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★ブランドイメージと車体構造

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読者からのマニアックな質問にプロが答えていくCycle Worldの「ケヴィンに聞け」シリーズ。今回は車体の重量バランス、エンジンの搭載位置、搭載方向、アンチスクワット、企業ブランドと車体構成などに関する話です。4気筒か2気筒か?直列かV型か?V型のシリンダー挟角は?ツインスパーかトレリスか、それともモノコックか?スイングアームピボット位置は?などなど、各メーカーのブランドイメージって確かにありますよね。
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Q
「今までに何度かDucatiの持つ重量バランスとエンジン位置に関するハンディキャップについて本誌で触れていました。クランク、トランスミッションがあるエンジン後部が重いという事でしたが、それならばクランクやトランスミッションが前方にくるようエンジンを前後逆に搭載するのはどうなんでしょうか?伝統的なやり方では無いと思いますが。。」

A

「1990年代初頭、バイクのハンドリングの問題は"スクワット"と"プッシュ"(※プッシュアンダー/アンダーステア)でした。コーナーの脱出加速でバイク後部が沈み込み荷重が後ろに逃げすぎてしまうと、フロントが軽くなりすぎてバイクの向きを変えるのに十分な荷重が逃げてしまい、バイクを"プッシュ"してしまう(ライントレースできなくなりアンダーステアになる)という事が起きていました。」
 
「オーリンズはこの事に関して研究を行い、次の2つの事実を明らかにしました。(1)リヤホイールの車体を前に進ませようとする力はリヤサスペンションを伸ばす力として作用する。(2)チェーンの張力はスイングアームの上下で異なるために接線力を生み出し、同時にスイングアームを伸ばそうとする力を発生する。これらの知識を元にオーリンズはスイングアームピボット位置をアジャスタブルにし、これによってアンチスクワットの力を変化させる事が出来るようになったのです。」
 
「しかしDucatiの場合、車体構造上(スイングアームピボットがエンジンのクランクケースにある)スイングアームピボットの位置を調整する事が不可能でした。Ducatiのハードなリアサスペンションスプリングはスイングアームのスクワットを打ち消すほど強力なものでしたが、これは同時にタイヤの特性を殺すということでもありました。そしてこれこそが、Ducatiをスーパーバイク選手権において苦しめた元凶でもあったのです。」
 
「ご指摘のようにギアボックスをクランクシャフトより前に配置した場合、チェーンの遊びを調整する為の仕組みはスプロケットとピボットの関係から位置の調整などが必要でしょうが、重量配分の面では確かに有利になるでしょう。レースの現場などでこれは上手く行く可能性がありますが、こういう種の細かい継続的な変更は目的を達成出来ない場合、全くの逆効果に終わる可能性を多分に秘めています。」
 
「また、Ducatiの場合はブランドイメージやマーケット的な理由として同社の象徴でもある”90度挟角のエンジン”(※俗にいうLツイン)を採用する必要があります。とは言え、企業はこの種のブランドの象徴的なイメージを保持していくか変革すべきかの選択を迫られる時があります。」
 
「ロッシを雇った際、ヤマハの古沢氏はロッシに2台の90度クランクマシン、2台の180度クランクマシンの合計4台のプロトタイプマシンを与えました。このうち90度クランク、180度クランクのそれぞれ1台はヤマハのアイデンティティーだった5バルブのジェネシスシリンダーヘッド。そしてその他の2台は一般的な4バルブヘッドのものでした。」
 
「結果的にロッシはこの4台の中で90度クランクの4バルブエンジンのマシンを気に入り、タイムとしても最も良いタイムを記録しました。そしてその後の2004年、2005年、2008年、2009年のMotoGPタイトル獲得に繋がっていったのです。」

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