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★HRC取締役副社長 中本氏インタビュー

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HRC副社長の中本さんの詳細なインタビューがありましたのでご紹介。話題はマルク・マルケス選手、ケーシー・ストーナー元選手、中本さんがF1からMotoGPに持ち込んだ技術側面などに関する興味深い内容などです。こうして改めてインタビューを読むと、今のMotoGPのあり方に関して大きな影響力を持った方なんだなと再認識させられます。解説のニック・ハリスも「ナカモトサン」と呼ぶあたりに周囲からの尊敬の念が感じられて、いつも中継映像を見ながら日本人として嬉しくなります。

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HRC副社長 中本修平氏

「私がHRCに加入した時、本田宗一郎さんはすでにリタイアされていました。1984年に私があるパーツの重量をチェックしていた時、誰かが私の後ろからパーツを手に取り、私は反射的に「触るんじゃない!」と叫びました。振り返るとそこにいたのは本田宗一郎さんでした。後ろに誰かがいるなんて思ってもみませんでしたから、まさか宗一郎さんだとは思いませんでした。宗一郎さんは「ごめんね。」と言い、私も宗一郎さんに謝罪しましたが、これは良い思い出です。」

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「私がホンダで働き始めたのは1983年。プロダクションレーサーのシャーシデザイナーとしてでした。HRCでは17年シャーシデザイナーとして働き、RS125、RS250、NSR250、RVF750、VTR1000など世界GPの舞台で戦ったマシン達のプロジェクトリーダーを務めました。何年かは3つのプロジェクトを同時進行で務めたこともありました。多くのチャンピオンシップで勝利しましたが、その数は数えていません。ファウスト・グレシーニ、エミリオ・アルサモラ、ルチオ・チェッキネロが私のバイク達を操縦しました。2002年から2008年はF1でテクニカルディレクターとして働きました。2009年にはHRCに副社長として戻り、HRCのMotoGP参戦の指揮を取りました。より速い車両を作ろうという情熱は私のハートから来るものです。思えば常にリーダーとしての役割を担って来ましたね。子供の頃に野球やサッカーをしている時でさえそうでした。9歳の時にサッカーをしていたんですが、マネージャーからリーダーを務めるよう言われたんです。強い意思決定力、チームビルディングなど、私の選択ではありませんでしたが、常にこんな調子でした。」

 

F1かMotoGPか?2つに大きな違いはありません。最大の違いはタイヤの数と予算の規模です。予算に関しては大きな違いがあります。F1の予算はMotoGPの約10倍です。私はF1からMotoGPに多くのものごとを導入しました。技術的な事で言えば、例えばエンジンコントロールシステム、エンジンの内部パーツ、シームレスの技術など多くのものごとです。組織の面で言えば、F1はMotoGPよりも更に大きなチームで異なる文化が入り混じっています。日本文化、ヨーロッパの文化などがね。MotoGPで言えば異なる国の出身者で良いコンビネーションになるように少人数のチームとなっています。また、F1からはエレクトロニクスのノウハウもMotoGPに導入しました。ただこれに関しては複雑ということではなく、むしろ逆です。ホンダのエレクトロニクスはエンジニアフレンドリーで変更が容易なんですよ。ホンダはMotoGPのシングルECUには反対の立場でした。なぜなら、最初の提案内容は我々からソフトウェア開発の機会を奪うという内容だったからです。ホンダはそのような内容であれば絶対に合意しなかったでしょう。しかしカルメロ・エスペレーターが考えを少し変え、我々とDucati、ヤマハ、Magneti Marelliでソフトウェアを開発していくことが出来るようになりました。ですから、ホンダもその内容で合意したんです。」

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ケイシー・ストーナーとマルク・マルケスは野獣ですね。彼らは特別ですよ。まるでライオンのようにね。マルクとケイシーが良いセットアップを見つけると、トラックに出て行ってとんでもないラップタイムで走るんです。そうした観点から考えると、彼らは非常に似ていますね。もちろん彼らの人間性は異なりますし、アプローチの仕方も異なります。ただ、全体的には良く似ていると思いますね。ケイシーとは良い関係を築くのが難しいですが、一度打ち解ければ良い関係性を維持することが出来ます。そしてそれは家族のように長く続く関係性になるんです。対照的にマルケスは彼の性格もあって打ち解けやすいですね。彼はいつも笑顔ですしジョークを飛ばしています。ただ、彼が本当は何を考えているのかを理解するのが難しいと感じる時もあります。いずれにしても、2人とも偉大なチャンピオンです。」

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「マルクとケイシーの2人なら最高のドリームチームかって?そうかもしれませんが、来年に起こり得るシチュエーションではありませんね。ケイシーがフルタイムのレーサーとして復帰することは無いと思います。鈴鹿8耐は一回きりのイベントですし、ケイシー自体が参加したいと思っていたイベントです。10年前、鈴鹿8耐は日本、そして世界で人気のイベントでした。今でも日本では最大のイベントではありますが、今回ホンダがケイシーに参加を要請したのは、そうした過去の国際的なイベントであった鈴鹿を呼び起こそうという気持ちもあったんです。今年はヤマハが新型の強力なマシンで参戦することになっていましたから、厳しい戦いになると事前に思っていました。ケイシーのレース復帰には大きな期待が寄せられていました。ケイシーの転倒は実に不幸な出来事でした。ケイシーもチームも非常に良いペースでしたし、彼らが優勝を狙って戦えると確信していました。しかし、バイクにスロットルの機能不全の問題があったんです。我々はこのタイプのスロットルの使用を中止し、現在新型を設計しているところです。ケイシーにはとても申し訳なく思っています。チームの皆がケイシーがあれ以上酷い怪我に合わなくて良かったと思っています。」

f:id:teletele916:20150823204334p:plain「マルク・マルケスのMotoGP前半前の結果は我々が予想していたものではありません。しかし今年は多くのアンラッキーな事が良くないタイミングで起きました。 天候やその他のものごとですね。マルクはアグレッシブンなエンジンに不平を述べていて、これはエンジンのトルクが彼が欲しいと思っている以上だということを意味します。(※レギュレーション上)エンジンには触れませんから、エレクトロニクスやシャーシ側の作業を進めるしかありません。しかし、エンジン自体にパワーがあればチューニングすることが出来ます。対照的に、エンジンパワーが無ければ何もすることは出来ませんからね。もしマルクがもっとパワーが欲しいという要求をしていたとしたら、エンジンの開発が凍結されている以上、彼の要望を叶えることは出来ないでしょう。マルクが最初に使用していたシャーシは、ブレーキングの事ばかりを考えたものでした。これに関してはコーナリングのパフォーマンスと、マシンの安定性は若干犠牲にしていたタイプです。昨年のマルケスのブレーキングは他のどの選手よりも良かったわけですから、この側面をさらに強化する必要性は無かったということです。ル・マンからは異なるタイプのシャーシを使用しています。セカンドシーズンに期待すること?毎週日曜で勝利することが当然のメインターゲットです。マルケスはより快適にバイクに乗っているようですし、効果的なセッティングも見つかっています。ですから、我々もけして諦めずに彼をサポートします。

 

勝利はいつでも勝利です。どれか1つを特別視して覚えているということはありませんね。最高の勝利は常に次の1勝です。私はいつでも動いているわけですが、自分のバッテリーをチャージしたい時は日本の山間部にある家に帰ります。リラックスの仕方?山の中にシャレー(山荘)があって、そこでリラックスするんですよ。私は未だに毎朝会社に自転車で通勤するんです。自宅からオフィスまでは約6.2マイル(10キロ)くらいですね。」

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