕様であれば、その結果は恐ろしいことになる。もしライダーがコーナーを旋回中にレブリミットに当ててしまったとしたら、ライダーは簡単にバイクから放り出され、怪我をするだろう。レブリミットに当たった時にエンジンが何が起きているかというと、ECUがエンジンがレブリミットに当たっていることを感知して、パワーをカットするのだ。ECUがこの判断をどの程度のスピードで行なうかは、ECUの処理速度に関わってくる。統一のDell’OrtoのECUは基本的な機能と限定されたパワーしかないため、すぐに反応する事は出来ない。結果として、ほんの一瞬ECUによってカットの指令が入る前に回転数は上限を超えることになる。エンジン回転数がレブリミットより下がるにつれ、ECUは再びエンジンの点火を開始するが、再びエンジンに点火されるまでにエンジンの回転数はレブリミットを少し下回ることになる。これによってエンジンはレブリミットに当たると激しく(グワングワンと)音を立てるようになる。ECUはパワーのカットとエンジンの再点火を繰り返すことになる。

KTM vs Honda

このプロセスがベイラーの糾弾の核心である。KTMレブリミットまでフルパワーを発揮する方向で開発を進めたため、その付近でのシフトチェンジが難しい。(※原文のtransitionをシフトチェンジと意訳しています。)これはレブリミットの付近でエンジンがピークパワーを発生する事を意味し、ライダーはここでバイクの最大限のパフォーマンスを発揮することになる。マイナス点としては、ライダーにとってレブリミットでのシフトチェンジを行なうことが難しくなり、バイクは安定せず、ライダーからのインプットを多く要求する。ホンダは異なるアプローチを取った。レブリミッターが介入する付近でのシフトチェンジをスムーズにするため、多大なる労力をかけたのだ。エンジニア達は可能な限りのパワーをエンジンから絞りだしながら、急な動きを抑え、ライダーにシフトアップが必要と思わせるフィーリング与えるよう、エンジンマネジメントの最適化について懸命に仕事をしたことだろう。

ホンダの強み

ベイラーの糾弾はピーター・ボンを直撃し、KTMの指摘が何に基づくものなのかを調べさせた。ダニー・ケントを自分の下に抱える前、ボンは2014年にKiefer teamでKTMを使い、ドイツ人ライダーのルカ・グルンワルドのクルーチーフを務めていた。
ピーター・ボン 「ホンダからKTMにスイッチしたライダーは、KTMレブリミットが唐突にやってくると文句を言うものです。これは2台のバイクが使用している戦略の違いによるものです。ホンダはレブリミット戦略について多くの労力をかけて、これを適切に動くようにしているのです。統一のDell’OrtoのECUを使う中で、レブリミットとギヤチェンジというのはホンダの強みです。ホンダのギヤチェンジはほとんどシームレスギアボックスのように感じるはずですよ。これはこの戦略がいかに有効に機能しているかを示すものです。ホンダがチートをしているかって?そんな非難の意味がわかりませんね。ですから、もう一度自分達のデータを確認して、2014年のルカ・グルンワルドのデータと比較しましたよ。ダニーはチャンピオンシップを争っていて、ルカはかなり下の順位でしたので比較をするのは難しいですけどね。そして今年レブリミットは変更となり、ホンダはレブリミットが13,500回転、KTMは2014年は14,000回転なんですよ。」

違いはどこから?

ボンが発見出来る最も有用な比較内容としてはムジェロだろう。2015年のケント、2014年のルカともに、レース中に大きなグループの中での戦いであった。もちろん順位は違っているが。。両者ともにその時点ではグループをリードしており、他のライダーのスリップストリームついた状態でストレートエンドで6速でダウンヒルを目指して全速力で走っていた。「データを見れば、どこでダニーのエンジンがレブリミットに当たっていたのか伝える事が出来ます。彼のレブはおよそ50rpmで上下に動いているんです。対してルカのKTMのレブはおよそ100rpmで上下に動いていました。」ボンが言うにはおそらくKTMが見たデータの中で、彼らがレブリミットを超えていると解釈する内容があったのだろう。エンジン回転数のデータを扱う時は正確性という面で注意が必要だとボンは語る。「Dell’OrtoのECUECUの各チャンネルのサンプリングレートを決定します。このエンジンスピードにとってのサンプリングレートがなんであるかというのは正確にはわかりませんが、ただあまりにも低すぎると思うんです。200Hzが一般的なところ、500Hzが望ましいんです。しかしこれはECUに頼るところが大きいです。」Dell’OrtoのECUはこのような動きを実現する為の処理速度を持ちあわせていない。結果としてECUはエンジンがレブリミットに当たっている時、全ての回転においてサンプリングをしているわけではない。13,500回転時に、Moto3のエンジンは1秒間に225回回転している。そしてもしボンが正しければ、エンジンのスピードは200Hz以下でサンプリングされていることになり、ECUはエンジン回転数を計測する平均的な線に落ち着くことになる。ボンはLeorard Moto3チームが昨年レブリミットを超えていたという事に関してはきっぱりと否定した。「100rpmは大した差にはなりませんし、レブリミットDell’OrtoがECUを我々に渡す前に既に設定しているんです。ですから、我々がレブリミットを超えたくても超えることは出来ないんですよ。」ボンはまた彼のデータはIRTAによって何度もチェックされ、レブリミット内であるという結果が出ていると語る。彼らが行ったことは全てレギュレーションの内側であったということだ。

調査は続く

MotoGPのテクニカルディレクターであるダニー・アルドリッジは語る。「全てのイベントで上位3台からデータを取得し、あと1、2台ランダムに予選とレースからデータを取得します。例えば2015年はダニー・ケントのデータを20回取得し、これは他のどのライダーよりも多かったですね。」アルドリッジはピット・ベイラーがテクニカル・ディレクターのコラード・チェッキネロと彼自身に接触してきたことを明らかにした。そしてIRTAとドルナは彼の主張を調査している。「もちろん申し立てのあったチートに関しては真剣に調査をしています。特にメーカーからの申し立てですからね。Dell’Ortoにも通知し、彼らも2015年のデータをチェックしているところです。」これには時間がかかるとアルドリッジは語る。「この調査を正確に行なう為に時間が必要なんです。」IRTAはSpeedweekに記事として載っているこの情報について、KTMから情報を受け取っていないとアルドリッジは語る。「これは何もかもを、さらに時間がかかるようにさせているということがわかるでしょう。」果たしてKTMが語るようにホンダはレブリミットを100rpm超えていたのか?ダニー・ケントのチャンピオンシップは詐欺行為によって手に入れたものと言えるのか?ピーター・ボンはそれは違うと語る。タイトルはダニー・ケントと彼のチームのハードワークによって獲得されたものであり、ホンダがDell’OrtoのECUから最大限のポテンシャルを発揮したのだ。ホンダのMoto3バイクのリースがここまで高額なのは、HRCECUに関して成し遂げた仕事にある。この事件は現在ドルナとIRTAの手中にあり、コラード・チェッキネロ、ダニー・アルドリッジが調査の旗手を勤める。Dell’Ortoは2015年のデータから異常値を見つけるべく調査をしており、ドルナとIRTAにデータを提供する。結果がいつ出るのかということに関する時間制限はない。しかしこうしたシリアスな主張は非常に注意深く確認される必要があるため、時間はある程度かかるであろう。

BY DAVID EMMETT

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