★ホンダ RCV1000Rはなぜ遅い?
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セパンテスト、カタールの決勝でもファクトリー勢はおろか、同じオープン機のヤマハにも大きく水をあけられてしまったホンダのRCV1000Rですが、Asphalt&Rubberから「RCV1000Rがなぜ遅いのか?」というやたらと細かい考察記事が出てましたのでご紹介します。
結論だけを乱暴にいうと、
①馬力不足によるストレートスピードの不足
②シームレスギアボックス未搭載による加減速、コーナー連続部分でのロス
③電子制御の緻密さの不足によるストレート立ち上がり、コーナー連続部分でのロス
ということです。
ヘイデンやレディングは燃料をレギュレーションいっぱいまで積むことによって、ストレートスピードを少し改善できるのでは?と考えているようですが、レース全域でのパフォーマンスという意味では、シームレスギアボックスが投入されて、電子制御系が煮詰まらないと厳しいのだろうなと感じます。
今後ヤマハのオープン機にシームレスギアボックスが投入されたりしたら、さらに差は広がるわけで。。さてどうするホンダ。
RCV1000Rの前評判は良かった
ホンダがプロダクションレーサーを製作し、2014年のMotoGPに投入するというニュースが流れた時、ファンはそれがいかに速い車両になるか?才能あるライダーがその車両でサテライト勢を打ち負かせる事が出来るか?と期待に胸を踊らせた。
ストーナーがこの車両をテストし、そのパフォーマンスを高く評価したことで、ファンの期待はさらに高まった。
そして、ホンダ副社長のナカモト氏によって、この新型機のRCV1000Rは「テストライダーの走行ではRCV213Vのラップタイムよりもわずかに0.3秒遅いだけ。」という発表がなされた時、ファンの期待は頂点に達した。
問題は、その"テストライダー"がストーナーだったのか?ということだが、ナカモト氏は「ストーナーはホンダのテストライダーだ。」と濁した。
ニッキー・ヘイデンやスコット・レディング、ヒロシ・アオヤマら現役のホンダライダーのヴァレンシアテストが行われるようになると、すぐにこの新型機はレースのペースに全くついて行けないという事が明らかになった。
そして2月に行われたセパンテストでも、状況は変わらなかった。
ナカモトは「0.3秒落ちという結果が出た時のライダーはストーナーではなく、ストーナーは単に路面状況が悪い際に少しテストを行っただけだ。テストは他のライダーによって主に行われ、セパンテストで2つのメインストレートで合計0.5秒近くをロストしており、ストレートスピードに一番の課題を抱えている事がわかっている。」と後に説明している。(※管理人注 KCのテストっちゅうのは、雨の茂木テストを指していると思われます。)
現役のライダーの結果ではトップ勢との差は2秒近くもあり、最も期待されていたニッキーヘイデンは、コーナーの進入に限ってのみ向上したという結果であった。
しかし、曲がらない、止まらないDUCATIに乗っていたヘイデンからすると、この結果は驚くべきものではなかっただろう。
カタールテストで車両は少し改善され、ヘイデンはトップのアレイシ・エスパロガロとのギャップを1.4秒にまで詰めた。
レースウィークが始まるころには更にタイムの差は縮まり、スコット・レディングはサテライトのチームメイトであるバウティスタからわずかに0.841秒遅れ、RCV1000Rでの最高タイムをマークした。
圧倒的なトップスピードの不足
しかし、RCV1000Rにトップスピードが不足していることはレースでも証明されてしまった。
スコット・レディングとニッキー・ヘイデンの決勝でのタイム差はわずかに0.035秒であったが、トップのマルケスとの差は32秒もあったのだ。
レディングとヘイデンの最速、最遅タイムの差は2.4秒ほどもあったが、先頭集団のライダー達のそれはわずか1秒ほどだった。
このパフォーマンスの差と、トップとのタイム差は多くの推測を呼んだ。果たしてRCV1000Rがファクトリーオプションのバイクと比べて何が劣っているのか?
単純にトップスピードなのか?スピードと加速性なのか?そして、このトップスピードの不足と加速力の不足は何からくるものなのか?
スコット・レディングとニッキー・ヘイデンの両名が、トップスピードの不足は燃料不足にあると述べている。
オープンクラスのバイクは24Lまでの燃料を積んで走行できるが、RCV1000Rの燃料タンクの容量は22.2Lなのだ。
スコット・レディングは「もっと燃料を使えばパワーが無いエンジンでももう少し馬力を搾り出せる。それに決勝では燃料をセーブするために、予選のようにフルパワーでは走れないんだ。もう少し燃料があれば10周はトップ集団についていける。」と語った。そしてヘイデンも同じくフルパワーを使えない事に不満を感じているようだった。
リヴィオ・スッポは問題の原因が燃料であるかどうかは定かではないとしながらも、「新しいMagneti Marelliのソフトウェアとマシンとの調整に苦労している。」と語り、要因の一つとして電子制御系が関係あるかもしれないとしている。
asphalt&rubberによる考察
マシンからの全てのデータを読み取る事が出来れば問題は明白だが、我々プレスとしては推測するしかないので、ロサイルの各セクターごとのタイムを元に考察をしてみる。
ロサイル・サーキットのレイアウト
ロサイルは3つの高速コーナー、多くのブレーキングポイントと、その他普通のコーナーで構成される。最終セクターは2つのショートストレートを含んでいる。
セクター1ではブレーキング性能とバイクの回頭性が重要で、同時にトップスピードも重要だ。
セクター2ではブレーキングと加速性。
セクター3ではバイクがリーンしている間からしっかりとトラクションをかけて加速出来る性能が重要。
セクター4ではとにかく加速性能が重要視される。
セクター3での性能差は特に電子制御系によるもので、セクター4では馬力がモノをいう。
もし電子制御系の問題があればセクター3が最も問題となる部分となり、馬力に問題があればセクター4が最も問題となる部分になる。
ペドロサ、ロッシ、アレイシ・エスパロガロ、ヘイデン、レディングのタイムで比較を行った。
平均セクター(ラップ)タイムの比較
ヤマハとホンダのファクトリーチームはほとんど同じで安定している。オープンクラスのヤマハもセクタ-2で特に接近している。
そしてRCV1000Rはセクター4で最も多くのタイムをロストしている。
各セクターでの平均ギャップ
ペドロサと比較すると、ロッシは最初のセクターで最も多くのタイムを稼いでいる。
エスパロガロはセクター1とセクター3で最も多くのタイムをロストしているが、セクター2ではロッシに接近している。
最終セクターではシームレスギアボックスを持つファクトリー2台が抜きん出ている。
RCV1000Rは最終セクターで最も多くのタイムをロストしている。
各セクターでの最速セクタータイムとの平均ギャップ
RCV1000Rは最初のセクターではなく、やはり最終セクターでタイムをロストしている。
トップスピード
ペドロサとロッシのマシンのトップスピードの差は微々たるものだが、エスパロガロのオープン機はファクトリーオプションのマシンとは8.4km/hの差があり、今後シームレスギアボックスが供給されるようになれば、この差は解消されるだろう。同時に電子制御系によるアンチウイリーの性能差もストレートスピードに影響を与えているだろう。
RCV1000Rとファクトリーオプションのバイクとのスピード差は非常に大きく、ヘイデンで15.4km/h、レディングで16.6km/hものストレートスピードの差が発生している。
そして同じくオープンクラスのエスパロガロからは7km/hという差がついている。
各セクターでの差とストレートスピードの差は、主に馬力によるものだろう。
ロサイルサーキットの16個のコーナーのうち6個を含むセクター3は、このサーキットで最もテクニカルな部分であるが、ここではエスパロガロはロッシより0.42%遅く、レディングは0.64%遅いタイムとなっている。
同じくファクトリーのペドロサとロッシのタイム差は、わずかに0.007秒となっており、これは馬力の差よりも、電子制御とシームレスギアボックスによるものであろう。
結論?
結論としてRCV1000Rの遅さの理由は、電子制御系ではなく馬力の不足によるものだと言えるだろう。
ヘイデンやレディングが主張するように1.8L多く燃料を積むことが解決策になるのか?
確かに多少のストレートスピードの上積みとタイトコーナーでのパフォーマンスの改善に繋がるかもしれないが、レース全体で32秒ものタイム差は如何ともしがたいものだろう。
とはいえ、電子制御系の改善だけではこの広大な差は埋めることは出来ないだろうから、より多くの燃料を積む事が、現段階ではファクトリーオプションのバイクとのギャップの改善に繋がるとは言えるだろう。
(情報元 asphalt&rubber)
(※管理人注)
Crash.netのインタビューで、レディングは「燃料を保たせるために節約して走った。」と語っています。
つまり、レギュレーションに沿った24Lのタンクであれば、もっとストレートで開けられた。=トップスピードも伸びた。ということになりますね。
Crash.netの考察では、RCV1000Rは昨年の21Lレギュレーションに沿ったRCV213Vを基に開発されたものであることから、24Lも燃料を積む事を想定していないという点、DUCATIチームも述べていたようにドルナ提供のソフトウェアは燃費が悪い。という点から、
【24Lも燃料を積む=ホンダの開発方針と異なる=ホンダからの保証などサポートが薄くなる事をオープンチームが恐れている。】
と推測し、そう簡単には燃料タンク容量をデカく出来ないオープンチームの事情があるのではないか?としています。