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★Ducati 新型1299パニガーレ レビュー

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新しくなっても見た目が大きく変わらないので進化に気づきにくい。というのはDucatiの昔からのお家芸と言えます。1299パニガーレは、1199からの正常進化盤と言える完成度の高いバイクに仕上がったようです。未だに見るものに鮮烈な印象を与えるバイクですが、新型R1の登場によって、少し影が薄れた感はあります。そう言えば新型R1の登場時に、「シートカウルのデザインはパニガーレのパクリだ!」みたいな話題が海外でありましたね。

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Ducati1199パニガーレよりも鮮烈なデザインのバイクはほんの数台しか思いつかない。このバイクはバイクというよりもアートに近く、デザインと機能が高い次元で融合している。しかし、それでもなお今回の新型1299パニガーレはさらに良くなっていると言える。ぱっと見の印象は同じだが、ワイドになったフロントフェアリング、アグレッシブなエアインテーク、新しくなったテール周り、大きなスクリーンや新しいシートなど、実はかなり新しくなっているのだ。だが、一番興味深い点は新型エンジンだろう。今までのスーパークアドロエンジンよりもオーバースクエアになったもので、ボアは112mmから116mmに拡大。排気量は1285ccとなっている。もはやパニガーレのピストンの大きさは、小ぶりのディナー皿とたいして変わらない。

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Ducatiの発表によると10,500回転で205馬力を発生し、トルクは8,750回転で14.68kgとなり、10馬力、10%のトルクアップとなっている。エレクトロニクスをだらだらと羅列するのは退屈かもしれないが、このバイクを語るには重要なものなので列挙すると、トラクションコントロール、ライディングモード、エンジンブレーキコントロール、今回から追加でウイリーコントロール、クイックシフター、コーナリングABSという構成だ。Sモデルに追加された装備には、セミアクティブのオーリンズ前後サスペンション、電子制御式ステアリングダンパー、LEDヘッドライトに軽量のアルミ鍛造ホイールも奢られる。

 

このバイクの試乗会はPortimaoサーキットで開催された。Portimaoをよく知らない方の為にご説明すると、逆バンクのブラインドコーナー、ヘアピン、強烈なブレーキング区間だらけのサーキットだ。フィジカル面に非常に厳しいサーキットと言える。

それにも関わらず、新型1299パニガーレのライディングは、コースとの闘いをまるでピローファイト(枕投げ)に思わせた。確かに一般的なパニガーレの評価というのは神経質で落ち着きがなく、とにかく車体が硬いというものだ。パワーは明らかに向上しており、ユーザーフレンドリーとは言い難い。

だが、もうこのバイクはライダーに対して強烈に噛み付いたりはしない。この変化はわずかに鋭角になったステアリングヘッドアングル、低くなったスイングアームピボット位置から来ている。1299は1199を単純にパワーアップさせたバイクではない。このバイクで感じるライディング体験は完全に別物と言えるだろう。

 

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ライディングの体験はどのライディングモードを選ぶかによっても大きく変わる。モードはウェット、スポーツ、レースの3種類から選べる。
各モードの違いは大きく、スポーツモードの場合205馬力を発生するものの、パワーの立ち上がりは緩やかで各種エレクトロニクスも良く働く。レースモード場合は当然パワーの立ち上がりが急減になる。この日ほとんどのジャーナリストはレースモードのまま走行していたようだが、もし望むなら左のハンドルバーにあるスイッチ類で各エレクトロニクスを調整する事ができる。

このバイクに乗ってまず感じるの豊富なトルクだ。実際のところもう少し馬力を上乗せする事が出来たのかもしれないが、その上乗せする分のパワーが何処に行ったのかが重要で、どうやらDucatiは全域の豊富なトルクアップを目指したようだ。しかしそれでいて、1199の特徴でもあった俊敏なレブスピードは変わっていない。そう。今までのように美味しい回転域に回転を留める事は必要無い。なぜなら全域がパワーバンドと言えるからだ。


ショートシフトで4速ウイリーだって出来るし、6速240km/hで走っている状態でも、路面の小さなきっかけでストレートでウイリー可能だ。操縦性も非常に高く、1098シリーズにコーナーで並んで走行することも苦もなく出来るし、コーナーの中でさらに小さく旋回するのも意のままだ。

おそらく安定性が最も向上しているのはシフトダウン時の挙動だろう。素晴らしいスリッパークラッチ、EBC(エンジンブレーキコントロール)、オートブリッパー(※自動でスロットルを空吹かししてくれる)の恩恵で、このバイクでコーナーエントリーを失敗するのが難しいくらいだ。パワフルなブレンボ製M50ブレーキを力一杯握ったとしても、リアタイヤが少しダンスする以上の挙動は出ないだろう。
多くの人がエレクトロニクスによってスキルを磨く機会とライディングの楽しみが削がれているという。でも私はそうは思わない。メーカーが提供しているこれらの機能によって、一昔前では味わえなかったパフォーマンスを安全に楽しめるのだから。

 

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このバイクのライディングが楽しいのはその軽さにもある。装備重量で190kgと謳われる重量はどのようなスピード域であろうが直ぐに向きを変える。私が今までにライディングしたバイクの中でもトップクラスのクイックなハンドリングと言える。スピードを上げていけばいくほどにサスペンションの反応は良くなり、コーナーを驚くべき正確さで切り裂いていく。

標準のタイヤはピレリのディアブロスーパーコルサSPだ。6回のセッションをこなしてタイヤが垂れ始めても、優れたパッケージによって安定したパワースライドを楽しむ事が出来た。さらに1299の新しいエレクトロニクスは、いかなるタイヤであろうがどのようなファイナルドライブレシオであろうが混乱することは無い。Ducatiの場合ニュートラルが出にくいという事は度々あるが、私の乗ったバイクにはそのような症状は一切出なかった。ギアボックスはスムーズで正確で、正直なところBMWの2015年型S1000RRよりも良かった。

 

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これは陳腐な例えかもしれないが、パニガーレはS1000RRよりもドラマチックなバイクだしその他のライバルと言える日本車勢とくらべてもそうだ。街中を走っていてもS1000RRを見るために立ち止まる人はほぼいないだろうが、パニガーレに乗っていれば信号で止まる度に注目の的だろう。

Ducatiのマシンとしての信頼性の低さと頻繁なメンテナンスの必要性は既に過去の話で、バルブクリアランスの調整は24,140kmとなり、ライバルの日本製4気筒バイク達と変わらない。

パニガーレとSモデルはイギリスでは3月からデリバリーが始まる見通し。私が買うならスタンダードのパニガーレを購入して、余った資金でアクラポヴィッチのエキゾーストを入れる。スロットルレスポンスの違いは顕著になるし、エンジンのピックアップも同様だ。そして何よりもパニガーレの獰猛なルックスにぴったりではないか。

 

Ducati 1299パニガーレS諸元
エンジン:1285cc Lツイン
馬力:205hp 10,500rpm
トルク:14.68kg 8,750rpm
装備重量:190kg
タンク容量:17L
シート高:830mm


Ducati 1299 Panigale S review | Road Test